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【解れていく感覚】ダムタイプ|2022: remap 第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 アーティゾン美術館

2023/04/23訪問

日本のアート・コレクティブの先駆け的な存在であるダムタイプ。ヴェネチア・ビエンナーレに出品された作品の凱旋展示、とでもいいましょうか。
ヴェネチア・ビエンナーレ出品に石橋財団が全面的な支援をしてきたので、ブリジストン美術館時代から現在のアーティゾン美術館になっても凱旋展示はここで行われる。

ヴェネチア・ビエンナーレ、歴代様々な方々が出展している中の最新がダムタイプ。キュレーターの欄が空白なのはなぜなのだろう?なしだったのでしょうか?

この歴代の日本からの出展者の羅列がおもしろい。


日本が初めて出展したのが1952年なので70年分の歴史がある。
70年前は梅原龍三郎がコミッショナーを努め(!!)横山大観、鏑木清方、福田平八郎など重要文化財の秘密展に出てる人の名前が上がる。
もしかしたら、ダムタイプも70年後に重要文化財になるかもしれないか?!

展示内容

さて、展示は一瞬、分かりにくい。
そもそも明確な、わかりやすさ、なぞ必要ないのだろうけども。
しかし粘り強く、じっと耳を傾けたり、目を凝らして空間の中にいる時間が増えていくとグッと「体験するだけで良いのだ」ということがわかる。
多分、10分もせずに展示室から出ていく人もいるだろう。
見て、聞いて、解説のシートを読んで、を2回ほど繰り返すと少しずつほぐれてくる感覚。


でもなんかかっこいい
足元を覗き込む
浮かび上がるターンテーブル



ダムタイプというコレクティブの名は2020年頃に東京都現代美術館の展示で初めて知り、その当時現美の参事だった長谷川祐子さんイチオシの展示だった、という記憶があるのだ。どうやら80年代からアートコレクティブとして存在・活動はあったそうだ。コレクティブって何?というところから理解しないといけないのだが、メンバーは流動的でというのを何となく知っていた程度だ。

坂本龍一さんの参加


この展示が始まった頃に、あ、ダムタイプに参加したのか、ということを知った。
昨年は美術館で氏の名前を見ること、聞くこと、他者によって語られることが増え、その人物像をたどる読み物も読む機会に恵まれた。
主に美術の側面から浮き上がる氏の肖像はヒット曲の作曲家でもなく、新しい楽器を世に知らしめた音楽家、でもなく「現代音楽家」や「環境音楽」という言葉がしっくりくる。

音楽と美術を分けて考えてしまいがちなのだが、どちらも芸術。

氏の出身校も芸術大学だったはずだ。
高松次郎氏が教壇に立っていた頃、坂本氏は学生で学科は違うが聴講しにったという話や、李禹煥氏との対談は記憶に新しい。
ずっと、音楽と美術で並走し続けていたのかもしれない。
私は音楽的側面しか見てこなかったけれど。

もしも美術と坂本氏のなにか計画が合ったのなら、また見たかった。
心から残念だけど。
しかし彼の残した芸術に、これからも癒やされ、励まされる人達はきっといて、その先に波紋の様に新しい表現が広がっていく事を祈ってやまない。


レコードに刻まれた氏の名前。




余談
実は私は坂本龍一氏と出身校が同じだったのだ。妙な親近感はそこで。
その学校の創立◯◯周年の記念冊子を作るため出身者である氏にコメントをもらったことがあったのだ。(当時母がその手伝いをしていた)
出来上がった冊子を掲載されたインタビューを読むと学生時代の良い思い出が載っている訳ではなく、ストレートに当時感じていたことや苦い話も包み隠さず載っていた。
忖度無く正直だな、と思ったし、載せた側も記念誌に良くこの内容載せたなと(フフフ)と笑った記憶がある。

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