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【件の美術】アートイベント「CURATION⇄FAIR」 登録有形文化財「kudan house(九段ハウス)」

2024年2月〜3月11日に開催された、東京・九段の登録有形文化財「kudan house(九段ハウス)」での新しいアートイベント「CURATION⇄FAIR」へ行ってきた。

イベントは「美しさ、あいまいさ、時と場合に依る」という展覧会開催後、同じ場所でアートフェア「Art Kudan」を開催するという2部構成だそうだ。
展覧会的に作品を見せる期間が終わった後、それを販売・商談に入るというわけだから、なんというか、良く言えばライブ感、悪く言えば生々しく感じるのは私が気後れしているからだろう。

「美しさ、あいまいさ、時と場合に依る」の詳細はこちら

今回は
・ひょんなことからアートフェア「Art Kudan」招待券を入手した
・普段アートフェアとは縁がないのでどんなものか。
・いつも見ているあの人の作品は一体いくらなのか
・東京・九段の登録有形文化財「kudan house(九段ハウス)」が気になる

という4つの好奇心、きっかけで出かけてきた。

九段ハウスとは


夕方に訪問
こんな所があったのか。



古美術から現代美術までを地下1階のフロアから地上3階のフロアに展示。
九段ハウス自体、通路や階段は古い建物のため狭かったり急だったり。
邸宅に現代美術の組み合わせは、今思い返すと、品川時代の原美術館に近いものがある。

寄木の様な床
館内は土足厳禁のため、スリッパを履いて見て回る。
アール・ヌーヴォー的な、しかしアール・デコ的な
こちらの階段は広め
地下ボイラー室。ちょっとこれは機関車の様で驚いた。


「九段ハウス(旧山口萬吉邸)」は手すりや床のタイルの雰囲気から庭園美術館と同時期の建物だろうか。と、調べたら「旧山口萬吉邸」が1927年。庭園美術館の朝香宮邸は1933年。
年代は近いが旧山口萬吉邸はスパニッシュ風味、朝香宮邸はフランス風味アール・デコだから様式的なものは違う。
ちなみに今は跡形もない品川の原美術館の建物も1930年代と時代が近かった。

見どころ

展示の面白さというと各ギャラリーが所持する品が並べられている点だろうか。美術館に収蔵されていない作品なわけだ。
新作だったり、シリーズから外れているような作品、その作家のパブリックイメージから少し離れている作品があることに面白さを感じた。

庭を背景に佇む


例えば手塚愛子
刺繍作品で表現をする方で、今まで見た作品は「きれいな色合いの、明るく軽やかな作品」だった。しかし今回のフェアでみたものはゴブラン織りの様な色味もくすんでいるもので、重厚なイメージの作品であった。
ああ、こういう作品も取り組んでいるのだな、と知ることができた。

ミニサイズ・青木野枝
見て一発で、「わぁ青木野枝さんの作品!」とわかる。

「このサイズが存在するんだ」と思うと同時に「これなら自宅に置ける」と思う方もいるのだろう。改めてハッとしたが販売が行われるアートフェアでもある。
そうか販売をしてるのか。
買い求める人がいる。
…。

そうなってくると人間気になるのは値段である。

商談用なのだろう、テーブルと椅子が一組置いてある展示室が多かった。
そこに、気軽に見れる作品一覧の冊子が置いてある。
手にとってパラパラとみると作品リストの末列に日本円での表記があった。
こういう時、心の中で「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、ju…」とつい唱えてしまう癖。
うーーーむ。
急に現実的な世界に引きずりこまれた。

この辺の人の思考って面白い。

沼落ちの瞬間とは

赤瀬川原平さんの「ライカ同盟」という短編集のはじめに、の項目に中古カメラウィルスの話が出てくる。面白い本なのでぜひいろんな人に読んでもらいたいのだが、今風に言うと、いわゆる「沼落ち」の瞬間をライブ感とユーモアたっぷりで伝えてくれている逸話も載っている。

旅にもよく連れて行く一冊。



作品を見ることから、少し興味がずれたことに気がついて我に返った。

面白い世界を覗き込んだが、心落ち着けて美術を楽しむならパブリック・コレクションになっているものをゆっくり見るのが今の自分の身の丈には合っているのだろうなぁ。

そんなことを考えながら、九段の坂を下って文字通り九段下駅。
温かい駅そばを食べて帰ろう、と思った3月初旬の夕暮れ時。

古そうなブレーカーの様な機械に惹かれる

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