10月になると思い出す話
10月になると17歳〜高校卒業までお付き合いしていた彼のことを思い出す。
高校2年生になるまでは話したこともなく、正直気に留めたこともなかった。
彼はお調子もので、いつも男子同士でワイワイしていて、変人なのに小さな室伏広治みたいな顔立ちをしており、とてもハンサムだった。
私が高校生の頃、LINEはなくてメールでやりとりする時代だったから、メアドを交換した後は
毎日メールをするのに学校では話さず
放課後になったらひっそりと待ち合わせして
彼のバイクに乗ってドライブしに行ったりと、
それなりの青春時代を送っていた。
喧嘩することもなく、家族ぐるみで仲良く付き合っていたと思っていたのだが高校卒業した直後、理由も言わず急にフラれ、いつの間にか沖縄からいなくなっていた。
人生で初めての失恋だった。
フラれた後は連絡先も変えられていたため、
私から連絡することはなかったし、向こうからくることもなかった。
フラれた理由が分からずしばらくモヤモヤしていたものの、短大とTVの仕事で忙しくなったり、私生活では新たに彼氏ができ、だんだんと彼のことは自然に忘れることができた。
大人になって
二十歳超えた頃、共通の友人を通じて久しぶりにあの彼から突然電話がきた。
色々聞きたいことはあったものの、当たり障りない会話だけして、それをきっかけに定期的に近況報告の連絡をくれるようになった。
彼女ができたこと、子どもができたこと、今度結婚することなど。
ライフステージが変わるたびに連絡をくれ、
奥様や子どもの可愛さをいつも自慢していて
幸せそうに暮らしていることが私も嬉しかった。
互いに年齢も重ね、連絡とる回数も少なくなってきた2、3年前頃、夜中に急に電話がきた。
久しぶり電話で話した声に元気がないのはすぐ分かったが、いつも通り仕事や子どもの成長など
当たり障りない話をしたあと、
「実はさ、俺健康診断受けたら癌見つかってさ。今度手術することなったんだよね」と。
突然の告白に言葉を失ったが、手術して元気なったら友人の店で祝杯でもあげようぜ!としか励ます言葉をかけてあげれなかった。
そんなしんみりした話から
高校生の頃あんな奴いたよなとか、あんな出来事あったよなと昔話に花を咲かせていたところ
彼の方から当時なぜ振ったのか理由を教えてくれた。
彼は結婚願望が強かったらしい。
若くで結婚し、子どもを作って自分の家庭を作りたかったと。
私の方はというと結婚願望は微塵もなく、
高校生の頃からテレビにでて、仕事を大切にしていたため、将来像の方向性に違いを感じていたのが理由だったと。
理由を知れたことによって、長年に渡るモヤモヤが晴れて私はようやくスッキリした。
手術終わって落ち着いたら安否連絡するよと言われ、数ヶ月経って無事手術終わって元気だとLINEが入ってた。
まさかのまさか
去年の私の誕生日、きゃべつ太郎氏と旅行に行っていた。
ホテルでのんびりしていると、あの彼から着信があった。
私の誕生日だから連絡してるのかと思い、何度も鳴る電話を無視していたが、きゃべつ太郎氏が電話に出ていいよというので、お言葉に甘えて電話に出ることに。
手術は成功していたが、若さゆえに進行が早く全身に転移してしまい、余命一ヶ月と言われてしまったと。
今は仕事も辞め、家族と沖縄に引越しし、残りの一ヶ月を過ごすよと。
嘘でしょ…しかコメントできず、かける言葉も見つからなかった。下の子なんてまだ一歳だし。
家族がいるのであえて会いには行かなかったが
余命一ヶ月と言われていたにも関わらず
それから数ヶ月頑張って10月に30歳の若さでこの世を去った。
最後の電話で「もっと生きたい」と泣いていた彼の言葉が今でも忘れられない。
彼の分まで生きるなんておこがましいことは思っていないが、きゃべつ太郎氏と一緒に過ごせることは当たり前ではないと思わせてくれるきっかけの一つになった。
10月がくるたび、私は生きることに襟を正していくのだろう。
おわり
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