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#1 鴨脚ことはの和訳特講 阪大'19第1問(A) 難易度★☆☆☆☆

1.問題

太字部の意味を日本語で表しなさい。

In December 1877, Thomas Edison made history by recording 'Mary Had a Little Lamb' on his phonograph and playing it back. This was not just 'an epoch in the history of science', it was a revolution for the human voice. Before then, hearing someone talk was exclusively a live experience: you had to be listening as the sounds emerged from the speaker's mouth. We can read the text of great speeches that predate the phonograph, like Abraham Lincoln's Gettysburg Address, but how exactly president delivered the lines is lost forever. The phonograph captured the way things are said, and this can be just as important as the words themselves. When someone says 'I'm all right', the tone of their voice might in fact tell you they are not all right.


2.解説

① In December 1877, Thomas Edison made history by recording 'Mary Had a Little Lamb' on his phonograph and playing it back.

【語句】
by doing
…doすることで
'Mary Had a Little Lamb'
…「メリーさんのひつじ」
phonograph
…蓄音機(文脈でわかる)

何も難しくない文章。蓄音機は文脈及び知識で行ける。

②This was not just 'an epoch in the history of science', it was a revolution for the human voice.

【語句】
not just [only, merely, alone, solely] A but (also) B
…AだけでもなくBもまた(Bに主眼を置いている)
epoch
…画期的出来事、ブレイクスルー

最重要構文と言ってもいい、not only but also 構文。いろいろな派生があるが、どの単語も似たようなニュアンスを持っているので十分対応出来る。
本文で出てきたのは、but が欠落した珍しい形。もしかしたらnot A but B と解釈を取った受験生が居たかもしれないが、いずれにせよBに主眼を置いているので、そこまで致命的なミスではない(恥ずべきミスには変わりないが)。
AではなくBに主眼を置いているため、単複もBと連動する(Bが複数なら後のbe動詞がareになるなど)。

Before then, hearing someone talk was exclusively a live experience: you had to be listening as the sounds emerged from the speaker's mouth.

【語句】
hear O C
…知覚動詞。OがCするのを聞く。
exclusively
…専ら
as
…するとき(whenとはややニュアンスが異なるか)

exclusivelyの解釈が難所か。ご存知の通り、exclusiveは、「排他的」「専門的」などのような意味を持つ。exclusivelyも同様に、「排他的に」「ただそれだけ」というonlyのようなニュアンスを持つが、「専ら」と訳した方が綺麗であろう。
それ(蓄音機の発明)以前は、誰かが話しているのを聞くのは生きた経験だと言っている。どういう事かは、その直後のコロンを見ればすぐわかる。話者の口から音声が発せられると同時に聞いていなければならないのだ。
コミュニケーションツールが発達した現代では忘れがちな視点であるが、意外と重要だ。本来会話とは、その場に居合わせたものにのみ許された行為である。

We can read the text of great speeches that predate the phonograph, like Abraham Lincoln's Gettysburg Address, but how exactly president delivered the lines is lost forever.

【語句】
predate
…前もって(pre:前 - date:日付)

エイブラハム・リンカンのゲティスバーグ演説は知っているだろう(流石に知らない人はいないと信じたい)。Civil War終戦直後の演説であるので1863年なはず(間違っていたらごめんなさい)。
エジソンの蓄音機の発明が1877年なので、確かにゲティスバーグの演説をリンカンの「生の声」で聞くことは出来ない。
そもそもあの演説自体かなり短いものなので、あっという間に終わってしまったのだそうだ。

さて、各予備校でかなり解釈が異なっているが、どの解釈でもそれほど突飛ではなく自然であるので、見比べてみるのも面白いだろう。

⑤The phonograph captured the way things are said, and this can be just as important as the words themselves.

特に解説しようのない平易な文章。再三筆者は、話し方は内容と同じぐらい重要だと説いているので、これが本文のメインテーマだ。

⑥When someone says 'I'm all right', the tone of their voice might in fact tell you they are not all right.

【語句】
in fact
…実は

本文では「大丈夫」の具体例を持ってきたが、ここでも言いたいことは一貫している。言い方ひとつで意味が真逆になることは、往々にしてある。やはり、話し方は言葉それ自身と同じぐらい重要なのだ。


3.全訳

1877年12月、トーマス・エジソンは『メリーさんのひつじ』を蓄音機に録音し、再生することで、歴史に名を残した。この出来事は、単に科学界の画期的な出来事というだけでなく、人間の声にとっての革命でもあった。それより以前は、誰かが話しているのを聞くということは、専ら生の経験に限られていた。即ち、音声が話者の口から発せられるそのときに、聞いていなければならなかった。エイブラハム・リンカンのゲティスバーグ演説のような、蓄音機の発明以前の素晴らしい演説を文字で読むことは出来ても、 どれほど正確に大統領が演説したのかは、永遠に分からない。蓄音機はどのように言葉が話されたかを捉えるが、そのことは言葉自身とちょうど同じぐらい重要だ。誰かが「大丈夫だ」と言っているとき、実は、その声色は「大丈夫ではない」と伝えているのかもしれない。


4.講評

良質ではあるが、旧帝大の入学者選抜としては極めて平易な文章で、受験生のほとんどは高得点を取る事が出来ただろう。つまり差がつかない問題だ。この差がつかない問題で、どれほど正確に点を取りこぼさないかが、至上命題に違いない。

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