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「824 月明かりのロンド」ができるまで

昨年末にタイ語の小説「824 月明かりのロンド」という翻訳小説をkindle出版した。https://amzn.to/3RrZFpI
15年前に台北に続きバンコクに5年間駐在した。駐在妻は一般的には帯同ビザで現地に赴く。帯同ビザを外れると健康保険などを自分で賄えるほどの高収入が確保できる就労先が必要でこれは一般的になかなかハードルが高いため、基本的に駐妻は現地で働くことはできない。ある日突然夫の駐在が決まり、とりあえず子どもと一緒に行こうと決めた私も自分の就労先など二の次でまずは家族の生活を優先に、駐在先に赴いた。駐在妻の日常生活についての色々はまた別に機会に書きたいと思うが、当時のバンコクはメイドさんもいて、私たち駐妻には時間がたくさんあった。私はママ友や会社の奥様とのショッピングもホテルでのアフタヌーンティも楽しんだが、何よりもまずは言葉習得に努めた。もちろんカタコトの英語が通じることもあるし、身振り、翻訳機能付きのスマホなどで日常生活を乗り切ることもできるが、買い物やメイドさんとのやりとり、日常生活で現地の言葉はできたほうが圧倒的に便利、しかも現地の人との距離も近づき断然楽しい。
私は日本で25年間ライターとしてインタビューや記事の作成を生業としていたので言葉や文字、文章が好きだ。タイ語も習っているうちに楽しい法則や習慣に基づいた言葉など、いろいろな発見があり、また少しずつでも理解できるようになる学習の楽しさに目覚め、最初はグループレッスンで初歩を習い、その後はマンツーマンの先生について週に何度かタイ語を勉強した。記号のような馴染みのないタイ語が読めると、街の看板がわかるようになりメニューが読めるようになり、おぉ、薬局と書いてある、おぉ、タイラーメンと書いてある、と読めたときの嬉しさといったら、もう。ますます勉強が楽しくなる。
それからどんどんタイ語を読む暮らしが始まった。英語、中国語でも同様だが、どうやら私は発音が苦手で、ヒアリングはできるが話すことはあまり得意ではない。そして読むことはまぁまぁ苦ではない。
子どもの頃から小説ばかり読んで、小説の世界にひたりながら生きてきた。自分では体験できない人々の人生に感動し、決して気楽に語れるわけではない、また普段の暮らしの中では言語化などしない、そんな余裕もない人間の内面が描かれた小説に心揺さぶられ、登場人物が私の中でふくらみうごめいて、私は私として生きて来たように思う。小説は私の人生を支え色どりを与え励ましてくれた。
そしてバンコクで暮らすうちに思いやりと愛にあふれるタイの人々が大好きになり、また気候風土も心地よく、タイの雑踏でお茶を飲みながら行き過ぎる人たちを見る日々の中、私は俄然タイの小説が読みたくてたまらなくなってきた。
小説でしか表せない、小説でしか語ることができない、小説の力。タイの小説が読みたい。タイの人々の今を、普段言葉にはしない今を知りたい。
そして日本文字にして11文字の小説、「824 月明かりのロンド」に出会う。
 
熱く語ってしまったが、これからnoteで、翻訳が完成するとも、これが出版できるとも思わず、情熱のままに突き進んだ、完成までの過程を書いていこうと思う。
あまりみなさんのお役には立てない内容で恐縮だが、今の私が書きたいこと、という自由な場をいただいたことに感謝しつつ。
じゃ、またね。
初めての投稿でした。
これからもどうぞよろしくお願いします。

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