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差別と戦った女性からの「平和の手紙」〜『ルビーの一歩』

◆ルビー・ブリッジズ著『ルビーの一歩 私たちすべての問題』(千葉茂樹訳)
出版社:あすなろ書房
発売時期:2024年1月

著者は1960年、白人専用の小学校に全米初の黒人生徒として入学した女性。大人たちが激しく抗議するなか、毎日四人の連邦保安官に守られて通学しました。勇気をもって人種差別撤廃への第一歩を踏み出し、その後、公民権活動家となって活躍しているルビー二冊目の本。巻頭で、この「平和の手紙」を米国下院議員で公民権運動の象徴的存在だったジョン・ルイスに捧げると言明しています。

見開き左に小文、右に写真を配したシンプルな作り。ルビー自身・家族の写真のほか、当時の黒人差別の状況や、その後に大きなうねりとなる公民権運動、昨今のブラック・ライブズ・マターの運動を写し撮ったたものまで、ビジュアル的にも黒人をめぐる60年以降の米国社会の変遷をたどる構成になっています。

「未来を動かすかもしれないできごとは、しばしば過去のできごとのなかにある」。後半部に記されたルビーの言葉がひときわ印象的です。「人種差別撤廃」という規範が当たり前のものとなるまでには、差別されてきた当事者による命がけの闘争が繰り広げられなければならなかった。コンパクトにまとめられていますが、その事実がよくわかる一冊です。

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