嘘に支配される日本2

社会民主主義で政治の回復を〜『嘘に支配される日本』

◆中野晃一、福島みずほ著『嘘に支配される日本』
出版社:岩波書店
発売時期:2018年7月

政治学者の中野晃一と社民党参議院議員・福島みずほの対談集です。
一連の公文書改竄や国会での虚偽答弁で日本の政治は嘘で塗り固められた惨憺たる様相を呈しています。その割には安倍政権の支持率は思ったほど落ちません。長期腐敗政権によるやりたい放題の悪政が堂々とまかり通っている摩訶不思議な時勢です。

安倍政権がやっているのは政治ではなく支配だと中野はいいます。では、政治を回復するためにはどうすればよいのでしょうか。
「政治」ならぬ「支配」を受け入れているのが他ならぬ日本国民ですから、それは現実問題としてきわめて難問といわねばなりません。

キーワードは社会民主主義。
日本の社会民主党が掲げる社民主義の理念とは、公式サイトによれば「平和・自由・平等・共生」の四つが中心となります。ただし他の主要政党でもこれらの理念を否定するところはないでしょう。

本書ではそれらに加えて、次のようなフレーズで社民主義をアピールしています。すなわち「社会民主主義にはフェミニズムが入っている」「みんなが安心して望めば子どもを生み育て、安心して働き続け、安心して年を取ることができる社会」「構造的な抑圧を社会、政治、経済、から取り除いていくことが社会民主主義の目標」「公平な税制の実現と労働法制の規制強化が大切」……。

現状を打破するに手っ取り早い処方箋などありえないことは重々承知していますが、それにしても一般的なスローガンが断片的に提示されているだけという印象が拭えません。

というわけで二人の主張にとくに異論はないものの、積極的に人に薦めたくなるような内容でもないというのが正直な感想です。そのなかでは、中野が政治における説得の論法として、カント主義的に絶対的な価値に訴える方法と、功利主義的なアピールを提起している点は印象に残りました。その観点から、社民主義の目玉政策をさらに具体的に提示すれば、もっとインパクトは増したかもしれません。

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