試験に出る哲学_Fotor

高校倫理を侮るなかれ!?〜『試験に出る哲学』

◆斎藤哲也著『試験に出る哲学 「センター試験」で西洋思想に入門する』
出版社:NHK出版
発売時期:2018年9月

「倫理」のセンター試験に出された問題を引用して、それをもとに西洋哲学の歩みを復習する。本書のコンセプトは明快です。著者によれば、高校で学ぶ倫理という科目では「西洋哲学の部分を取り出すと、入門的な内容がじつにバランスよく配置されて」いるといいます。この種の企画では、とかく問題の内容を批判したり皮肉ったりするようなことが多くなりがちですが、本書ではそのような態度はとりません。

古代ギリシャ哲学から始まり、中世のキリスト教神学を経て、近代哲学へと至る道筋を手際よくまとめていく筆致は、参考書の執筆で鍛えられた著者ならではのものといえるでしょう。

ソクラテスのエイロネイア(アイロニー)を説明するのに千葉雅也の『勉強の哲学』を参照していたり、巻末のブックガイドで國分功一郎の『中動態の世界』をリストアップしていたり、最新の研究動向にも目配りがきいています。筒井康隆の『誰にもわかるハイデガー』まで挙げられているのも一興。とくに目新しいことが書かれているわけではないけれど、一般読者向けの哲学入門としては面白いやり方ではないでしょうか。

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