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LOVE IS [NOT] DEAD.

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千葉市にある某BARのマスターをモデルにした小説です。よって実在の人物や場所などとは多少関係あるかもしれません。 【追記】 2019/09/03完結しました!
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2019年5月の記事一覧

おやじパンクス、恋をする。#125

「どしたよ」タカがライムを絞りながら聞く。 「雄大だ」 「マジ?」  ああ、と頷きながら…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#126

 タカに詫びて店を出ると、コロナ片手に駅までの道を歩いた。  俺の店のある怪しい界隈と違…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#127

 こういう電車に乗るとよくわかるが、東京とかそういう大都市は別として、郊外の街ってのは、…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#128

 駅員一人いねえような寂れた駅を想像してたが、意外と大きな駅だった。ロータリーには十近く…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#129

 変な顔だった。  変に無表情なんだ。 「よお、来たぜ」  俺は近づいていって雄大の前に…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#130

 いや、ここ病室だろ。  絶句する俺を見てその老人は、へっと笑った。真っ白の髪はマッドサ…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#131

「このあいだ久しぶりに神崎と話したが、和弘がもう四十過ぎだってなあ。そら、歳もくうはずだ。雄大は男兄弟がいねえから、君らみたいな兄貴分がいると、俺も安心だよ」 「いえ、そんな」と俺。 「安心して死ねる」  梶さんはそう言って笑ったが、すぐに真顔に戻り、少しだけ視線を落とした。陶器製の灰皿を手に取り、トントンと弾く。 「そうだ、倫子のことだったな。あの子のことを、聞きに来たんだろう?」  不思議なもんで、唐突に核心に触れた梶さんの言葉に、俺は驚いたりビビったりはしなか

おやじパンクス、恋をする。#132

 その後梶さんから聞いた話は、なんていうか、内容自体は予想の範囲内で、こないだ雄大がここ…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#133

 黙って暗い廊下を進んだ。エレベーターで一階まで降りた。  病院を出ると、外に作られた喫…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#134

「元気そうに見えたけどな。梶さん」  俺は、目の前に建つ病院を見上げた。  どこが梶さん…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#135

 本来であれば、梶さんの話を聞いて、俺はそれでも彼女を好きなのか、一緒にいたいと思うのか…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#136

「なあ雄大。お前は、姉さんにどうなって欲しいんだよ」 「何言って……」 「俺に、どうして…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#137

 店に戻れたのは、十時過ぎだった。  帰りの電車で何を考えていたか、ほとんど思い出せない…

rou kodama
5年前
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おやじパンクス、恋をする。#138

 その向こう側に繋がっている彼女の顔を想像して、浮かぶのはやっぱりあの日撮影した写真の中の笑顔で、だけど今は、その姿にダブる感じで、こないだ雨の中ずぶ濡れで現れた姿、珍しく感情的になって雄大を心配する姿、そしてなぜか、さっき会ってきた梶さんの姿までもが、見えるのだった。   俺は通話ボタンを押した。  三四回呼び出し音があって、彼女は出た。 「やあ」  別段驚いてもない風の、彼女の声。少しハスキーで、でもどこか懐っこい声。 「悪いね、こんな時間に。起きてたか?」