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おやじパンクス、恋をする。#241

 彼女は真っ赤になった目をして俺らを見据えると、カツカツカツってまっすぐ雄大のとこに近づいて、その頬を思い切り張った。

「バカ、自分勝手もいいかげんにしなさい」

 続けて一発、また一発。

 ボディガードにさんざ殴られてた雄大だが、姉さんからのビンタに、そしてその後の「よかった、無事で」の言葉に、また違ったダメージを受けたみたいだった。

 雄大は歯を食いしばるようにして俯くと、「ごめん」と謝った。

 彼女は泣きながら雄大を抱きしめた。カズとボンがそれを嬉しそうに見ているが、俺には何がなんだかさっぱり分からない。

 やがて佐島さんはぐったりとうなだれて、「分かりました。今日のことは、なかったことに」と言い、社員たちに指示して俺らを解放した。

 不思議なもんだな、窮地を乗り越えた途端、痛みが襲ってきやがる。

 ボコボコの顔が水風船みたいに重くなって、ああでも、よかった。ほんと、よかった。何が何だか分からねえけど、よかった。

「んじゃあ、おいとましようか」

 カズのおやっさんが言って、俺達はハッピ姿の社員と一緒にVIPルームを出て、イカレタ集団の登場にさすがにフロアの客も道を開けてくれ、さっき大乱闘を繰り広げたあの細い通路を横目に階段を登ると、店の外に出た。

 俺はそこでまた驚くことになった。

 何しろ、店の前にバカでけえマイクロバス――駅前とスーパー銭湯を接続しているあの無料バス――がデン! と停まっていたからだ。

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LOVE IS [NOT] DEAD. 目次へ

この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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