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最初の模擬授業をする前に。

「採用試験の模擬授業をする前に」という文章を少し前に書いた。
こちらは、数回の模擬授業と教壇実習を経験して、養成講座を修了した方々について書いたものだが、では、そもそも模擬授業というものも知らない、外国人へ向けての授業そのものがイメージできないという人々もいるということに気づいた。

以下、毎学期、養成講座に新入学される受講生の方にお話をしながら、頭に浮かべていたことを整理する。

1.他人と比べない


どんなに教材・文型を研究して準備をしたつもりでも、自分がイメージしていた授業が他の受講生と違っているのでは、と考えることもある。
そんな時は焦らずに立ち止まって考えて欲しい。
「あなたには、あなたにしかできない授業がありますよ」

2.面白がって授業をする


まず、「楽しむ」というのは能動的、意志的にできるものではなく、自然に気持ちが沸き立ってくるという感じがするので、僕はあまり「楽しんでください」ということは受講生に言わない。模擬授業の楽しみ方と言われても、具体的に、相手が分かる言葉で説明することは無理である。少なくとも僕には。

それよりも「面白がる」のである。
「あまり大きい声出さなくても声が響くんだなあ、俺は」
「2列目の○○さんはにこにこして協力的な感じだな。後で話してみよう」
「パワポでこんな教え方できるのか。少し良いもの見つけたな」
「今、思ったよりすぐにレスポンスが来たぞ、では、ホワイトボードにも何か書いてみよう」
「内容は良くないかもしれないけど、でも返事してくれた人がいたな。できただけでも私はえらいよ」
「無事に終わってよかった。家帰って誰に報告しようか。それともどこかに寄って美味いもの食おう」

と思うだけで充分である。人間はこのようにして進歩、前進をするのである。そして、「生まれて初めて模擬授業ができたということ」だけに徹頭徹尾、意識を集中して「よかったな」と思うのである。反省というものは、あまりいらない。初回を終えて次回の番が回ってくるまで、「できなかったことを思い出して」、次にするのである。また、他の受講生がすることをよく観察して、真似ればよい。学べばよい。

3.敢えて自分を型(基本)に嵌める

分からないこと、イメージがつかめないことは、できるだけ講師に質問・確認をしておく。

人前でパフォーマンスをするわけだし、何事も「型」である。「型」が入っている人は、やはり、どのような文法で授業をやらせてもクオリティーが高い。
日本人は「型」と「道」が好きなのだと思う。
剣道、柔道、茶道、華道、それにサッカーはリフティング、野球はバットの素振りから始まるのだ。
以上は、養成講座に通う受講生、現場で働く日本語教師、どちらにも共通している。だから、不安に思うことがあれば、限られた時間の中で、何をするのかTo‐Doリストを作って順番を決めるのが良い。そして、それが「教案」の第一歩となるわけだ。
次に、それを担当の講師に目を通してもらうだけで軌道修正になるし、何も準備をしないで臨むよりは、雲泥の差が生まれると思う。但し、実技を担当する講師の方は忙しい。そこで、事前に目を通してもらう際は、何日前まで可能なのか、よく確認したほうが良い。
模擬授業の前日に教案を送られても、添削やコメントはできないでしょ。それをまた、自分で直すこともできないよね。

だから、第1回目の教案は、できるだけ早く作成して、自分のイメージを明確にしたい。そして、経験を持っている実技の講師に客観的に見てもらい、修正をする。

基本的に我流で授業をしているように見える人も、型が入った上で「型破り」にしている人と、型が入っていない「型無し」の2種類がいる気がする。基礎を身につけた上で研究を重ねている人はスケールも大きくなる。自然に外国人学習者の支持も増やしている。対面であろうが、オンラインであろうが、ハイブリッドだろうが、その人らしい、良い授業スタイルを作って更新している。

4.くれぐれも、できなかったことを数えない


それ以上に大切なことは、「こんな自分でも上手くできた」という小さな喜びや嬉しさが積み重ねるのである。自己発見、自分の可能性に気づくことがが授業研究を前向きなものにして、創造的な授業ができるようになる。そして人生を豊かにするのである。

他にも、未だあるのだが、初心の方に多くを伝えるのは控えた方が良いと思う。とは言え、以下の2点も最後に加えてたい。

5.インパクトを狙わない


自分の趣味や思想を披露しない。→自分の話したいことが相手の聞きたいこととは限らない。

6.「外国語としての日本語」を意識する

「日本人が話す日本語」の意識は一度忘れてみる。日常的に、外国人がどんな時にそれを言うのか、という疑問に答えるつもりで担当文型を分析する。

いつも、模擬授業をするコツや心構えを質問されるのだが、どうもその場では上手く答え切れずにいたことを文章にしてみた。

以下のリンクは、僕の職場のYouTubeチャンネルの動画ですが、実際の受講生(受講2か月半)に模擬授業をお願いしました。演出、打ち合わせ無しでの模擬授業とFBで、養成講座の授業の雰囲気も、もしよろしかったら覗いてやってください。

https://www.youtube.com/watch?v=YeQtUG5Mkwk&t=313s

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