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モーニングページ

妻に対して若干後ろめたいのですが、私には朝の習慣があります。

全ては、ジュリア・キャメロン著の『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』の影響なのですが、彼女は朝、起きたての無垢な状態で、自分と向き合う時間を持つことを勧めています。これを私は毎朝実践しているのです。

一昨年の春、メキシコでの海外駐在を終えて帰国した時、まず第一に考えたのは、自分は何か創造的なことを始めねばならないということでした。当時私はとても擦り減っていました。いや、もっと正確に言うと、残念ながら思うような成果は上がらなかったけれど、もうこれ以上は自分の力ではどうしようもなかった、仕方がない、というような心境でした。でもだからと言って立ち直れないというような一方的に打ちひしがれた心境ではなく、むしろ、仕事ばかりでこれまで見えていなかった様々な世界に飛び込んで色々なことを吸収したい、という気持ちがむくむくと湧き上がって来ていました。

そんな時に出会ったのが、彼女の著書でした。曲解しているかもしれないのですが、私が彼女からメッセージとして受け取ったのは、人間は生まれながらにして創造する力を持っており、自分と向き合い、自分が本当に何をしたいかが分かれば、自分を超越する何者か(神のような存在?)が自然にそれを実現させてくれる創造の世界に導いてくれる、ということでした。そして、その大きな手助けとなってくれるのが、モーニングページなのです。

人類が背負ってしまったもの (メキシコ)

さてそれでは、そのモーニングページとは、もっと具体的に言うと何なのでしょうか。それは、毎朝、まだ損得勘定や理屈の観念がおぼろげな、起きたばかりのまっさらな状態で自分と向き合い、何の制約や制限、タブーもなく、感じていることを何の装飾も施さず、むき出しのまま書き連ねてみるエクササイズなのです。

妻に後ろめたさを感じるというのは、毎朝普通に会社に行くだけなら7:00過ぎに起床しても十分に間に合うのに、モーニングページを行うための自分一人の時間を確保するため、「朝は仕事の能率が上がるから」というような屁理屈を言って6:00前に起きて家を出ているからです。私は我儘ですから、家を出る前には普通に朝ごはんも頂いています。妻に作ってもらって。いやこう書いていると極悪非道ですね。でも、やめられないです。

そうして家を早く出てどこに行くかというと、会社ビルの一角にあるオフィスワーカー用の共用スペースなんです。まだ7:00過ぎだというのに似たような人が出社前の貴重なほんの一時をそこで思い思いに過ごしています。
私はそこでスカイブルーの表紙の日記帳を広げ、『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』から裏表紙の裏に書き写した25個の好きなフレーズにまず一通り目を通します。そして前日に書いたコメントの続きに、その日の日付を書き、その25個のフレーズの中から気分にあった5フレーズを選んで書き写すのです。それらの一通りの儀式が終わってから、自分の心に浮かんだ雑念、妄想、通勤の道すがらに気付いた(思いついた)こと、今日是非取り組みたいこと、将来に向けて何をすれば良いか等とりとめもないことをつらつらと書き込んでいきます。


何も考えずに泳いでいるように見える魚たち (沖縄 美ら海水族館)

このモーニングページをこれまで1年7ヵ月程度継続しているのですが、実のところ目立った恩恵のようなものは正直感じていません。しかし、この行為によって自分の毎日の土台が整えられているというのは確かだと思います。
ただ、鳥が大空を飛び、魚が海や川、沼、湖を泳ぐというようなレベルで、自分はこの地球で何も考えずにただひたすら生きることができているかというと決してそうは言えないように思います。自分一人の世界に閉じこもってしまって、私と他者、いや人間だけでなく動物や植物、それだけでなくモノも同じ世界の住人です、という開かれた感覚があまりに乏しい。そんなことをモーニングページを書きながら、考えるともなく考えております。
なまじ言葉を持ってしまったため、本来考える必要のない余計な事を考えるようになってしまった。特に自分には、その言葉を持ったことによる負の側面が色濃く出てしまっているような気がします。

しかしこの身勝手な、しかしとても魅惑的な自分だけの時間、これは手放しようがなく、妻には少なくとも当面は迷惑を掛けることになるのだろうな、と思っています。願わくは、この自分に閉じ籠ってしまっている時間が、自分の周りの人も巻き込むような創造の世界への通路を広げる前向きな時間に劇的に転化することを夢見ています。そうなれば、自分も妻もそして世界の生きとし生けるもの、更にはモノも含めて皆が幸せに生きることができるのではないか、そんな妄想を抱いて。

それでも希望はある (ペルー)


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