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『稲盛和夫一日一言』 3月23日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 3月23日(土)は、「状況妄動型の人間」です。

ポイント:「こうしたい」と思っても、社会情勢、経済情勢などから、すぐに実現困難であると諦めてしまうような、状況妄動(もうどう)型の人間であってはならない。

 2016年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第6巻 企業経営の要諦』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、「集団のリーダーは強い意志を持って立てた目標を達成していかなければならない」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 ビジネスでは、予期せぬ課題や障害が次々と発生してきます。そのようなときに、強い意志を持っていなければ、少しの環境変化を口実に、容易に目標の達成を断念してしまうことになります。

 私はかつて、京セラの経営スローガンを、「潜在意識にまで透徹するほどの強い持続した願望、熱意によって、自分の立てた目標を達成しよう」としました。
 このスローガンが示すように、集団のリーダーとは、いかなる障害があろうとも、目標達成に向けて、強い意志を持ち、一切の妥協もせず、ひたすらに邁進していかなければならないと、私は考えています。

 ところが、経営者の中には、目標を達成できないと、すぐに言い訳をしてみたり、目標を下方修正したり、極端な場合には、目標そのものを撤回してしまったりする人がいます。

 立案した経営計画は、本来は従業員や株主、また社会への約束であるはずです。それなのに、予期せぬ経済環境や市場動向の変動を理由に、目標の撤回や下方修正をすることをためらわない人がいます。私は、そのような状況追従型、状況妄動型の経営者、リーダーは、すぐにでも交代しなければならないと考えています。

 予期せぬ経済変動など、状況の変化に経営を合わせていては、いったん下方修正した目標でさえ、次にやってくる経済変動にそぐわないものになり、さらに下方修正が必要となってしまいます。
 そのようなことを続けていれば、目標が有名無実化してしまうばかりか、やがてはリーダー自身が集団の信頼を失ってしまうことになりかねません。

 しかし皆さんの中には、「リーダーである自分がいくら強い意志を持っていても、部下がそのとおりに動いてくれない。だから、目標の下方修正もやむをえない」と考える方もいるかもしれません。

 そうしたリーダーの方には、「部下の前で、あなたは本当に自分の強い意志を、口先ではなく態度で示していますか」と問いたいと思います。
 言い換えれば、「われわれのリーダーがあんなに必死に努力しているのだから、何とか自分たちが助けてあげなければ」と部下から思われるくらい、リーダー自身が「誰にも負けない努力」を払っているのか、ということが問われてくると思うのです。

 創業間もないころ、私は従業員に対して、よく次のように言っていました。「私は、仕事では皆さんにたいへん厳しいことを要求させていただきます。その代わり、時間の長さでも密度の点でも、私は皆さんの誰にも負けないくらい働きます」

 職場で一番苦労しているのがリーダーであり、そのことが部下にも誰の目にも明らかであれば、必ず部下はリーダーについてきてくれるはずです。
 目標達成に向けて強い意志を持ち、その達成のために、リーダー自身が「自己犠牲」とでもいうべき献身的な仕事ぶりを発揮していれば、どんなに厳しい環境下であろうとも、その集団は一丸となって、目標達成に向けて邁進していくことができるはずです。

 「目標を明確に描き、実現する」
 集団のリーダーとして、それが最も大切な仕事の一つです。
(要約)

 今日の一言には、「心の奥底からこうありたいという強い願望を持った人であれば、周囲の環境がいかに難しくとも、願望を実現するための方法を考えていく。そこに努力と創意が生まれてくる」とあります。

 京セラに入社して初めてアメーバリーダーを任されたとき、上司から「これからは、職場の誰よりも早く出勤して、アメーバのメンバーが毎日どんな顔つきで出勤してくるのかを確認するようにしなさい。それもリーダーの重要な仕事の一つだよ」とアドバイスされたことを思い出しました。

 それからは、毎朝掃除をしながら、自分の職場のメンバーがどんな様子で出勤してくるのかを観るようになりました。
 暗い顔をしていたら、「何か心配事でもあるのか」と声を掛け、またアルコール臭くて眠たそうな顔をしていれば、「注意が散漫になってケガをしたりミスを起こしたりしないように」と注意するなど、その日一日、自分の職場のメンバー全員が、少しでも活き活きと仕事ができるようにケアをするのが日常となっていきました。

 目標を明確に描き、それを実現するために誰よりも最も苦労すること。
 職場で一番苦労すべきはリーダーであり、部下の誰から見てもそれが明らかであれば、必ず部下はついてきてくれる。
 京セラ在籍40年の間、私にとって、それは紛れもない事実でした。


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