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焚き火が恋しい季節。知れば知るほどハマる焚き火の魅力と楽しみ方

キャンプの楽しみのひとつでもある焚き火は、屋外での調理をはじめ、夜には明かり、寒い時期には暖を取るだけでなく、ゆらゆらと揺れる炎や薪がパチパチとはぜる音には癒しの効果があるとも言われています。そんな焚き火も「うまく火が起こせない」「すぐに消えてしまう」となれば、癒しどころかちょっとしたストレス!になることも…そんな悩みを解決するだけでなく、焚き火を楽しむ極意を焚き火の達人に伺いました。
本格的な寒さを迎えるこの時期、秋冬キャンプにも欠かせない焚き火の魅力をご紹介します。

焚き火の達人:
田中 飛雄馬(たなかひゅうま)
R.projectグループキャンプ事業
所属:株式会社Recamp 運営部 本栖湖SUMIKA CAMP FIELD


■焚き火をはじめる前に知っておきたいこと

‐焚き火ができる場所

田中:焚き火ができる場所としてキャンプ場やバーベキュー場が挙げられます。ほとんどのキャンプ場やバーベキュー場が、火災と紛らわしき行為として消防署に届け出たうえで許可を得ていますが、自然公園法などによって、場内であっても可能な場所が限られているケースもあります。
焚き火を行ううえで適切な管理ができているかも重要なため、必ず指定された場所で行うようにしてください。

‐準備するもの

・焚き火台
・焚き火シート
・マッチ、ライターもしくは発火器具
・着火剤
・薪

田中:今は、焚き火台を使うのがベーシックなスタイルです。火をつける際は、マッチやライターの他に、火打石やマグネシウム製のファイヤースターターなどもあります。また着火剤は、その代わりになるものとして、枯草や乾いた樹皮、後はまつぼっくりなどが使えます。まつぼっくりには松ヤニという天然の油が含まれているので、火がつきやすいんです。ただ、鱗片が閉じているものは水分を多く含んでいるので、ひだが開き乾燥しているものを使ってください。

着火剤として使用できるのは、乾燥して鱗片(かさの部分)が開いたまつぼっくり(左)

Q.焚き火台を使用せずに焚き火ができるところもある?

田中:全国的にもかなり少なく、本栖湖SUMIKA CAMP FIELDがある本栖湖周辺は、火災防止と自然環境保護の観点からできる場所は全てなくなりました。

Q.焚き火台の下に敷く焚き火シートは必要ですか?

田中:焚き火シートには、焚き火台からこぼれ落ちる小さな火種から引火を防ぐ、また芝や土のなかにいる微生物の命を守る役割があるので、安全性と自然を守るためにも使用いただくことを推奨しています。

Q.キャンプ場で道具を借りることはできますか?

田中:RECAMPはすべてのキャンプ場でレンタルが可能です。そのほかのキャンプ場でも用意されていることがほとんどですが、借りられる内容が異なるので、事前に確認することをお勧めします。

■手順を覚えるだけじゃもったいない!焚き火を理解すれば、楽しみ方は無限大

‐火が付くための必要な3つの条件

田中:最近ではYouTube等で情報が得やすくなりましたが、私たちがアドバイスする際には、着火剤をたくさん使わずに着火させる、火種を育てる、燃え続けさせる「ヒント」をお伝えしています。
・・・では、ここで問題です!(笑)
火が付くために必要な条件が3つあるんですけど、それは何でしょうか?

焚き火イメージ(PIXTA素材より)

田中:答えは、①可燃物(燃えるもの) ➁熱 ③酸素 です。
火は、燃焼という化学反応によって生じます。そのため、この3つを意識することが大切です。また、火に対して薪の側面を向けると火が面を伝って横に逃げてしまいますが、薪の角を向けると火が薪を包み込んでくれます。そういった火の流れも考えると着火しやすくなります。

薪はここ(角)が燃えやすい

田中:初心者の方や火起こしに苦戦してる方には、手順だけでなく、物が燃える仕組みをお話ししているので、こども達も実験的、学習的要素と併せて楽しんでくれています。

‐火起こし&火を育てる

田中:火は下から上へと立ち上がるので、まずは着火剤を一番下に置きます。最初の火種をつくるときは、細い薪や薪の樹皮面、角のささくれた燃えやすい部分を使用します。このとき、さきほどの3つの要素を忘れずに、熱を逃がさない程度に空気の通り道を作ります。薪を追加する際も同じことに気をつけて、量や置き方を考えながらやると、うまくいったときに満足感も得られてますます楽しくなりますよ。

‐薪の種類を知る

田中:薪は針葉樹と広葉樹の2種類があります。持った時に軽い針葉樹は、密度が低く油を含んでいるので燃えやすく、勢いよく燃えてくれます。逆に持った時に重さのある広葉樹は、密度が高くて燃えにくい、ただその分燃焼時間が長くなります。燃えやすい針葉樹は火起こしの際に使って、広葉樹は火が安定してから、またじっくり楽しみたい場合に使うなど、薪の特製を活かして使い分けることもできます。薪の種類で異なる香りも一緒に楽しんでください。

‐薪の組み方と燃え方

田中:井型に組んでいくキャンプファイヤー型もおすすめですが、着火が難しいので、初心者の方はイメージのしやすい三角錐をつくるように薪を配置するスタイルのほうがやりやすいです。薪のカタチ、サイズ、重心などを考えて配置すれば、比較的簡単にできますし、空気の通り道も確保しやすい組み方です。

薪の組み方

田中:薪が燃えているとき、二酸化炭素は下から抜けていき、酸素は横から入ってきます。薪を横に寝かせて置くと空気が循環しづらいので火を小さくすることができ、薪を縦に置くと空気の循環が良くなるので火を大きくすることができます。この空気の流れを知っておくことも大切です。

薪の組み方で火の勢いも調整できる

Q.なんでも燃やして良いの?

田中:ビニールや化学製品は、嫌な匂いを発したり自然環境にとって良くないものが煙に混ざったりするので、燃やさないようにしてください。また、自然にあるものであればなんでも良いわけでもありません。生木を折る、芝生を剥ぐことは避け、あくまでも地面に落ちている枯れ木や枯れ葉であれば大丈夫です。

燃やせるもの

田中:もうひとつ注意していただきたいのが、キャンプで使用した割りばしや紙皿。割りばしは、薪と同じなので問題ありませんが、紙皿などの紙類は、灰になって舞い上がると火災に繋がる危険性だけでなく、テントやタープに付着して穴をあけてしまうなど、二次災害が想定されます。自然環境や周囲への配慮を忘れないようにしましょう。

Q.手順を覚えるだけではなく、焚き火を理解することが大切?

田中:火のつけ方、薪の組み方もそうですが、薪の種類や風向き、その日のコンディションによっても異なりますので、アドバイスや注意すべきポイントをお話しして、できるだけ「挑戦」してもらっています。
基本的なことを理解していれば、「考える」「工夫する」ことができます。そうやってチャレンジしたほうが達成感も味わえていろんな楽しみが生まれます。

■自然環境とマナーを守ってこそ語れる焚き火愛

‐焚き火終了後の処理

田中:焚き火台から薪がはみ出て落ちてしまうことも多いので、落ちて燃え残った薪はそのままにせず、その際は拾って処理しましょう。完全に燃えきって灰にすることができたとしても、地面にそのまま残すことは土にとってストレスにもなれば、場合によっては環境破壊にもつながるので、焚き火終了後の灰や燃えカスは、各キャンプ場の「灰捨て場」へ捨ててください。そこでキャンプをしていたことがわからないくらいきれいにしていただけると、私たちも「すごいキャンパーさんだな」って嬉しくなります。(笑)

‐焚き火をする位置

田中:焚き火台の設置位置が木の枝の下だった場合、熱の影響で枝や葉が枯れてしまうこともあります。気づかないうちに、自然に悪影響を与えてしまうのは避けたいですよね。キャンプ場では、火災の危険性を避けるため整備もしていますが、ひとりひとりが周囲の状況をみて、自然環境にも配慮して行ってください。

■科学的思考で身につく焚き火のスキル

Q.焚き火の知識は災害時にも役立つ?

田中:キャンプやアウトドア活動で得た知識は災害時に役に立つことがたくさんあります。そのひとつが焚き火、火起こしの知識です。そもそもマッチやライター、バーナーがあったとしても燃えるものが無ければ火を起こすことはできません。まずは針葉樹の枯れ葉や枯れ枝、乾燥しているものなど燃えやすいものを集めることが大事です。
次に火をつけるためのファイヤースターターといった道具、しかしこれも手元にない、使い方が分からなければどうしようもありません。緊急時にはこれまでに経験したことが役に立ちます。その点でいうと、虫メガネで黒い紙に光を集めて火を起こすのが一番簡単だと思います。虫メガネの代わりに眼鏡や鏡も使えます。物が燃える仕組みを理解していれば、またいろんな知識や経験がいざという時の備えにもなります。

Q.田中さんはRECAMP勝浦や本栖湖SUMIKA CAMP FIELDでのキャンプファイヤー(大焚き火)イベントを主導していると伺いました。どうやってそのスキルを身につけたのでしょうか?

田中:基本、化学の力を使っているだけです。燃焼現象の理由を考えて、「なぜ」「どうして」を積み上げれば、いろんな焚き火が楽しめます。

ハロウィンイベント「大焚き火」

田中:来月には、ヒーロー(R.projectグループBBQ事業)主催のイベント「焚火クラブ」が開催されます。身近な場所で体験できるこの機会に焚き火の魅力に触れてください。


<編集後記>

お話を伺うにあたって、焚き火素人の私は「こうすれば簡単にできるよ」といった手順をまずは教えてもらおうと思っていましたが、まさかの「ここで質問です!」にドギマギ。
物事の現象には必ず理由があって、それを理解したうえで「なぜ?」「どうして?」を自分で解決していくことのなかにおもしろさがあることに気づかせていただきました。
「なんで火がつかないんだろう?」と「どうすれば火がつくのか?」は同じ疑問のようでも、答えの導き方、アプローチの仕方が異なる。ならばさっそく焚き火に挑戦したい!と思い、気づいたら近くで焚き火のできる場所を検索していました。


取材・文:j.funakoshi
取材日 :Nov.2023


【焚火クラブ2023】


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