見出し画像

"美人”だけが才能ではない。大物を仕留める女の正体|魔性の理由

ワイドショーや週刊誌のニュースでこんな文言を目にしたことはありませんか?

『演技派俳優〇〇が、一般女性(27歳)と入籍したことを発表しました』

あの誰もが知るイケメン俳優が、旬の女優でもなく、女子アナでもなく、一般女性と結婚?一体どんな女性なの......?

しかしその正体を気にかけても、素人ゆえに顔写真はもちろん、詳細はあまり出てきません。「〇〇似の美女」という曖昧な情報のもと、彼女は様々な憶測で語られ、世の中の羨望と嫉妬を集めていく......。

こうした女性が「魔性の女」として世間を騒がすことはよくあります。

もちろん、その種の女性が「美女」であることは間違いなく、それは一つの才能でしょう。

けれどただ「美しい」だけならば、世の中には美しい女性は多いるはず。

そもそも美の基準というのは人の好み、地域、時代によっても変わるので、それほど大きな理由なのかは疑問です。

ならば大物を仕留め、世間の注目を惹き「魔性の女」となるのは、一体どんな女性なのでしょうか......?

【恋に効く】ダブルアールおすすめ作品Vol.4

アッコちゃんの時代|林真理子著 

「地上げの帝王」と呼ばれた不動産会社社長の愛人を経て、女優を妻に持つ有名レストrなんお御曹司を虜にし、狂乱のバブル期の伝説となった女性、アッコ。彼女は本当に「魔性の女」だったのか。(裏表紙より抜粋)

これは実在の女性をモデルにした小説です。

見所は、何と言ってもバブル好景気に沸く東京の描写、そして主人公の厚子(アッコちゃん)を始め、バブル時代の主役となった美女や大金持ちたちの実態です。

これはあくまで小説ですし、バブルを知らない世代からすると夢みたいな世界にも思えるのですが、実際にバブル時代を経験した方からすると、内容は決して大袈裟でも何でもなく物凄くリアルだそうです。

道路はぎっしりとタクシーで埋まり、そこへ人が群がる。「空車」のサインが消えていても、人々は未練たらしく歩道に戻ろうとはしない。中には厚子ほどの若い女が何人もいる。
「かわいそうー」
と厚子はつぶやき、同時に自分の体を受け止めている、ロールスロイスの革の感触を思った。その時、自分は選ばれた人間だということに気づいた。誰に選ばれているのかはわからない。ただ自分は、空のタクシーをめがけて走る側の女でないことは確かだ。こうしてロールスロイスに乗って走り抜ける女なのだ。これから先もずっとこうなのだろうと厚子はぼんやりと思った。 (本文より)

冒頭から随分と香ばしさを放つアッコちゃんですが、早速その「魔性」を考察してみましょう。

魔性の理由①楽観主義

冒頭では、アッコちゃんがその美貌でどれほど周囲の男性から崇められていたか、それは多くの武勇伝が書き連ねられています。

けれど読み進めるうち、彼女は稀に見る楽観的な女性だと気づき始めます。

夜遊びのしすぎで父親から殴られたり週刊誌に「悪女」と書かれたことが原因で短大を退学せざるを得なくなる場面でも、落ち込むのはほんの一瞬で、嫌なことはすぐに忘れてしまう、あるいは消化してしまうのです。

元恋人の内縁の妻である銀座のママに訴えられた場面でも、騒ぐことなく華麗にスルーする姿は20代前半の女性とは思えないほど頼もしい。

また妻子持ちの恋人の妻から責められた場面でも、アッコちゃんは全く動じません。それどころか、その後恋人とヨーロッパ旅行に出かけ贅沢を楽しんだりしています。とにかくネガティブな感情に陥ることがなく、常に楽観的なのです。

不倫の恋に溺れた女性の大半が「彼が奥さんと別れてくれない......」と悲観に暮れる中、アッコちゃんの楽観の姿勢は達観しているとも言えます。

魔性の理由②達観している

この「達観」というのも重要な気がします。

アッコちゃんの周りに群がるのは言うまでもなく大金持ちばかりなのですが、そういった男性は例に漏れず女好き。アッコちゃんを散々熱心に口説いていたにもかかわらず、アッサリと他に愛人を作ったりします。

それでもアッコちゃんは、やっぱり動じない。

彼らを責めるという発想すらなく、それどころか、心の底から笑い飛ばしてしたりするのです。

今、五十嵐は自分を愛していると言う。絶対に手放さないと言うが、今たまたま順番が回ってきたような気がする。来年になれば、もっと別のものが彼の心を捉えているかもしれない。しかし奇妙なことに、そのことをそれほど寂しく辛いことに感じないのはどうしてなのだろうか。(本文より)

20代半ばの女性の思考にしては、かなり達観してますよね?(笑)

そして、こうした女性が男性にとって貴重であることは間違いありません。

魔性の理由③自分の人生を楽しんでいる

物語の中でアッコちゃんの魔性の理由については美貌以外にほとんど言及されておらず、またアッコちゃん自身もその理由が分からないという描写が多くあります。

しかしたった一文だけ、その答えが示されていました。

アッコはさ、計算しているようで、まるっきり何もしてないのさ。いつも面白そうなこと、楽しそうなことだけを追っかけてる。それが目にも表れてるから、みんな男は吸い込まれていくのさ (本文より)

モテる女性の要素って、実はこの「楽しそうにしている」と言うのが一番だと思います。

実際、様々な小説やエッセイのために多くの男性を取材した経験がありますが、タイプの女性を聞くと必ずと言っていいほど「人生を楽しんでる子」との答えが返ってきます。

ある程度お酒が飲める女性がモテるのもこれが理由で、男性は「楽しそう」にしている女性が好き。

「自立してる子が好き」との意見も聞きますが、これを深ぼると、必ずしも「金銭的な自立」ではなく、「精神的な自立=自分で自分の人生を楽しんでいる」との意味であることも多い。

実際、アッコちゃんは40歳の子持ちになってもモテモテで、年下のIT社長を虜にするのですが、歳を重ねたことを少しも悲観せず「自分の今までの人生で、楽しくなかったことなど一度もない」と豪語していました。

しかしもちろん、「魔性=女の幸せ」という訳ではありません。

実際アッコちゃんはこの魔性が災いし様々なトラブルに遭遇しているので、安易に魔性を真似るのは危険も伴います(笑)

けれど彼女の根っからのポジティブさ、他人や常識にとらわれない達観の姿勢は、やはりモテる女性の大きな要素と言えるでしょう。

文 山本理沙 / 編集 安本由佳)  

Next  7月18日(土)0:00更新
恋愛の教科書!2014年の大ヒットドラマに学ぶ「出会い方の大切さ」


東京のリアルを反映したフィクション小説を中心に、エッセイ・コラム等を更新しています。楽しんでいただけますように。