無駄づくり

現代では完成品よりも、未完成品がなんらかの目標に向かって変化していく過程にこそ共感と支持を得られるのではないか

この言葉は、中野香織先生が日本経済新聞に半・分解展を寄稿してくださった際の一文です。
全文はコチラから。

この傾向は、今日日あたりまえの価値観となり可視化されています。
クラウドファンディングはその典型ですね。

ここで私が注視するのは「未完成品がなんらかの目標に向かって変化していく過程」という部分です。
未完成品という一見不確かなものに、どのような価値を見出すのかは十人十色。
なので理解が追いつかないこともしばしば。事例を挙げたらキリがありません。

価値を見出すのはいつだって他者。
お金を出した当人が満足ならば、誰も何も文句は言えないでしょう。

私は個展を通して「自分の決める価値なんて、これっぽっちも関係ないんだ」という体験を幾つか目の当たりにしました。

例えば「パターンの販売」です。

パターン販売に至る経緯は、こんなツイートがキッカケでした。

「半・分解展のパターン売ってくれんかな?コスプレイヤーは趣味で衣装をつくってるから完全に独学。軍服とかのパターンは巷にゃ売ってないし、どう製図すればいいか解らん」

ふむ。
こんな声があるのであれば、試しに売ってみるか。
と、かるい気持ちで始めました。

販売方法は「一律15,000円」「データでは販売せず紙のみ」という形で要望に応えてみました。

結果としては、7桁の売上が立ってしまったんです。

これには驚きました。
100年前、200年前の「未完成の・不確かなパターン」※ にこれほど需要があるとは夢にも思いませんでした。

解ったのは、価値を見出す知的好奇心溢れる人が一定数いるという事実です。
それならば、そのもう一歩先を提供したいと私は思いました。

その結果、生まれたのが DEMI DECO LABO です。

この、デミデコラボも正に 未完成品がなんらかの目標に向かって変化していく過程 の真っ最中です。
まだ全然、完成していませんが公開します。これから詳細など詰めていくところです。(満席となりました)

自分の想像する価値なんて、的外れもいいとこです。
実行にこそ価値があると改めて痛感しました。
そうして見えた課題にコツコツと応えていくだけです。

次回の更新も「自分の決める価値なんて、これっぽっちも関係ないんだ」という体験をもうひとつ紹介したいと思います。



※ ここで言う「未完成の・不確かなパターン」とは大きく2つ意味があります。

1つに、一切の補正をしていないパターンである。
2つに、工業用パターンではない状態である。

1を噛み砕いていえば「身体に沿わない誇張したパターン」であるということです。

つまり、極端に胸を張ったように見えるとか、極端になで肩に見える状態です。
基本的に洋服としてはNGです。変なシワの原因になります。
しかし、コスプレ的にはよりリアルな表情を生み出せるのでOKなのかも。?

2は「自分で考える必要がある」ということです。

通常、プロのモデリストやパタンナーは「工業用パターン」という形で納品をします。
パターンが各パーツごとに分断されており、縫い代や芯の指示が書き込まれているので、すぐに縫製に取り掛かることが出来ます。
しかし、私の販売したパターンは、敢えてそのような状態にはしていません。

つまり「身体に沿わず、自分で考える必要があるパターンを15,000円で売る」
それを「編集しやすいデータ販売はせずに、紙で売る」ということも踏まえ、未完成の・不確かなパターンと捉えています。

実際、これらのパターンがお金になることは、ほぼありませんでした。
モデリストとして活動するなかで、あくまで知識のひとつ。それも滅多に使わない知識のひとつとして脳みその奥で埃をかぶっていました。

私は大好きだけど、世間的な価値は皆無だなあ。と。

ところが、表現を変えただけで、価値はひっくり返りました。
表現とは実行することです。
貴方の未完成に価値を。!

タイトルにした「無駄づくり」とは藤原 麻里菜さんの作品のことです。
藤原さんは6月に台湾で個展を開き25000人を動員したそうです。

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ありがとうございます。!
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長谷川:衣服標本家

100年前の感動を100年後に伝えるために生きています。 フランス革命~第二次世界大戦の衣服を分解し標本にする「半・分解展」という活動をしています。 https://sites.google.com/view/demi-deconstruction/
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