親でも上司でもない。知らない大人の胸を借りた夜。
先日、勇気を出して近所のスペイン料理屋さんに入ってみた。
何故勇気が必要だったかというと、マスターと常連さんがいつも楽しそうに話している「閉ざされた」雰囲気があったから。
でもレトロな雰囲気が可愛くて、いつも賑やかで、絶対ご飯も美味しそうで、雨の日も煌々と灯りが灯っていて、すごく気になっていた。
同棲している彼くんが、友人とその店に行ってみて、そんなに初見さんお断りな雰囲気でもなかったよ〜とのこと、今度は私が連れて行ってもらったのだ。
正直、こういう「私たち、アットホームで〜す!」みたいな小さい店に入るのはじめて。
でも、実際店に入ってみると、私と彼の同棲話で盛り上がり、マスターと常連さんは、親戚のおじちゃんおばちゃんのごとく優しく受け入れてくれた。
もう付き合って2年過ぎ、同棲も1年が経とうとしていると言うと「初々しいねえ」とみんな目を細めた。
そして人生の先輩のお話もたくさん聞いて。お腹だけではなく心もいっぱい。
あ、これすごくツウっぽい。一気に大人の仲間入りをした気分。
まず、たくさんのお客さんとのトークで鍛えられたマスターの人間力に圧倒された。
「この子、転職するんすよ」
人生これからという話になったところで彼くんが私の転職に言及すると、「お、いいね〜〜!めちゃめちゃ楽しみだね!」とめちゃんこ褒めてくれるマスター。
「いやいやでも引き継ぎとかがもう死にそうで、、」と私が泣き言を言うと、
「まあ、人に迷惑をかけないってのも大事だけどね、あと数ヶ月の職場なんだから。人がいなくなっても回る。それが会社だし、楽しんだもの勝ちよ」
「あんまりね、人に好かれようとかね、思わない方がいいよ」
と、私の気持ちを肯定してくれつつ何と心の軽くなるアドバイス、、、、!
「気持ちが軽くなりました」とお礼を言うと、「そうでしょー?!」とにかっと笑った。
そうしてひとしきり私たちの話を聞き終わると、奥に座られてた常連さんの老夫婦を向き、
「それでお二方は、何歳のときにご結婚されたんですか?いや、あちらのおふたり(私たち)が、同棲を始めて1年って言うもんですから」
と、華麗なボールパス。
すごいー!誰に頼まれたわけではないのに、マスターがテレビ番組の司会の如く、完全に場を回している!
これが、小さなお店の醍醐味かー!!と私は興奮しっぱなしだった。
老夫婦の旦那さんは、寡黙でお上品な雰囲気。
一方奥さんはファンキーで、思ったことをすぐに言う、あんまり私の親戚にはいないタイプ。
「同棲したからって結婚しなくていいのよー!!」と私たちに言い放ってきて爆笑してしまった。
なんか、ふつう言っちゃいけないことを言っちゃう人って面白いよね。
当のおふたりは、当時周りの反対を押し切って同棲したんだって。そして結婚。名家のおぼっちゃんと自由に生きる少女の恋が垣間見えて、、あ〜ご馳走様です。
帰り際、マスターは私たちに言った。
「なんかね、おふたりすごく雰囲気合ってる。良い関係性だな〜って思って。たぶんね、彼氏すごく優しいでしょ?だから(私を指して)いやすいんだと思うよ」
「すぐ別れそうだな〜と思うカップルには結婚とか、こんな話しないもん」
いや〜〜突然の惚気をすみません。
でも、素直に嬉しかった。
親でも上司でも、学校の先生でもないただの知らない大人にお墨付きをもらうことが、こんなに嬉しいとは。
打算やお世辞や、身内びいきが入ってないまっすぐな言葉。
マスターは、私たちのこと何も知らない。根拠もない。でも、少し話した雰囲気でそう感じてくれるってすごく説得力があり、照れてしまう。
彼も褒められ気を良くしたのか、珍しくその夜は奢ってくれました。笑
全然関係ない大人の胸を借りて、人生の後輩気分を存分に味わう。
とてもよき夜でした。
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