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書評 21世紀の財政政策 オリヴィエ・ブランシャール


前週に日銀は金融政策を転換し、ゼロ金利の解除に踏み切った。今後、経済の行方がどのようになるかは気になるところだが、長期停滞の流れは変わらないというのが個人的な印象である。同書は23年の経済書の書評で総じて高い評価を得ているが、それは低金利・高債務下で正しい経済戦略をとるには、どのようにしていけば良いかを明示している点が大きい。政策担当者に向けに書かれていることもあり、数式が頻出するがこれは致し方ない。章ごとに結論がまとめられていたり、最後の章には要約があるので、難解というわけでもない内容となっている。

著者は2000年代後半の世界金融危機やコロナ下での各国のマクロ経済政策を再検討したうえで、低金利で金融政策が実効下限制約に直面する長期停滞の状況では、マクロ経済安定化のためには、財政政策の活用するべきと主張する。日本に関する部分にも紙幅を割いており、低金利を背景にした近年の金融・財政政策に対して一定の評価を与えつつ、いますぐに財政危機を迎えるような事態にはならないものの、高債務といかに適切に付き合っていくかには注意が必要との指摘を行っている。改めて感じたのは、やはりこれまでの経済学の常識では解決につかない事態が、現代においては進んでおり、それを定期的にわれわれが捕捉しておく必要があるだろうということだった。

#書評 #経済学 #財政政策 #金融政策