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書評 日本という国家 戦前七十七年と戦後七十七年 田原総一朗、御厨貴

この本を知ったのは、池田信夫氏のブログを通じてだが、池田氏はこれまで日本がうまくやって来れたのは、「運」というとらえ方をしていて、これを「実力」と勘違いしたことが、今日の日本の停滞の一因に挙げている。

同書は2022年に出され、ちょうど敗戦から77年、また明治維新から敗戦までが77年だったことから、そのタイミングを機に近代日本を対談形式で、振り返りながら、今後のあり方を含めて、国家としての日本を浮き彫りにしている。オーラルヒストリーとして、政治家など当事者から体験を聞き取りを行ってきた御厨氏と、老害と評されながらもいまなお、探究心を忘れない田原氏が、いささかスケールの大きなテーマについて語っているが、なかなか面白かった。

特に第三章で御厨氏が担当した、「政治指導者たちの光と影」において、伊藤博文と吉田茂、山縣有朋と池田勇人、桂太郎と岸信介、西郷隆盛と田中角栄、原敬と小沢一郎と、戦前と戦後の政治家のとった政策を対比させつつ、実は分断されているようで、戦前と戦後はつながっている部分がある点を指摘していて、自分にとっては新たな着眼点だった。

最四章では、執筆中に起きた安倍元首相の暗殺を機に、その功罪や保守主義の行方について触れているが、二人とも近年は起こっていなかった政治家へのテロが起きたことへの危機感を相当懸念していた点が印象に残った。ウクライナや東アジアの情勢も緊迫になりつつあるなか、また戦前の空気が何らかの形で現代に表れてくるのかもしれないと感じた。

#書評 #政治 #日本史 #近代日本