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書評 創業の時代 金子亨


仕事関係で書庫の整理をすることになり、自由に持って行っても構わないとのことだったで、物色するなかで手にした1冊である。初版は2000年、手にした1冊は2版目だった。著者は未公開企業ながら、当時日経新聞を通じて大々的に株式の公募を行ったインターネット企業MTCIの証券子会社の社長を務めていた人物。2000年は新世紀を迎える前年であり、1999年には、新興・成長市場向けの東証マザーズ市場が創設され、インターネット時代の到来で、情報通信業が市場の注目を集めた時代だった。同書では、未公開企業ながら公募に至った件や、今後、日本においてもベンチャー企業を増やす必要性を強調し、そのノウハウについてまとめられている。しかし、そのMTCIは未公開株募集の際の虚偽記載で立件され、当時の会長が有罪判決を受けた。

事件は2002年に立件されたが、当時会長だった人物は、その後も詐欺騒動で渦中の人物となっているようだ。

振り返れば同書が出版された2000年は、拓銀・山一ショックからの金融危機を超えて、ITバブルに湧いたころだった。当時、勤めていた企業でも、上場を持ちかける話があった。実態はそこまでの業績ではなかったが。ただ、沈滞ムードに流れるのではなく、そこからどう未来に向かっていたらどうかを日本が模索していた時代であったことも、当時の雰囲気としてはあった。そのなかから光通信、ソフトバンク、ライブドア、サイバーエージェントなどが出てきた。ソフトバンクについては、同書でも何度か触れられている。ITバブル前後の盛り上がりを知るには、良い1冊。

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