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QuestReading[15] 微分方程式で数学モデルを作ろう

私が大学生の時に買った一冊。すごい本だと思いながら、本棚に眠り続けること20年。QuestReadingという読書法に出会いようやく一読。
数式として全く自由には扱えませんが、やっぱり方程式ってすごい考え方なんだと思えたQuestReading。

書名:微分方程式で数学モデルを作ろう
著者:デヴィッド・バージェス/モラグ・ボリー
出版社:日本評論社
出版年:1990年

高校でも習わない微分方程式

この本のテーマ<微分方程式>について、高校までの教育課程で習うことはない。正確には97年高卒までは、応用数学や微分・積分の一部として学習指導要領に含まれていたが、それ以後取り扱われていない。

しかし、事例として取り上げられている
・高度に比例して外力が小さくなることを踏まえ、ロケットの初速は時速何kmにするべきか?
・周囲の温度差に比例してモノの温度が下がることを踏まえ、温度を一定に保つために必要なエネルギーはどのくらいか?
・モノの売上が増えれば広告の浸透広告も下がることを踏まえ、広告と売り上げの関係はどうなるか?
などは、文系や理系といった関心を問わず、知的興味を刺激する内容で、吸収力のある高校生までに触れられないことは、とてももったいないように思えた。

<現実の世界>に<数学的世界>の力を借りる

どんな学問も、何らかの<現実の世界>を説明しようとしている。説明対象については、過去・現在・未来のどの時間軸もあるし、今では空想世界の場合もあるが、どんなモノも対象物(世界)がある。その<現実の世界>を「説明するアイデア」を、妥当な「モデルにして予測や決定に使うこと」が大きなアプローチの1つといえる。
※本の内容をもとに図を作成しました

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一番手っ取り早いのは、アイデア(図1)からモデル(図7)へのルートがダイレクトにつながることである。しかし、現実はそう甘くない。何かの力を借りてルートをつながなければならない。
微分方程式は借りられるチカラの1つで、アイデアを一旦数学的世界への導き、モデルまでのルートを作ることができる。急がば回れという言葉があるが、いつまでたってもたどりつけないゴールよりも、ややこしい数学的世界に足を踏み込んでみたいかどうかである。

<数学的世界>との行き来を楽しむ

微分方程式を使い、<現実の世界>と実際に<数学的世界>を行き来するときには3つのプロセスがある。

A.<現実の世界>をモデル化する仮説を考える(図の2~3あたり)
B.仮説を<数学問題>にして、説明・予測決定を行う(図の3~5あたり)
C.できあがったモデルの意味を理解し、妥当性を検証する(図の4~6あたり)

微分方程式は、<数学問題>としてBのプロセスに登場するのだが、<現実の世界>と行き来するには、AやCのプロセスの方も悩ましく、試行錯誤になることが楽しい。

本書にもあった「投資する広告金額」と「売上」の関係の事例を例に、使い方を考えてみる。

広告も売り上げも時間軸(タイミング)がある関数として、どう広告を投資すればよいかを考える。
まず、私が広告の神様で勘と経験で「このくらい投資すれば売上目標が達成する」とズバリあてることができれば<数学的世界>は必要としない。残念ながら私は広告の神様ではないが、広告に関わる人で神様のような意見はよく聞こえてくる。
そこで私は<数学的世界>の力を借りることにした。
まずは、シンプルに「広告投資すれば、売上は金額に比例して増える」と考える。そうすると、投資すれば段々と売り上げは青天井に増えていく。
ただ、私がこの結果をもとに「だからどんどん広告をしましょう」と報告したらきっと叱られるだろう。実際に売上が青天井に増えることはないし、常に広告を打てるほど予算がないことがほとんどだ。
そこで、
 ・ 広告が知れ渡る(浸透する)と売上効果も増える(比例関係)
 ・ 一方、売上が最大値(例えば、シェア100%)に近づくと広告効果は減る
というアイデアを追加して、モデルを考える。
そうすると、
 売上の変化=「広告の浸透率」と「最大値への達成度」を含んだ関数
という<数学問題>になり、微分方程式では線形一次微分方程式としてモデル化にできる(そうである)。
ここで大事なことは<現実の世界>を見ながら、モデル化へのアイデアを追加できる感性だと思う。

そして、この数学問題を解くと、広告投資をしている間は、最初に売上がぐっと上がり、段々と上がり幅が小さくなる増加する対数関数のグラフが描かれる。そして、広告をやめると一旦ぐっと下がり、そこから段々と下がり幅が小さくなる減少の対数関数のグラフが描かれる。
※グラフのイメージを作成しました

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実際に、広告を取り扱っている人の話を聞くと、最初は効果があったが段々マンネリ化してきたという話を聞く、そして、広告をやめると売上が激減しそうでやめることができないとも聞く。グラフの黄色や緑の線を思い描くが、実際にはそうはいかない。そして、このモデルの方が、<現実の世界>を表してくれているようだ。
目指すのは<現実の世界>をどれだけ表わしているかであり検証も大事なステップだと思う。現実と100%マッチさせることができれば、<数学的世界>を迂回してきたが、広告の神様にだったなれるのである。

残念ながら、私はこの数学問題を扱うことはできない。できれば朝飯前に扱いたいが、それには97年以前の高校生のように応用数学を学ばなければならない。ただ、問題を解くことはできる人に任せて、モデル化の為のアイデア出しや現実の世界との検証など<数学的世界>との行き来をサポートして楽んでいきたい。

免責:
本を精読しているわけではありませんので、すべての内容が正確とは限りません。詳細は、実際の本でご確認ください。

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