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QuestReading[13] Amazonとは何者かを考える4冊通読

<Amazonとは何者か>を考えたく4冊の本を通読しました。それぞれの本から受けた刺激から個人的な妄想満載で、私の中のAmazon像を作るためのQuestReading。

(1)
書名:小売再生ーリアル店舗はメディアになる
著者:ダグスティーブンス
出版社:プレジデント社
出版年:2018年

(2)
書名:リアル店舗の逆襲〜対アマゾンのAI戦略~
著者:一般社団法人リテールAI研究会
出版社:日経BP社
出版年:2018年

(3)
書名:アマゾンエフェクト!ー「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうのか
著者:鈴木康弘
出版社:プレジデント社
出版年:2018年

(4)
書名:amazon世界最先端最高の戦略
著者:成毛眞
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2018年

Amazonショック

それぞれの著者の主張や考えを簡単にまとめておく。

ダグスティーブンスの著書ではamazonの参入によって弱った小売店を応援していきたいと考え、リアル小売業の良さを<新しい技術や取り組みを時流にのって採用>すること強化していきたいと考えている。
リテールAI研究会の著書はamazonの先を行くんだと意気込んで内容で、<AIによる変革で小売の未来を明るくできる>という内容を共著の形で様々な人が寄稿している。
鈴木さんの著書は、自身が経験したamazonとの競合体験を踏まえて、amazonの<デジタルシフトで企業価値を高める>発想に共感した内容。
著者は、セブンイレブンの創始者鈴木敏文さんのご子息。
成毛さんの著書は、amazonのビジネスモデルを丁寧に解説していて、<amazonのキーサービスの未来>を見せてくれる。

どの立場でもamazonという存在が、考え方に影響していることがわかる。amazonショックと聞くと、リアル店舗の営業不振の話に思ってしまうが、amazonの考え方を鏡として、それぞれの戦略が変わっていく面で、amazonショックが起きているのだと思う。

モノを買う行為は変わらない

ダグスティーブンス氏の著書に、<消費者が店に足を運び、商品を見て周り、最後代金を支払う>という行為は、場所がリアルでもネットでも本質は変わらないと書かれている。

この指摘は、買い手にとっても、売り手にとっても正しいことだと思う。技術が進歩することで、人工知能(AI)がヒトの代わりに購入することになっても、それはヒトの代わりになったに過ぎず、モノを買う行為はかわらないと考える。

ただ、ダグスティーブン氏と鈴木さんの著書に共通して、リアルとネットでの<品揃え>の違いが指摘されている。<品数>についてはネットに優位性があり、自主開発を含めた新しいモノを取り入れるなどや陳列の<ストーリー性>はリアルに優位性があるとされる。

消費者は<品数>で買うのか、<ストーリー>で買うのか。

買う手伝いか、売る手伝いか

リテールAI研究会の著書に<計画動線>という言葉が出てくる。予定購買、補充型購買という考え方もあるが、この<計画>するのも消費者だろうか、それとも小売店だろうか。

私は、スーパーに行くと、まず生鮮売り場をぐるりと回ってから、加工食品や日用品を買うルートを選んでいる。もし、洗剤のストックが切れていれば、先に洗剤売場に行くこともある。
コンビニに行って場合は、雑誌売場の横を通りながら、飲み物のリーチインをみて、おにぎり、サンドイッチの棚を見て、さて何を買おうかを考えている。

消費者はどう買おうか、自分の行動は自分で<計画している>と考えるが、リテールAI研究会やダグスティーブンスは、購入者の行動は小売店側にコントロール可能だと主張する。

つまり、私のスーパーやコンビニでの動き方はお見通しだという。
確かに、生鮮売り場をぐるりと回りながら棚からせりだした特売品を思わず手にとることはあり、コンビニのレジ横の和菓子をついで買いすることがある。

両著者の本はもう少し先進的で、ダグスティーブンスは<小売業者は、様々な仮説を試すことでもっと商品を売る工夫ができる>とリテールAI研究会は<技術によって、計画的な動線を描いた購買空間を実現できる>とそれぞれ主張している。
どちらも新しい技術は積極的に取り入れて行くべきだと考えている。

御用聞き

鈴木さんとリテールAI研究会の著書には、「御用聞き」という同じキーワードが出てくる。しかも、<究極の御用聞き><日本一の御用聞き>となかなかな修飾語がついて書かれている。

リテールAI研究会の考える<究極の御用聞き>は、ヒトの行動に潜むクセや本質を突き、消費者を先回りして、オートメーションの流れで買ってもらうことを考えている。
これを消費者主導と主張するが、これは計画動線と同じ売り手目線なのだと思う。

一方、鈴木さんは1人の顧客にあわせて<すべてのインフラを駆使し提供すること>で顧客のよりよい体験を生み出すことが<日本一の御用聞き>につながると考えている。

この1人のために<すべてのインフラを駆使する>という考え方は、Amazonのらしさの溢れた部分ではないだろうか。鈴木さんの著書には、セブンイレブンもネット展開するときに、同じ考えに従って考えていたということだ。

消費者の御用を聞くには、先回りをするというよりは、フルサービスを受けられる方が信頼感はあがるし、何でも託したいと思うのではないか。

Amazonはロジスティクス企業

Amazonのビジネスモデルを解説してくれる成毛さんの著書の一節に、創始者ジェフ・ベソスが自社は<ロジスティクス>企業と語っていると書かれている。Amazonは究極のリテールではなく、モノを動かす究極の<ロジスティクス>を目指した企業だと言える。

そして、Amazonの1番の特徴は<ロジスティクス>という本業のための、様々な新しい試みがそれぞれ一流の事業になっていくところにあるという。

Amazon Web Service(AWS)は、世界一のクラウドサービスといってよい。極端な従量制やインターフェイスのわかりやすさなどは、クラウドサービスとして極めたいと思ったよりも、あらゆるものの<ロジスティクス>に応じるための仕掛けになった結果だったはずだ。

他にも、Amazon以外が仕入れた商品を取り扱うマーケットプレイスやFulfill by Amazon(FBA)のサービス、顧客を消費者としたプライム会員のサービスなど、いずれも本業のための自立したサービスとして次々と組み立てられている。

何よりも品揃えを重視する[卸]と考えてみる

私の実家は、酒類の卸を生業としていた。実家にはそこそこ大きな倉庫があり、様々な小売店からの注文に対応できるよう所狭しと商品が並んでいた。倉庫は子どものころは恰好の遊びだった。
それから流通網が発達し、小売店舗が大型化する中で、中間流通の必要性は段々と下がり、約40年で実家は事業をたたむことになった。

ネットが強みを持つ<品揃えの量>、ペゾスが志した<ロジスティクス>を考えると、Amazonは小売ではなく[卸]なのではないか。
リアルな世界でも、卸売業は<品揃えの量>が差別化のポイントになっていた。

Amazonは<品揃え>だけでなく、様々な周辺サービスを開発し、そのケーパビリティを高め、<あやゆるのインフラを駆使する>ことで顧客評価を高めてきている。

もし、10年前にこの考えに出会っていたら、私でも、実家のために必要な新しいインフラを整備し、事業のあり方を変えてあげられたかもしれない。

Amazonショックの本質と今後を思う

私の実家が直面したように、一般に省略されるのは、中間プロセスであることが多い。

[メーカー]→[卸]→[小売]とあれば、[卸]が省略される。
ただ、Amazonショックは、中間でなく末端の[小売]を省略しようとしたことが、本質にあるのではないかと思う。
そして実は、リテールという同業ではなく、<ロジスティクス>という異業種からのチャレンジだった点でも、業界変動を大きくしたのだと思う。
[卸]と[小売]の闘いは過去から継続していくし、これからは、Amazonを含んで続いていくのだと思う。

Amazonの新しい試みとして、Amazonの無人店舗(Amazon GO)が話題になったが、私はAmazonの出自を考えると強みの活きない拡大なのではないかと思う。
まず、Amazonは卸ではなく、小売であるという点。限られた広さでは、品揃えの量をいかすことができない。さらに、小売りの世界で、ダグスティーブンスが書くようにストーリーをもったリアル店舗も増えており、Amazon GOの優位性の確立は難しいのではないか。

私が小売業であれば、小売業のための無人店舗を作っていくだろう。そして、Amazonのように<あらゆるリソースを駆使しよう>と考えるだろう。そうすれば、小売を生業にしている我々の考えはamazonを上回るに違いない。

Amazon GOの行く末をみると、私のAmazon像が正しいものか検証できるのではないか。

免責:
本を精読しているわけではありませんので、すべての内容が正確とは限りません。詳細は、実際の本でご確認ください。

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