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2019年8月の記憶

8月が終わった。

ここ2年ほど8月になると、友人Mちゃんと京都と奈良を旅行することにしているのだが、今年は都合が合わず延期となったままとなっている。
出不精でチキンな性格のせいで、京都も奈良ほとんど行ったことがなかった。
古典好き、仏像好き、日本史好き、好きな雑誌が「和楽」という私が、大人になってから行動力が服を着て歩いているようなMちゃんに連れられて行く京都・奈良は私のとってディズニーランドくらいの価値がある。

だから、Mちゃんとの予定のない令和元年8月は、ないものも同然だった。
だがしかし、予想を裏切って今年の8月はめちゃくちゃ楽しかったのだ。

8月後半を一言で表すなら、「出会い」と言える。
たくさんの出会いにあふれた8月だった。

8月某日
岐阜県から来てくれた、ライティング講座の同窓生にお会いした。
地元の魚料理の定食屋で、たくさんお話しした。
彼女の文章から溢れる、彼女の芯の強さやたくましさ、優しさを知っていた。目の前にいる彼女は、そのとおりの人だった。そして何より明るい。いろいろ苦労もされているようだが、それを笑いに変えて吹き飛ばす勇気に、ウジウジ癖のある私の横っ面を張り飛ばしてもらった。泣いてる場合かよ、自分!

8月某日
ついに、「劇場版おっさんずラブ〜LOVE & DEAD〜」が公開された。
ドラマ版にハマってから、はや1年弱。ずっと好きだった。映画を見てますますおっさんずラブの世界と春田を演じる田中圭さんが好きになる。声を大にして「おっさんずラブが好きだーーー!」「田中圭が好きだーー!」と叫んでいい世界(Twitterね)がある。そんなことに気づいた。
普段は自分の「好き」を語るのを抑え気味にしている。
リアルの中では、私の好きなものは大抵マイノリティらしい。「どうして好きなの?」という問いに、的確に答えられるほど言語化できておらず、「まあ、なんとなく好き」みたいな返答しかできないのがもどかしくて、だから「めっちゃ好き!」といえなくてモヤモヤしていた。
それが、ネットの世界では私の好きを代弁してくれる人がいた。私よりずっと「好き」が溢れている人がいた。なんて心強いんだ。
一方的ではあるけれど、これも一つの「出会い」ではなかろうか。

8月某日
所用で上京することになり、Twitterで小さく告知したら、思わずたくさんの方から「会いたいよ!」という嬉しいお返事をいただいた。
所用を終え、宿泊するホテルのロビーで待ち合わせ。
ロビーの奥のソファに座って、一心に読書する女性を発見。
note友であり、田中圭ファン友のまこさん!
その時読まれていた本は、田中圭さんが出演していたドラマ「ダブルファンタジー」の原作の続編「ミルク・アンド・ハニー」 さすがだ!(読みたい)

まこさんと、赤坂から西麻布のカフェ、六本木EXシアターまで、お散歩しながらおしゃべり。多分、地元でいるときの100倍くらい歩いたんだけど、全然疲れなくて、楽しかった。「好き」なものを話すと脳が喜ぶって言う話を友人から聞いたことがあったけど、本当だわ。
六本木EXシアターで「おっさんずラブ展」を鑑賞。
当初一人で来るつもりでチケットを取ったんだけど、まさかまさか、まこさんと一緒に見られるなんて、誰かと感想を語り合いながら鑑賞できるなんて、夢のよう。
キャラクターの衣装に興奮し(皆さん、めっちゃスリムでスタイルがいいの!)春田の家のリビングの再現に感動する。そして、すでにお互い2回も見た映画の話で盛り上がった。
「春田とちずが、わんだほうで飲んでるところに牧が来て、春田は牧に自分の横に座ってほしくて、ちょっと横にずれて隙間を作ったのに、牧がそこに座らないの。春田がその空間をみて『牧、座らないのかよ』っていうがっかり顔見ました?」
という、まこさんの観察眼すごくない!? 愛あればこその観察眼。
(すみません、見てませんでした。あの後3回目を観に行って、確認しましたよ!)

おっさんずラブ展は盛況で、上野動物園に初めてやってきたパンダを見るような行列。いつもなら行列が嫌いでイライラするのに、今日は周りの人にいつもの100倍優しい視線を送っている自分がいた。

時計は、午後7時過ぎたところ。そしてここは六本木。
ビチカートファイブの「東京は夜の7時」だよ、おっかさん!

よし、ギロッポンの書店へ行こうと、六本木駅を目指して歩く。
このことがあとで、ある人の大迷惑になるとも知らず。
六本木のブックファーストで、「劇場版おっさんずラブ シナリオブック」(最後の1冊だった!)を買って、ルンルンで店を出た。

「EXシアターに迎えに行くよ」
東京のど真ん中ギロッポンで迷子にならないよう、迎えに行くと優しい言葉をかけてくれていたのは、下瀬ミチル(るんみち)ちゃん。

まこさんとお会いした後は、またTwitterの呼びかけに答えてくれた皆さんと夕食の予定だったのだ。

るんみちちゃんが迎えに来てくれたのに、勝手に本屋に行っててごめんなさい。おかげで、るんみちちゃんが、私を探して本屋とEXシアターを行ったり来たりする羽目になってしまった。こうならないように迎えに来てくれたというのに、申し訳ありませんでした。
帰ってこの話を家族にしたところ「あんた、そこにいろっていって、いたことないよな。東京でもやらかしたんか!」と家族全員から大目玉をくらいました。反省してます(しゅん)

るんみちちゃんは優しかった。
さんざん私を探し回ってくれたのに、笑顔で迎えてくれて、ちょっと走っただけでつりそうになった私の役立たずな足を心配してくれて、「足大丈夫? ここ歩ける? エスカレーターに乗ろうね」と、歩きやすいところを探して、目的地の中華料理店まで連れて行ってくれた。惚れる。

集まってくださったのは、少年Bさん、ねおみのるさん、サカエ コウ。さん、アラキナツさん、ヨリさん、そして、下瀬ミチルちゃん。
みなさん言わずと知れた、note界の有名人である。恐縮!
本当楽しくて、会話がめっちゃ面白かった。文章を書ける人って絶対トークも上手くて面白い法則、あると思う。
ちょっと猥雑な雰囲気の中華料理屋さんは、料理が激安で美味しかった。ビールが進みました(ヨリさん、チョイス&予約ありがとう)
みなさん、ちょっと胡散臭い関西弁のおばちゃんを仲間に混ぜてくれてありがとうございました。

数年前、「願い事を書くと叶う」という自己啓発(スピリチュアル?)本に影響されて、願い事を書いてみたことがあった。
もう書いた紙を捨ててしまったので願い事全部は忘れてしまったけど、確か「◯◯(私の苗字)会ができて、楽しく飲み会する」というのがあった。
芸能界でよくある、誰かを囲んで飲み会とか誕生会とかするやつ。◯◯会の◯◯に入る人は、人望があって、人に何かをしてあげることに喜びを感じている優しい人で、その人の人徳にたくさんの人が集まっているイメージの会。そういうすばらしい人になりたいし、囲まれてみたいと思っていた。

相変わらず、人望もないし、人に何かをしてあげたくても大抵空回りしてるし、優しくもないんだけど、囲まれたいという願いが叶った。

サカエ コウ。さんが、この飲み会を「ルミさんを囲む会」と名付けてくださったからだ。
本当にありがたいし、うれしかった。

「今日のnote更新できそうですか?」
「あと、ちょっとです」
そう言いながら、このnoteをぽちぽちとスマホで書いているコウさんの姿を、横で見られたことも、眼福でした。
そして、囲む会MVPは、私の職業を見事当てられた驚異の推理力の持ち主、少年Bさんに送ります。

みなさん、濃密で素敵な六本木の夜をありがとう。

8月某日
地元に帰り、買い物にイオンモールへ行った。
行かなきゃいいのに、イオンシネマの階に行ってしまった。
「『劇場版おっさんずラブ〜LOVE & DEAD〜』 11:50」の表示。
現在時刻は、11:20。そして、今日は娘も学校、夫も外出中。私は暇。
見れるじゃないか……見ちゃおうかな……どうしようかな……

「3回目、見ちゃっていいかな?」
決められず、夫にLINEする。
「見たかったらご自由にどうぞ」
「ええ、いいの? いいの?!」
「ボクには関係ないし」
というそっけない返信を、過大解釈。「いいって言ったんだよね」
というわけで、めちゃくちゃ普段着のまま、ランチ代わりににポップコーンとカフェラテを買って映画館へ突撃。

「何度も映画館に足を運んでください!」
映画の宣伝のときや舞台挨拶で出演者の方がよく口にする言葉。
「高いし、長いし、何度も見に来られないよ」なんて、斜に構えて心でぼやいていた。DVDが出る頃には、動画配信サービスで何回でも見れるよねなんて思ってた。で、実際のところ、2回目を見ることなんてなかった。ストーリーを知っているのになんで何回も見るんだろうって思ってた。
私が間違ってた。見るたび新たな発見がある。ストーリーを知ったら、次は俳優の演技を、俳優の演技を見たら、次はセットや照明を、パンフレットやネットのインタビューや誰かのレビュー、シナリオブックを読んでまた見ると、自分がまだちゃんと見てなかったシーンがあったことに気づくのだ。
映画もドラマも、とにかく作り込みがすごい。
セット一つ衣装一つとっても、映画の世界観に合うように計算されて作られている。スタイリストさん、小道具さん、美術さん、照明さんなどなど、その世界のプロたちが真剣に作ったものを、1回だけで味わい切ることは到底できないのだと知った。
4回目あるかもしれない。

気がつけば、8月が終わっていた。
なんだか、怒涛のように8月後半を走りきった気がした。何かに背中を押され続けていたというか、社交ダンスで男性に手を取られ、くるくると回って回って回っていたら、フロアの端から端まで移動してしていたような不思議な感覚。
あら、ちょっと目も回っているかもしれない。今もまだ、ちょっとふわふわしている。だから、忘れないうちにこうして記憶を記録しておく。

9月もはや3日目がくる。
日に日に夏の色が薄まって、秋の匂いがしてきた。

次は10月、note酒場だ。

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