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バスチーを作る「お母さんごっこ」

今年最後の夏休みを取った。
相変わらず、ステイホームが鉄則。さて、何をしよう。

日ごろ、私はフルタイム(残業アリ)で働いていて、娘が学校から帰っても「おかえり」と言えたことは、数えるくらしかない。
私が子供のころは、学校から帰ったら母がいて「おかえり、おやつあるよ」と言ってくれた。それを楽しみに家に帰った。

娘から、母親に「おかえり」と言ってもらえないことについて、「さみしい」と言われたことは一度もないけれど、たまには、そういう「お母さんごっこ」をしてみてもいいかと思い、娘の下校時間に合わせて、おやつを作ることにした。

作ったのは、YouTubeで見かけて、ずっと作りたいと思っていた「バスク風チーズケーキ」。
COOKPADのこちらのレシピを参考にした。

このレシピのすごいところは、材料を全部ボウルに放り込んで、ハンドブレンダーで混ぜるだけというところ。
つくれぽは3000件を超え、クックパッドニュースにも取り上げられた人気レシピだそうだ。

ケーキって、バターをすり混ぜたり、卵を泡立てたりと、結構手間と時間のかかる作業があるのが定石。
ほんとに混ぜるだけで、こんなすごいチーズケーキができるんだろうか……? だって、各社コンビニが競って売り出したり、カフェのメニューだったりするチーズケーキよ? そんな簡単でいいん?! 

ついさっき、学校に行く娘に「今日は、バスク風チーズケーキを作って待ってるよ」って宣言しちゃったよ。失敗したらまずいのよ。母の沽券にかかわる。

半信半疑ではあるものの、とりあえず作ってみよう。

材料は、クリームチーズ、生クリーム、卵、砂糖、小麦粉
え、これだけ? 

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材料を全部、ボウルに放り込んでみた。ほんと、大丈夫?

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ハンドブレンダーでブンブンかき混ぜる。
卵が少し泡立って、かさが増してきた。

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ハンドブレンダーを回すこと数分。
思ったより、なめらかな生地ができた。

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一度くしゃくしゃにしたクッキングシートを広げて、型に置く。
そこに生地を流し込んで、210度のオーブンで35分。

焼けた。

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わお!! YouTubeの動画でみたバスク風チーズケーキと同じ見た目だ!
ゆすると、絹ごし豆腐のようにふるふると揺れる。崩れないように、天板をそっと料理台に置く。
表面は、焦げて、いい色。
粗熱がとれたら、冷蔵庫で冷やす。

午後4時。娘が、炎天下に自転車に乗って、真っ赤な顔をして帰ってきた。
「おかえり、おやつできてるよ」
「はーい」
娘が着替えている間に、ケーキを冷蔵庫から出す。そっと包丁を入れる。ふるふるだったケーキが、冷えてしっかり固まって、弾力がある。6等分してお皿に並べた。

クリーム色のつるんとした断面がきれい。焦がした表面とのコントラストがいい。中身がギュッと詰まっているのが分かる。
側面は、くしゃくしゃにしたクッキングシートのしわの形に凸凹していて、素朴な雰囲気を醸し出している。

さて、お味は……

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「うま!!」
一口食べた娘から、「うま!!」が出た。
「チーズがしっとりしてて濃いね」
重ねて食レポも頂いた。

どれどれ。
フォークをぐっと刺して、一口大にカット。

濃厚なチーズの風味と、なめらかな食感。表面の焦げたところはカラメルになってほろ苦く、チーズケーキの甘みとよく合う。
甘すぎず、チーズの酸味がきつくなく、ちょうどいい。
これは美味しい。それもこんな簡単。

小食な娘があっという間に完食した。

「ばあばんち、行ってくるね」
「え、ママ、お休みなのに?」
「えー、塾のない火曜日は、ばあばんちに行くって決まってるんだもん。ママが休みでも関係ないよ」
そう言って、ケーキを平らげた娘は、ばあばの家へ遊びに行ってしまった。

なんとまあ。
母親がいないくてさみしいんじゃないかと心配しているのは、親だけか。
両親がフルタイムで働いている子には、その子なりの生活スタイルができているらしい。
そもそも娘は、帰ると母がいて「おかえり、おやつあるよ」なんて暮らしをしたことがないのだから、さみしいもなにもないのか。

100人いれば100通りの生活スタイルがある。
こんな「お母さんごっこ」も、所詮、「私の想像するお母さん」ごっこということか。

多分、娘には、「COOKPADでレシピ検索して、仕事休みに、気まぐれにバスク風チーズケーキを作る母親像」が残るのだろう。
そして、いつかそういう「お母さんごっこ」をするのかもしれない。



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