見出し画像

『メッセンジャー』(『円』より)

『メッセンジャー』(『円』より)

劉慈欣(りゅう じきん)著

毎晩、趣味のヴァイオリンを演奏する老人。その演奏を聴きにくる若者が、現れる。

その若者は、200年以上先の未来から来たという。

世界的な物理学者の老人は、原子爆弾や量子力学の未来を憂いていた。

若者が伝えたいメッセージは、
老人が、憂う必要はなく、平和は続くということ。それと、同時に、物理学の根本原理は、変わっていくということ。

なかなか、難しいのだけどね。
キーワードは、「統一場理論」、「不確定性の原理」、「神はサイコロをふらない」

「統一場理論」
物理学の重要な力(引力、電磁力、強い力、弱い力)を一つの法則で説明しようという考え方。アインシュタインは一生の大部分を重力と電磁力を統一しようとしたのだけど、成功できなかった。

「不確定性原理」
簡単に言うと、不確定性原理は、小さな粒子(電子とか)の「位置」と「速さ」は、同時には見えない、ということ。例えば、目を閉じて、手を振っている人を思い浮かべてみると、その人の手が早く振っているかはわかるけど、手がどこにあるかはわかりようがないということ。手を止めれば、(速さがなくなれば)、手がどこにあるかは分かるというもの。でも、アインシュタインは、この考え方は気に入らなかった。

『神はサイコロを振らない』
これは、アインシュタインの言葉で、アインシュタインの量子力学というか、物理学に対する考え方でもあった。サイコロはランダムなもので、通常、どの数字が出るかは予測できないものなのだけど、アインシュタインは、物理的な世界は完全に予測可能であるはずなのだから、偶然やランダムな要素に左右されたりしないと考えた。


未来から来た若者は、『神はサイコロを振りますよ』と言って、物語は終わる。


努力では、どうにもならないことがある。宇宙の歴史は、138億年前のビッグバンから始まっていると言われているのだけれど、、何故、ビッグバンが起こったのか?ビッグバンの起こる前は何だったのか?また、膨張を続けていると言われている宇宙はどうなっていくのか?

わからないことだらけであることに改めて気づかされる。

ただ、私としては、アインシュタインとは、別の意味で、人間には、理解できないけれど、「神はサイコロをふらない」と信じてはいるのだけどね。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?