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トンビから逃げてトンネルを抜けたら○○○○が居た。

・前回のあらすじ
散歩中にトンビが上空でクルクル回って監視していた。それを見て食われまいと逃げ惑い、昔を思い出す。

という事でトンビとの昔を思い出しながら帰路に着く。トンビに目をつけられた事もあって少し早歩きに進む。ここは木々に囲まれた森の中で人の往来はほぼ無い。だからこんな所で動物とバトルにでもなったら絶望しかない。あっけなく動物達の栄養素になるしか未来は見えない。どれだけ文明が栄えても人は自然の脅威には勝てないのだ、という事を教えてくれているような気がした。
ハタハタ、パタパタとサンダルの音を鳴らしながら森を抜けて行く。やっぱり自然の中を歩くのは静かで心地好くて良い。空気が澄んでて、太陽の光がサンサンとして心に住み着いた淀んだ何かを洗い流してくれている気がする。オマケに好きな音楽なんかも流してると益々バイブスぶち上がりって感じで人目が無いのを良い事に舞踊りたくなってしまう。そうしたら「コイツやべぇや」ってなった野生の動物達もと重巻きに見守ってくれて、ある意味動物避けになるやもしれん。
そんなこんなで小道を抜けて行くとトンネルがある。森と街の境目である。ここを抜ければもう大丈夫。とりあえず何かしらの危険のリスクは無い。
と、安堵しながら歩くスピードを落としてのんびりモードに切り替える。青い空、白い雲、のどかな風景を見渡しながらふと左に視線を向けた時、それは突然現れた。

「わーーーーー!!!!!」

思わず、変な声が出る。自分の目と鼻の先にそれは居た。犬よりも猫よりも大きくて、黒くて子牛のような生き物。ツンと立った耳と角。最初は自分に背を向けて草を食べていたがこちらの存在に気が付くと渋い表情を浮かべ、じっと自分を見つめていた。普段出会う事の無い出会いに衝撃を受けながらも直感でソイツの名前が思い浮かんだ。

カモシカ。コレが奴の名前である。

名前くらいは聞いた事あったし、たまに出ると噂もあったが今まで遭遇した事は無かった。それがラブストーリーは突然位、唐突に出会ってしまったのだ。
そりゃあ気分はもう、もののけ姫。アシタカがシシガミに遭遇した状況と酷似している。お互い1歩も引かず睨み合いながら対峙する。確か、カモシカは小心者だから襲ったりはしなかったよなと僅かな情報を頼りにジリジリとカモシカから離れていく。カモシカはジーッとこちらの様子を伺うのみで何か襲ってくる様子は無かった。こんな間近でカモシカを見れる事は無いと思い、そっとカメラを取り出すとヤツにレンズを向ける。パシャリ。シャッター音が小さくなってヤツの姿を鮮明に捉える。そのまま数枚だけ撮影をしてかりまた刺激を与えないようにそっとその場を後にした。

カモシカだーー!という中々無い出会いに高揚した気分でフンスッ、フンスッ!と鼻息荒くしながら歩く。推しに街中で会ったらこんな気分になるのかなと擬似ファンミーティングを体験し、なんて素敵な散歩だったのだろう。1日でこんなに動物達との深い出会いがある体験は中々無い。

そんな不思議な日を思い返しながらカメラロールの凛々しい顔のカモシカに目を輝かせどこか愛おしい気持ちになる、そんな1日だった。

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