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神戸のセレブなサンドイッチ

トアロード・デリカテッセン。
ハルキストの皆様は当然ご存知だろう。
神戸にある老舗。ハムやソーセージを販売し喫茶店も併設している。

小説「ダンス・ダンス・ダンス」。
主人公がお昼の準備をしようとしている時、かかってきた電話の相手に、これから作るサンドイッチの話をする。
そこに出てくるのが「神戸のデリカテッセン」。
微妙に名前が違うけれど、トアロード・デリカテッセンのことで間違いないよう。

店名通りトアロードにあるそうで、異人館へ行く途中に探してみることにした。
で、すぐに見つかった。青い看板に白抜きで、
「TOR ROAD DELICATESSEN」
レトロだけれど洗練されたお惣菜屋さんといった感じ。
お店の看板を撮影していると、中から女性スタッフが出てきて、笑顔を見せる。
「いらっしゃいませ」
「あ、すみません。後でまた来ます」
これから異人館を巡るので、なるべく荷物は持ちたくない。
「そうですか。お待ちしています」
彼女はにっこりと微笑んで店内へ戻っていった。

異人館を散策した後、私は再び店に寄る。店頭のワゴンからサンドイッチを選びドアを開けた。

「朝、立ち寄って下さった方ですね」
「はい。一度、食べてみたくて」
かなり美味しいと評判だし、話の種にと思って「ダンス~」に出てくるスモークサーモンと、ローストビーフのサンドイッチを選んだ。

お会計聞いてぶっ飛んだ。

お値段4桁のサンドイッチ、私、初めてです。

袋もテープもご立派

一旦、ホテルに戻ったけれど、部屋で食べるのも味気ない。
せっかくの高級サンドイッチ。どこか特別な場所で食べたい。
そうだ、メリケンパークへ行こう。
窓からビルを眺めながら食べるより、海風に吹かれながら頬張る方が、ずっと美味しいに決まっている。

朝から歩き続けて疲れていたけれど、海を見ると元気になる。
ベンチに座り、サンドイッチのパックを開ける。風が強い。でも陽射しは暖かい。

海を見ながら食べます。

“ぱりっとした調教済みのレタスとスモーク・サーモンと剃刀の刃のように薄く切って氷水でさらした玉葱とホースラディッシュ・マスタードを使ってサンドイッチを作る。“

村上春樹 『ダンス・ダンス・ダンス』

残念ながらスモークサーモンのサンドイッチには、レタスも玉葱も入っていない。スモークサーモンだけ。これはこれでシンプルで良い。
ローストビーフの方にはレタス有り。

とにかくパンが美味しい。中身いらないくらい美味しい。
でも、1350円払ってもう一度食べたいかと言われると難しい。庶民が気軽に買えるお値段ではない。
村上春樹さんみたいにお金持ちじゃないと。

パンが主役のサンドイッチは、ハイ・ソサエティな味がした。

ちなみに私はハルキストではない。
ノルウェイ以前はファンだったけれど。

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