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思うこと314

 先日大阪の一心寺シアター倶楽にて、清流劇場の舞台『野がも』を観た。
先に原作を読んでおくと実際の舞台を見た時に、演出意図や構成が探りやすくなり、ひいては自分で書く際の勉強にもなる、ととある演出家の方にアドバイスをもらったため、すでに話が頭に入っている状態で観に行った。そんな風に鑑賞へ赴くのは初経験である。(そもそも私はほんの数年前まではまるで演劇に興味のない人間であった。)
 そういうわけで、思ったよりも年齢層高めな会場に足を踏み入れると、早速ステージの装飾に関心。原作の場所設定は、冒頭はそれなりの豪邸のお屋敷、そしてもう一つは屋根裏のややみすぼらしい感じのこじんまりした部屋、という感じ。当たり前のことかもしれないが、それを忠実に再現しているというよりも、ずっと抽象化した作りだった。一番印象深いのは、舞台の上の方に青くて薄い布の幕が部屋の天井を示すようにふわりと吊られていた所。劇中、海底と屋根裏部屋を結びつけるような台詞がぽろっと出てくるので、そこにリンクしているのかなぁなどと思う。ところで夫婦で観劇に来ていたおじさんがステージを見るなり、「あそこで鴨撃つんか?」とコメントしていて面白かった。口ぶりからするとすでに物語も知っているようで、席に付いてからも奥さんとパンフレットを眺めてあれこれ話していた。劇場という場所ならではのなんだかほっこりする光景である。
 で、実際の劇は予想していたより「喜劇」感が強く、原作を読んだ時にドンヨリした雰囲気とはかなり違った印象を受けた。元々「悲喜劇」とも言われているようなので、なるほどドンヨリもするけどちょっと滑稽で笑えるってのはこういうことか〜と実感。大阪で上演しているから喜劇感が増してるのかしらん、とも少し思ったり。
 イプセンの『野鴨』は何が正解か、何が正しいか、みたいな所がかなりボンヤリした話で、その分想像の余地がある作品だ。そのせいかテキストを読んだ時に想像していたものが、実際の舞台を見ると違った解釈になることが度々あった。当然どちらも間違いじゃないので、一粒で二度美味しい、みたいな不思議な楽しみ方ができたように思う。そんなわけでこれからも可能な限り、原作既読で観劇に行こうと思った。
(ところで清流劇場、来年2020年3月には『織工たち Die Weber』の上演をするそうですよ!)

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