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小平奈緒選手と大野将平選手の対談、皆川賢太郎さんが語るスポーツの1番良い所

2022年2月13日放送、NHK総合『北京オリンピック◇アルペン 男子大回転・2回目(中継)ほか』での一場面。

【対談前】

小平奈緒選手「どんな思いで柔道と向き合ってきたのか、心の持って行き方みたいなのはすごい興味があったので、それは絶対私の北京の舞台に挑む材料になるなと。」

【対談は事前に聞きたい事を用意してもらう形式で行われた。】

小平奈緒選手「私の質問なんですけど、2連覇は意識してましたか?」

大野将平選手「存分に意識してました。背負うとかではないですけど、2連覇・自国開催・東京でっていう所は自分に言い聞かせてやっていましたね。」
「全日本の監督であった井上康生監督、コーチでいらした鈴木桂治コーチも、偉大な先輩2人も2連覇を目指して負けてしまったと。じゃあ、誰かの真似をして勝てるようなものじゃないなという。その延長線上でやっぱりこう、自分に自問自答する時間が非常に増えましたね。」

大野将平選手「(連覇を)意識されていますか?」

小平奈緒選手「そうですね、私にしかないチャンスというか、挑戦できる機会は、今私しか持ってないなという風に思っていて、2連覇したいとかもう1度金メダルを獲りたいというよりは、その挑戦を思う存分楽しんでやろうみたいな、そんな気持ちではいます。」

大野将平選手「2連覇して伝説になってください。」

小平奈緒選手「はい、頑張ります。ありがとうございます。」

【小平奈緒選手は大野選手が連覇を果たした直後のインタビューでの「自分は何者なのか」というコメントについて尋ねる。】

小平奈緒選手「そのコメントを聞いた時に、私もしばらく何者ってなんなんだろうっていう事を考えて、大野選手はオリンピックを終えて、自分は何者だったのかっていうのを、何か答えみたいなのって見つかりましたか?」

大野将平選手「どうしてもこう、周りが作り出している大野将平像っていうのがある中で、どうしてもそれを追っかけてしまうと言いますか、完璧を求めていってしまいがちなんですけど、無理に周りの理想に応えなくて良いなというのが自分の1つの答えであって、自分がなりたい自分っていうのがそういう"大野将平"、それを発見っていうか経験しながら発見できる1つの場がオリンピックだったというような。」

小平奈緒選手「勝敗が決まった時に、喜びをすごく自分自身の内側にグッと向けたのがすごく印象的で、他の誰かとか何者かになろうとしてたのではなくて、『自分自身そのもの』が、その"何者か"っていうものの答えだなって、すごく感じていて。」

大野将平選手「その通りですね。周りから求められている"大野将平"よりも、自分自身がなりたい自分というのがやっぱり上だったというか期待を超えるものだったならば、より一層人間として魅力的なのかなとは考えてはいます。」

小平奈緒選手「私も本当に平昌オリンピックで金メダルを獲った後に、すごいこう、周りからの"小平奈緒"という理想像にすごく縛られた時期があって、自分らしくない自分と向き合わなきゃいけなかった。」

【平昌オリンピックの金メダリストとして期待される中で勝てない日々が続いた小平奈緒選手。立ち直ったきっかけは長野県での台風被害の復旧ボランティアに参加した事だった。】

小平奈緒選手「小平奈緒という1人の市民が街の人と関わっていく中で、特別な何者かではなくて、リンクに立っていたとしても表現するものというのは自分の生き様なんだなっていう風に感じて。」
「負けるっていう姿というのは、すごく惨めな事に思われるかもしれないんですけど、それさえも『自己表現の舞台にしよう』と思ってからはすごく楽になって、特別な何者かではなくて、戦っている姿をありのまま表現するっていうのは、自分の生き様なんだな。」

大野将平選手「今のはすごいですね。僕はまだその境地まで行けていないなと感じましたね。負ける怖さっていうのをどうしてもまだ持っているので、その境地はすごいなと思いますね。」

小平奈緒選手「北京オリンピックを迎えるにあたって、私自身のなりたい自分というのをしっかり自分の中に持ちながら挑戦を楽しみたいなという風に思ってます。」

【対談を終えて―】

小平奈緒選手「自分自身と向き合っているという所はすごい共感しているなと思いました。勝負に向う眼差しの鋭さというか、そういう所は私に足りない所だなっていう風に思ったので、そういった勢いみたいなのを頂いて、腹を括ってスタートラインに立てたら良いなっていう風に思いました。」

【以下スタジオ】

中川安奈さん「金メダリストとしての重圧、本当に想像する事しか感じられないのですが、皆川さんはどのように感じられましたか?」

皆川賢太郎さん「そうですね、スポーツの1番良い所というのは、基本的には哲学を学べる事なんですね。それは必ず引退というものだったり、賞味期限が終わる時が必ず来てしまうんですね。だから小平さんがおっしゃってましたけど、負ける怖さというよりは誰かのためにやるというのもすごい大事なんですけど、結果、自分の人生の道標をずっと、小平奈緒はたぶん金メダルというもので追っていくのと、同時にそれをやめるという時が必ず来るんですけど、たぶんその表現をずっとしていく事を我々は逆に言うと応援させてもらうという所と、同時に相手も選手は『誰かのためにやっている』って極めておこがましいと僕は思っていて、というのは自分のやりたい事を徹底的にやる事で皆さんに何かを届けられるという事が1番の仕事なので、同時に限られた時間の中でやるので哲学が生まれるんですよ。だからそれを逆に言うとメダリストとしてそれをお持ちなので、僕なんかよりも圧倒的に素晴らしい人間だと思いますけど、その哲学を2人共十分に学んでらっしゃって、これからも楽しみですし、まさに500m彼女がどんなパフォーマンスをしていただいて、次の未来を作るのかも楽しみです。」

皆川賢太郎 みながわけんたろう
1977年生まれ、新潟県出身、元アルペンスキー選手。2006年のトリノオリンピックのアルペンスキー回転で4位入賞。2010年のバンクーバーオリンピックに出場。2014年にアルペンスキー競技を引退。引退後は日本オリンピック委員会 選手強化事業専門部会 選手強化中長期戦略プロジェクトメンバー、日本フェンシング協会理事などを歴任。【公式サイト】

小平選手と大野選手との対談の内容もさることながら、皆川賢太郎さんのコメントが印象的だった。

対談の全容は特集記事で公開されている。

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