30w3d 眠いのに眠れぬ妊婦


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妊婦になるまでもつらかったけど、妊婦になってからよりつらさが増した。それが不眠である。
睡眠導入剤とは付き合いが長かったけれど、妊娠後期になってすっぱりやめた。幸いなことに(?)切迫早産で休職していたから、眠れないことによる支障は仕事をしていた頃に比べると、ぐんと減ったけれど。

妊婦、まじで眠れない……。

こんなに眠れないなんて知らなかったし(妊婦であることのつらさ、基本的に知らなかったから、妊娠してから戸惑ったり落ち込むことばかりだ)
何度も明るくなる窓を見つめてため息をついた。どうしようもないこととはいえ、2、3時間しか眠れない日が続くとまいってしまう。メンタルのために、朝に寝て夜に起きる昼夜逆転生活はしたくないから、頑張って一日起きていようとするのだけれど、夜になっても頭が冴え渡ってしまって、やっぱり眠れないのだ。

深夜になっても収まらない胎動(むしろ何故かつよくどんどこされる)、重くなって寝返りをうつのすら躊躇してしまうお腹(えいやっと持ち上げてごろんとするとお腹がはるので怖い)。
薬を飲めない妊婦に対応策はないから、病院で相談しても「日中休めるときに休みましょう」「目をつぶって横になってるだけでも体は休まりますよ」と言われてしまうだけである。マイナートラブルの一種、仕方ないこと、あきらめてやり過ごすしかない。だけど、やり過ごすしかないと分かっていても、あきらめろと言われる出来事が積み重なると、やっぱりしんどい。

眠れないこと。眠れないまま目をつぶると、頭が妙に覚醒して、不安や焦燥が一気にかけめぐること。寝返りをうつたび、今何時だろうと思って、スマホの時間を見て絶望すること。お腹がすいて、むなしくて、朝ごはんに何を食べようと考えること。光がカーテン越しに透けて、ああまた変わらない一日が始まると覚悟すること。しんとした湿度の、無音がひびきわたってるような、私ひとりしかこの世界にいない、そんな孤独なこわい朝。

眠れない夜も、眠れなかった夜を超えて迎える朝も、好きじゃない。好きじゃないというか、おそろしい。そんな朝からはじまるどんよりした昼も。お腹の子が産まれたら、もっともっと眠れないのかもしれない。そのことが、耐えられるのか不安になるけど。目先の今日の夜、私は眠れるだろうか。

寝ても寝ても眠かった子どもの頃みたいに、永遠にうっすらしたまどろみの中にいられたらいいのに。心配することなんか何にもなくて、お母さんにかけられる早く起きなさいなんて言葉はなから聞こえてなくて、布団のなかのあったかさにいつまでも触れていられたらいいのに。どうしてあんなに眠れたんだろう。あんなに不安なんか感じないまま生きていられたんだろう。ずっと昔のこと。何かに守られて生きていられた頃のこと。

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