今昔バス物語(8)【最終回】

都会ではノンステップバスがすっかり普及しているが、のんびりした田舎では、高速バス同様に、前方から3段ステップを上がって乗車するタイプのバスが、まだ残っている。

また、ノンステップバスは遮光機能がある窓ガラスのためブラインドが付いていないが、田舎のバスはブラインドもしくはカーテンが窓に設置されている。都会のバスも、昔はそうだった。

私が子どもの頃は、ブラインドを上からおろしたときに、ブラインドの端についている突起を、窓側の切れ込み(?)にはめ込むことに、けっこうワクワクしたものである。

はめ込むのに失敗したら、一気にブラインドが上にガシャンと上がってしまい、もう一度立って手を伸ばしておろしたものだ。

田舎のバスは、電光掲示板の料金表が0から30くらいまである。

始発バス停が0(整理券なし)で、乗車時に取る整理券の番号と料金表の番号を確認しながら、運賃箱に投入する現金を準備する。ちょうどいい金額がそろわなかったら、降車時もしくは信号待ちのときに運賃箱で両替をする。

料金表の番号が30くらいまであるとおり、田舎のバスは、長距離を1〜2時間かけて走る。

私が高校生のときにときどき乗っていたのは、広島県の呉(くれ)市営バスだった。

呉駅から音戸(おんど)大橋を経由して倉橋島(くらはしじま)の東のほうまで走るバスは、行きも帰りも、海沿いの景色に心を癒やされる。

そのバスが、今はICカード対応になっているのかは知らないが、都会では味わえない非日常感が楽しめる地方のバスのひとつではある。

過疎化が進む地域では、昔あったバス路線も廃止され、乗合タクシーに代わっている。その乗合タクシーが、お年寄りに優しいほぼノンステップになっているのだ。

高齢者の運転免許返納が進むと、その流れで、バスやタクシーの需要は高まる。しかし、それを運行するための人手が足りないのも、田舎ならではの事情だ。

いずれにせよ、将来的には、無人運転バスが普及していくだろう。

自治体やバス会社がその対応を迫られる日は、そう遠くないだろう。もしかしたら、今まさに検討を始めなければならない事案かもしれないのだ。【完】


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