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「THE BATMAN〜ザ・バットマン〜」炙り出される現代のダークなリアルをうまくエンタメに嵌め込んだ傑作

初日のSNSの評価に傑作という文字が多く出ていた。なら、早く見ようと劇場に。何故、今バットマンなのか?広報で「ジョーカー」の映画を引用した宣伝がされていたが、確かに、ふたつの映画を並べてみれば、リアルな今の先進国共通の問題点みたいなものがよく見えてくる感じはする。2022年の今だからできるヒーローもの?

最後に主犯が「復讐」と言って散っていくが、この映画を見ていると、個人的に自分の過去にあった怨恨や許せない人々の顔が浮かび上がったりしてきた。そう、映像に込められた臭いは、過去の忘れられないネガティブな経験を噴き出させる。厄介である。こういう部分は、「ジョーカー」に確かに類似している。

タイトルに書いたが、確かに3時間という時間を費やして、バットマンの正義という名の苦悩がうまくまとめられている傑作だと思う。今までのバットマン映画の中でも、私的には最も好きかもしれない。そう、歪んだ心で、現在に苦悩する人には、シンクロしやすい映画だ。正義というものの考え方は、私がテレビでバットマンを観ていた時とは180度違うものになっているのかもしれない。ここにあるように、政治家や他の利権者は正義面して、自分の金儲けにしか興味がない時代なのだ。だから、バットマンでは悪の代表のようなペンギンが可愛く見えてしまう(可愛くは描いてないけどね)。ああ、バットマンとペンギンのカーチェイスはなかなか興奮できました。

そう、アクションシーンは、みんな見応えがある。そういう意味で、3時間の長さはそれほど感じなかった。ただ、冒頭の方はいささか眠くなるところもあった。キャットウーマンが出てくる辺りからは一気に話に乗れた感じであった。

ここに出てくるゴッサムシティは、適当にネットが引かれ、謎々の回答をネットでするというのは、新しい時代のバットマンなのだろう。その加減の良さはなかなか。だいたい、手紙→謎解き→パスワードをPCに入力という流れは、ネットを使う必要性があるのかないのか?レトロな感じで良いのだ。

そして、この映画はキャットウーマンとのうまいコラボレーションが作品をブロウアップしている感じ。二人の2度のキスシーンはなかなか美しかった。この二人にもそれぞれの「復讐」という呪縛があるわけで、正義の意味も違ったりする。男女の意識さみたいなものも見せながら、ラストのミッションは二人だからできたという感じが良かった。ラストシーン、二人でバイクで走り去っていく感じは、とても格好いいラスト。「シン仮面ライダー」もこんなのができたらいいなと思うが、そうはいかないでしょうな。ショッカーを明確な悪とする以上はね。

しかし、いつもながらに「バットマン」の映画はダークである。そして、今回は主演のブルース・ウェインは、ほぼほぼマスクを被ったままだ。そのせいで、無精髭が気になって仕方なかった。キャットウーマンのセリーナ・カイルはマスク被らない時の方が印象的でしたね。この二人だから、この映画はうまく行ったということもあるのだと思う。

選挙の出来レースは崩れ、ここでも新しい市長には若い黒人の女性がなったりする。アメリカ映画は、この辺りかなり気にしながら作っている感じだ。

そして、ネズミの男が最後に「数が少なくなればなるほど価値が出るものは」という謎々を出すが、アメリカでも、そういう認識なのかと思ったりした。そう、「俺は多くの友達がいる」というような人は、気をつけたほうがいいことは、長く生きてると良くわかるものである。

現代の社会構造の中にある多くの矛盾をこういうエンタメの中に封じ込めて表現発信していくことは、本当にとても大切なことだ。日本も、テレビ局が映画を作るのはいいが、そういう意見をしっかり入れたものを作って欲しいよね(まあ、牙を抜かれた、テレビ局や広告代理店には無理な話なのはわかってますけどね…。そう、仮面ライダーの敵が国会議事堂の中にいないのが日本なのですよ)

とにかく、観終わって、満腹になって、いろんなことが頭の中に想起してきた鑑賞後の私でした。


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