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「下剋上球児(第10話)」 次を目指してる限り人は終わらないという美学がテーマということですかね

最後に映し出された甲子園の空撮の画が綺麗で感動してしまった。しかし、ラスト5分弱のこの聖地に立ったところだけを撮るために甲子園でロケしたとは贅沢すぎる。だが、このシーンが最後にあって、甲子園で11対0で敗れたという、最高に嬉しく悔しい試合があったということが大事なのだろう。それなりにうまくまとまった高校野球ドラマであった。

今回は、甲子園に行くことになると3000万円かかるとして、それをどう捻出するかという話からの始まり。この辺り、どのような計算で、どんな費用を積み上げていくとそうなるのかはもう少し詳しく聞きたかった。というか、この話だけで一つドラマが出来上がりますよね。だが、本当に優勝してみて、広くカンパを募ると一気にその金額が集まってしまうというオチ。それも日本の高校野球という文化のなせる技なのだろう。これがサッカーだとしても難しいところだとは思う。そう、甲子園で高校生が試合をするということがいかに大きな勲章なのかがわかるし、それに日本人が熱狂してきたということもわかる。私も最近はそんなに高校野球を真剣にはみていないが、やはり母校が出るということになれば何かしたいと考えるだろう。そして、そういう場所から大谷翔平が世界一のプレイヤーになったということを考えても本当にすごいことなのだ。

まあ、そんなことは、このドラマに熱狂したものは皆がわかっていることだろう。そして、決勝戦である。その決勝戦と小日向文世の目の手術の日が同じだったというのも皮肉だが、そこまでいくと思っていなかったのも事実だろう。手術が終わって、彼の孫が活躍するシーンを拝めてめでたしめでたしというところ。

で、その決勝戦になんとか黒木華はベンチに入ることができる。彼女と鈴木亮平とのコンビネーションの良さが伺える試合になっていたのは、作り手の制作、脚本、監督の女3人の気持ちが黒木に乗り移っている体とも感じた。そう、女だって野球を格好良く語れる時代なことがよくわかる。そして、前回の準決勝から感じたのは、球児たちのプレー姿の美しいところだけをピックアップするように画が作られていることである。もちろん、それ自体は選手たちの練習の成果なのだろうが、試合の描き出し方自体がすごく美しいのだ。これは、男の監督ではできない技なのかもしれない。そう、汗を描こうとはしていないのではないか?彼らのメンタルがどう変化していくのか?をうまく描き出そうとしていたのもよかった。

前回怪我をしてベンチには入るなと言われた久我原がやってきて、彼をトリックプレーに使ったり、先発投手である根室の気持ち、そして最後のマウンドでの犬塚の気迫。それらが、ここ一番で変化する感じが実に瑞々しくまとまっていた。そして、初回からあった、ここぞのアニメ演出もうまくハマっていたし、まあ、女性監督が野球を撮れないなどという人は、このドラマを見た先にはいないだろう。もう、スタッフ、カッケーよ!

そう、選手たちが輝く分、ゲストで彩りを加えた、対戦校の監督の元木大介は見せ場がなかったですね。目立たなくてもいいのだけど、クセ者らしさは見たかったかな・・。

戦い終わって、ここで校歌を歌うシーンがあって、甲子園でこれを歌うことはないのだなとは思ったが、その後に数年後のOB会に飛ぶという演出、下剋上を経験させた者たちの成長を先に見せたかったということか?それも良し。その後に先に書いた甲子園の空撮が来るから熱くなるということはあった。

前半の鈴木の偽教員事件の話がいるか、いらないかは、後々まで論争になりそうであるが、そう考えられるほどに高校野球ドラマとしては熱く声援できる形にできていたことは確かで。色々と新しい形に見えた部分も多かった。

今年はWBC優勝に始まり、プロ野球は大阪決戦で盛り上がり、その後に見せられたこのドラマも素敵であったし、野球が熱い一年であった。コロナ禍も解消され、また国力をつける上で、野球という競技が日本に力を与えているのは確かであり、海の向こうでは大谷翔平の大型移籍話もあり、来年も野球は日本に勢いをつけてくれることであろう。年の終わりにそんな気持ちにさせてくれた、スタッフ、キャストに感謝です!ありがとうございました!


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