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「あの頃、文芸坐で」【65】1982年初頭、私は何を考えてスクリーンに対峙していたのか?澤井信一郎、森田芳光、神代辰巳etc.

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1982年が明けて、8日にこの間書いた「幸福」と「典子は今」を見てから、1月に3回、文芸地下に通っている。16日に「野菊の墓」「ねらわれた学園」24日に「赤ちょうちん」「の・ようなもの」27日に「少女娼婦けものみち」「嗚呼!おんなたち 猥歌」と…。しかし、それらの「ぶんげいしねういーくりい」が欠落している。上の5週目のものは、多分「少女娼婦〜」を見た時にもらったものだと思う。とにかくも、今回は、これらをまとめて書いていく。

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まずはプログラムから。コラムは「文芸坐の喫茶店」と「ル・ピリエ」の話。まあ、コロナもなく、まだまだ名画座が自由だった時代。多角化を考えていた頃の話です。この後、バブルが来るわけですからね…。ここに書き綴るのはそういう時代の話です。

プログラムは、文芸坐が「ナイトホークス」「ザ・クラッカー」の二本立てにつづき、「凱旋門」「嵐が丘」という戦前のクラシック。そして、アメリカン・ニューシネマの特集と続きます。アメリカンニューシネマといっても、もはや50年前の話であります。これを若い人が見て、どこが新しかったの?と思う人も多いでしょうな。でも、この辺りの映画に私たちは未来のとば口を見ていたのは確かなのです。そして、そんな理想の未来は来なかったということです。

文芸地下は、今村昌平と熊井啓の二本立ての後に、東映セントラルフィルムフェア。東映の低予算映画製作会社として存在した東映セントラルフィルム。松田優作「遊戯シリーズ」以外には、あまりパッとしたものはありませんでしたが、、観るほうとしては結構楽しんで観ていたと思います。このテイストが、その後のVシネに繋がっていったのだと思います。そして、その後にロマンポルノの二本立て。まあ、当時の日本映画っていうのはこんな混沌としていました的な流れですね。

オールナイトの日本映画監督大事典は、「な」の行で、西川克己監督、野田幸男監督、長崎俊一監督と続いています。こちらも、ファン層がそれぞれ違うプログラムで、かなりのカオス!

ル・ピリエも「アラビアのロレンス」「ライアンの娘」と映画が続き、その後に「下條アトムin CONCERT」なるものをやっています。下條さん、最近あまりお見かけしませんが、お元気なのでしょうか?

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そして、観た映画について

「野菊の墓」

澤井信一郎監督デビュー作。スクリーンで2度目。で、これ以降はビデオでしか観ていないと思う。とにかく、何度みても、映画の教科書のような作品である。シンプルな話を、実に映画としてドラマチックに見せていくということがどういうことか教えてくれる。松田聖子は、映画デビュー作品で澤井監督に出会えたことは幸せだったのだが、プロダクションの都合もあったのだろう、その後、東宝に乗り換えてしまったため、澤井監督とのコンビはこの作品のみ。あと、2、3本澤井作品が残っていたら、松田聖子は役者としても結構名を残していたような気がする。まあ、「たられば」でしかないが…。

「ねらわれた学園」

この映画は、大林宣彦監督の世界観が目一杯入った作品であり、何度見ても、私には馴染まない作品であった。だが、この頃の薬師丸ひろ子は最高に可愛く、今のアイドルにはない存在感がある。昭和のポップさみたいなものを全面に出していないところが新鮮だった。

「赤ちょうちん」

この映画、機会がなくてずっと観れていなくて、この時がスクリーンでの初見。藤田敏八監督の秋吉久美子三部作の中で、最も秋吉久美子が愛おしく見える作品だと思う。だが、ラスト、狂ってしまうのが悲しすぎる四畳半映画である。まあ、現代も、この当時に近い危うさのある時代のような気もするので、意外に今の若者たちも納得する映画なのかもしれない。そう、藤田敏八監督作品が見直される時期にある気がするのだ。

「の・ようなもの」

そう、この日の二本立ては「秋吉久美子特集」だったのですよね。藤田敏八監督の映画以外の秋吉久美子としたら、やはりこの映画だろう。そして、森田芳光監督のデビューは本当に新鮮だったのを覚えている。この映画もこの日、二度目だったが、やはり面白かった。そう、今見ても、新しい発見があったりする一本だ。森田監督が映画が好きで好きで撮ったと言える一本。こういう演出をできる人も今はいないですものね…。

「少女娼婦・けものみち」

神代辰巳作品の中で、観ていないで観たかった作品をこの日観たということであった。主演の吉村彩子は、GOROの激写で印象的だった少女。これ一本の映画出演だったわけだが、内田裕也が出ていることで、作品的にはずっと残る一本ではあるのだろう。映画的には神代監督のねちっこさは感じたが、ほぼ内容は覚えていない一本だ

「嗚呼!おんなたち 猥歌」

それに比べたら、この作品はパワーがある。観た回数も多いからだが、インパクトがあるシーンが多い作品だと思う。ロマンポルノとしては内田の代表作だろう。こんな映画、今は作る人も観るひともいないですものね。でも、好きです!

ということで1982年の初頭は、色々とこんな映画を観ていましたという感じです。どの映画も、今でもそれなりに話ができるということは、それなりに一生懸命何かを掴もうと観ていたんでしょうな…。

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