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名作映画を見直す「素晴らしき哉、人生!」テンポの良さが、ラストの感動に結びついているクリスマス映画

昔から、クリスマス映画というと、この映画の名前が出てくることは知っていた。しかし、なかなか見る機会もなく過ごしてきたような映画ファンであり、今年のクリスマスの日に初めてビデオで見ることになる。なんとなく、観てみようと思った。確かに2時間10分、地味な男の奇跡の物語ということで、なかなか観終わった後の達成感がある作品である。アカデミー賞はノミネートだけで受賞を逃した作品というが、時代を越えて人にインパクトを与える作品なのはよくわかった。

主演のジェームズ・スチュワートを助ける天使が翼をもらっていない2級天使というのが、この映画の面白いところの一つなのだが、これは、石ノ森章太郎の雑誌デビュー作「二級天使」の元ネタのなのでしょうね。調べると、この映画、日本公開は1954 年2月、石森作品は同年の12月だから間違いない。そして、その後のファンタジー映画のお手本になっていることも確かだろう。とはいえ、この映画を見て思うことは、バックグラウンドの人間としてのドラマがしっかりできているからこそ、これが成立しているわけで、そこをちゃんと描いた上に、最後の人生のピンチで天使が降りてきて奇跡を与えるという感じにしてあることが重要なのだろう。

そして、1920年代から1940年代にかけての、恐慌から戦争、戦後の激動の時代に翻弄された男ということで、アメリカ公開の1946年に共感を呼んだことはよくわかるし、日本公開の1954年にも、復興の中でこの映画に元気をもらった人も多かったのではないかと思われる。2022年のクリスマスに観ている私でさえ、元気をもらったのだから。そう、戦後77年経っても、人の生活の浮き沈みは変わっていないということだ。そして、人間社会が今のシステムを続けるかわり変わらないのだろう。

そして主人公の周辺の配役のキャラがなかなか印象的なのも、映画のテンションを高めている。街を仕切ってるような金持ち、美しく献身的な妻、優秀な弟、幼馴染にちょっとキツイ娘など、みな、少年少女の時代から、苦難の歴史を過ぎて、主人公の奇跡の日を最後に祝う形になるのが、素敵であり、これぞ、クリスマス映画の形ということなのだろう。

天空の天使の会話は、空を映し出すだけの簡易なものになっている。今だったら、アニメやCGで存分にファンタジックに作るのだろうが、それをしないのがシンプルで良い。まあ、天使のおじさん(天使に性別はないはずだが)がちょっと見窄らしいのがどうにかならないかとは思ったが、それなりに天使の役目を果たして、ツリーの鐘が鳴る最後のシンプルさも良い。これを見ると、変に、ファンタジーに画面を作ることが必要ではないということもわかる。そして、結果的にはリアルな世界が一番ファンタジーの奇跡の空間であるような演出なのが、この映画いいところなのだと思う。

とにかくも、毎年のように、クリスマス映画を語るときに出てくるタイトルだ。それだけのものではあった。そして、値上げとか軍備増強とか言って、不穏な今年の日本社会であるが、地道に真面目に他人のことを思って生きていけば、必ず奇跡は起こるというメッセージは今見るのにぴったりではある。時代を考えて震えるよりは、隣人を愛し、楽しく生きることが大切だということだ。

結果的に、私もこの映画のファンになった。来年のクリスマスにまた会いたい映画でした。

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