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ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【14】内田裕也がスクリーンに似合っていた頃「嗚呼おんなたち! 猥歌」「悪女軍団」

1981年10月23日、池袋北口にっかつにおいて、封切りでこの映画「嗚呼おんなたち! 猥歌」を観ている。そのくらい、この映画が観たかったということなのだろう。当時の私の評価は普通で神代辰巳の映画としても、内田裕也の映画としても、それほど心に震えを覚えるほどではなかったというのは今でも記憶がある。だが、その後、何回か観てから考えると、この映画、内田裕也の映画としては最も内田裕也らしい映画だと思ったりする。

「嗚呼おんなたち! 猥歌」(神代辰巳監督)

内田裕也主演だが、ロマンポルノで男が主役はおかしいわけで、ここでの主役は角ゆり子。1973年「二十歳の原点」でデビュー。もう一本、「しあわせ」という主演映画があり、森谷司郎監督の「日本沈没」にも、古老によりそう女という、印象的な役をもらっている。それから、数年経った、この年、突如、ここでロマンポルノに主演する。役はトルコ嬢(当時はまだトルコ風呂と言っていた)まあ、これ一本なのだが、ロマンポルノ史に残る一本に出ていることで、女優として名を残している感じ。そして、共演の看護婦役の中村れい子は、当時の色っぽい姿は、男を勃たせるために存在するようにさえ感じられた。彼女のタラコ唇は石原さとみのそれより上だと思っている。そんな二人が、常識的な芝居はしない内田と絡む姿は、今でも忘れられないから、やはりすごい映画だったんだと思う。

特に印象に残っているのは、角がライターで陰毛の処理をしているシーン。今では、剃ってしまう人も多いので、毛切れするからということで、こんなことはしないだろう。当時、このシーンで毛が焼ける臭いがするような気がして印象に残る。

そして、中村よう子は看護婦姿で、病院で手話で「頑張ってください」とやるシーンが妙に記憶に残る。どちらにしても、二人とも、ロマンポルノのスターではなかったが、その歴史の中で、重要な女優だ。

でも、この映画は、内田裕也がロックンローラーの役だという点が重要だ。だから、ドキュメント的にも見える。まあ、観た人がみんな覚えているのは、キャバレーでウケなくて、突然、「与作」を歌い出すシーンだろう。このシーンがこの映画の時代性を示しているし、内田裕也がどういう時代にロックしていたということを表現している映像だったりする。

いつものことながら、計算せずに撮られたようなものが、また計算されずに編集されている様な雑な感じが神代映画である。だから、映画作品としては特に名作面することはないが、なんか、観終わった後で、じわじわ来る感じは、神代辰巳の最後の傑作なのかもしれない…。

ラストに流れる曲は、萩原健一と沢田研二が歌う、「ローリング・オン・ザ・ロード」である。これがすこぶる、切ない感じに繋がってくる。

考えれば、私を映画地獄に引き込んだのは神代監督の「青春の蹉跌」であり、神代映画にはショーケンの声がよく似合う。神代監督にジュリーの映画も撮って欲しかったね、と思う今日である。

「悪女軍団」(小沼勝監督)

脚本、鈴木則文で、主演はこのとき久々のスクリーン復帰の八並映子ロマンポルノ初出演。そして、当時のエース、風祭ゆきと泉じゅんの共演と言われ、神代作品よりも、こちらを期待していたこともあり、この日、封切館で観たのだと思う。話は、暴力団の復讐劇を女たちでやるというもの。はっきりと話を覚えていないくらい、あまり面白くはなかった。3人のアクションは、テレビサイズのものだったと思うし、まあ、エロスを感じさせるには、八並映子はもう賞味期限切れだったということか?

昨年は、裕也さんもショーケンも鬼籍に入り、彼らのような世界観はこの世からは無くなったと言っていいだろう。今頃、天国でロックンロールしているのを妄想しながら、久しぶりに「猥歌」を観てみたくなった。

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