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「私小説~発達障がいのボクが純愛小説家になれた理由~」生き方を共有できることの奇跡

「ふたりだったら、泣いたり笑ったりできるんだよ」。この言葉がこのドラマのキーであろう。そう、当たり前のことだが、そう言える相手に出会えるのは奇跡に近い。それが私たちが住むこの世界だ。そして、幸せの度合いはそこで決まってるようにも感じる。

原作は『いま、会いにゆきます』が有名な市川拓司の小説。彼が発達障害を持つ小説家ということを私は知らなかった。だが、「いま、会い〜」の話も優しさに満ちているし、このドラマの原作も同じように、それを感じる。昨今は、私はそういうものに弱いし、多分、世の中それさえあれば、常にニコニコしながら生きていけるとも言える。自分に内在するものを許容してくれるパートナーがいるっていうのは人生という世界をを何百倍にも広げるという話である。

そして、脚本は「いま、会い〜」の映画と同じ、岡田惠和。彼もまた、それぞれのドラマで人の優しさに関していつも考えながらドラマを紡いでいる人だと思う。最近は、私としたら安心してみていられる脚本家である。

主役は瀬戸康史と上野樹里。少し、地味目だが、岡田脚本にはぴったりの配役だろう。二人の笑顔がドラマにとても有効に使われているというか、映えていた。大きなドラマがそこにあるわけではないが、二人の存在が見事にドラマを優しさを満たした感じが心地よかった。

ドラマは2話構成。前編は、彼らの説明はあまりなく、瀬戸が人混みにいくと、調子が悪くなるということだけで話が進む。そして、彼が小説家であり、ファンも多いという情報もわかりやすく提示され、その小説の中身は、妻である上野のことであるということもわかる。つまり、二人の間には「愛」がある生活があるわけだが、瀬戸は、自分の病気のことで上野が楽しみを我慢しているのではないか?と思い、悩んでいたりもする。

そんな流れの中で、フランスのファンの方から来た、訪問の依頼を受け、それができるように旅の練習をするが、結局無理なことがわかる話。フランスには、彼が好きだった「モン・サン=ミシェル」という島がある。私もよく知らなかったが、なかなか印象的な島である。その島のようなイラストが彼ら二人を繋いだことは後編に語られるわけだが、この島のように、彼ら二人の恋は異質であるが、心の拠り所や気を使う感じは、普通の夫婦以上にがっしりしたものだということは、この前半を見てよくわかる。

そして、後編では、そんな二人がどうやって出会って、なぜに結ばれたかが語られる。その中で、他の同級生や友人がほとんど出てこないのは、かなり異質な恋愛ドラマに見える。瀬戸の病気というか、性格がそうさせるのだろうが、その中でこのドラマ2時間持たせているのはなかなかのものだ。

お互いに気を遣いながらも、理解して、お互いに楽しくなるように暮らそうとする、いや、暮らしている姿は、普通の日常のあることの限りない感謝を感じるし、見終わった後で、自分も生活の中で楽しんでいかなきゃね、と思わせるドラマであった。

愛らしい、笑顔の二人を視聴者に見せることで、暮らしの中の素敵なエッセンスになる一編ではあった。

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