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チェス本 2冊 / Fiction & Nonfiction

 チェス関連で読んだ本はフィクションとノンフィクションの 2冊があります。
 1冊は The Queen's Gambit です。最近のチェスの話題と言えば、大抵これですよね! それに私は過去に洋書に関する記事を書いたので当然です! (^^)
 もう 1冊は、現実の世界チャンピオン戦を紹介している 白夜のチェス戦争 です。こちらは翻訳本です。


The Queen's Gambit 

 主人公 Elizabeth Harmon に、天才にありがちな性格破綻者を予想していたら極めて普通の少女に感じました。良かったです。おかげで安心して読み進むことができました。途中、孤児院で友達との危なっかしいシーンもあり、「そっちの世界に行くのか?」とドキドキしましたが、ベスは拒否しました。私は Netflix のムービーを観ていないので詳しくは知りませんが、その友達はムービーでも登場しているらしいのです。そのシーンあるのでしょうか?

 ベスにチェスを嫌々ながら教え始めた仏頂面の爺さん。物語の中で彼がどのくらい活躍するのかと楽しみにしていたら、それも予想が外れてベスが孤児院を出てからは全く登場しませんでした。ベスとのやり取りも楽しそうなシーンはひとつもありません。しかし、この物語の最高の泣きどころはやはり彼が絡んでいます。ベスはあのコレクションを見て何を思ったのか? その時の彼女の心情はどのようなものだったのか、あまり書かれていません。書かれていないからこそ、読者の想像が膨らみます。ここが私が一番好きなシーンです。

 あの爺さんのことだから誰にも語らず、しかし、ベスを誇りに思っていたんだろうな、と想像します。そして彼女もそれを感じ取り、ラストのシーンに繋がるんだと思いました。


白夜のチェス戦争

 これは現実のチェス世界チャンピオンのお話。すでに絶版本らしく、新品を購入することはできないようです。Amazonの中古ではリンクの通りの値段ですが、中古をメルカリで探したら、腰が抜ける高値でした。8,000、9,000円当たり前。1万円を超す勢いでした。

 それほど読むべき価値のある本なのかと思い、図書館で検索したらあったので借りて読みました。実際に手に取って見たら薄い本でした。
 (この記事を書くためにもう一度メルカリを見たら1ヶ月しか経っていないのに一件も表示されません。あれは何だったのか? 怪しい...)

 さて、感想です。

 “米ソの冷戦対決” で真っ先に連想するのはアポロ対ソユーズに代表される宇宙開発競争。科学技術の飛躍的な向上を伴っているので国家の威信を賭けたイメージがあります。しかし宇宙ではなく、地上でも “国家の威信” を賭けたと言えるほどの戦いがあったのだ、と知りました。「白夜のチェス戦争」とはよく言ったものです。その熱い戦いの描写を期待したのですが内容は少々情けなかった。チェスのプレイのことではありません。1972年夏に行われた世界選手権の運営に関してです。USA挑戦者ボビー・フィッシャーに原因があったんです。

 第二次世界大戦後のチェス界はソ連の独擅場でした。それどころか、チェスの世界チャンピオンにUSAのプレイヤーの記録はありません。この年、初めてボビー・フィッシャーが挑むことになったのです。だから、この対決にアメリカ国民が熱狂し、ソ連側は死守防衛に躍起になるのも無理もありません。
 しかし、その大会は挑戦者のボビー・フィッシャーの奇行とも言えるほどの要求に振り回されることになります。彼の病的自己中心癖に呆れかえるし、そんな彼を送り出してでも世界チャンピオンをUSAは取りたかったのか? と思ってしまいました。チェス界の雰囲気に少々ガッカリしたのが本音です。

(この感想は、読書メーターにアップした文章を文体を書き換えて転載しました)


◇ ◇ ◇

私が  The Queen's Gambit を読み始める前に想像していたベスの人格は、ボビー・フィッシャーそのものでした。でも、嬉しい予想の外れ方に The Queen's Gambit が大好きになりました。Netflix も絶対観ます!