無題1

不幸のすゝめ


「私の世界は、私を軸にして廻ってはいなかったのよ」

いつから勘違いしていたんだ?
否、いつからか気づいていたのだろう
そうだ、気づいていないふりを続けるのは
もうよそうじゃないか
見て見ぬふりをしていた私を殺そう
これは突き立てられた私へのニヒリズム。

半夏生の葉が白く染まる
それは取り繕った化粧を施すかのように
表だけをみてくれ、と言わんばかりに
真昼の月は、只々白くその素顔を晒す
まるで裏なんてないのよ、と諭すように
それなら私は?
半夏生のように、それとも月?
私も、白く、白く、白くそうあれと
繰り返し繰り返し日は西に沈む
これはズタボロの私の、ナルシシズム。

「あなたの世界は、あなたを軸にして廻ってはいないのよ」

気づけば隣り合った者同士、靴紐を結ばれている
足並みを揃わされ、一度でも置いて行かれればもう、列には戻れない
ほどけた靴紐は羽をもがれ死んだ蝶の死骸になったのだ
だからこれからは一人さ、人に、季節に、時代に流されないよう
いっその事、解けないように片結びをしよう
しっかりときつくきつく、固く固く結べ。

年度を越えれず三月のままだったカレンダーを捨てた
夏至を越え、短い夜を進み、今年も一年の半分が過ぎた
私はあといくつ季節を越えれば、この苦しみの終わりを迎えられるのだろう
ゆるんだ靴紐に素知らぬ顔で迎えた四度目の夏
もう一度結び直そうじゃないか
有象無象が、右往左往する世の中で
武装を捨て、不幸をすすめ。

これは私からあなたへの不幸のすゝめ。

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