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- 内部統制とは?_かなりの時間を費やすワケ -

内部統制(Internal Control)といえば、まず「IPOする企業がやることでしょ?」と思われるかもしれません。そのとおりなのですが、この内容を知り、実践することで、経営管理のあり方、業務管理体制の構築/再構築に非常に役に立ちます。 (約3分程度でお読みいただけます。)

そもそも内部統制とは?

 内部統制は、いわゆるアメリカのSOX法(Sarbanes‐Oxley act)の企業への義務付け・規制に基づいているものです。日本ではこれを参照して「日本版SOX法」を金融商品取引法(以下「金商法」)の中に「財務報告にかかる内部統制報告制度」として定めております。これが適用される大企業、上場企業は、この制度を遵守しなければなりません。IPO準備の際に、監査法人や主幹事証券会社から、内部統制の構築状況を聞かれ、準備を急ぐよう言われるのは、このためです。

内部統制のイメージは…

日本では「IPO準備の際に」のイメージが強く、特に「3点セットを作成しなくてはっ!」とお悩みの企業が多いかと思います。(現に、3点セット作成のご依頼をいただいたこともあります。)しかし、 ”上場準備のためだけに”3点セットほか内部統制資料を作成するのは、あまりに勿体ないです。ぜひ上場準備から企業成長・業績向上の起爆剤として、利用価値を高めていただきたいと思います。

内部統制で準備しなくてはならない「内部統制資料」は、3点セットだけではありません。評価監査計画書や評価基準、各統制のチェックリスト(いわゆる「3点セット」とは別のものです。)の作成など、かなり膨大な量です。また、社内のプロジェクトチームとして内部統制体制の構築も必要です。
・・・皆さんの上場への意欲を減らしてしまいそうですが、現実に準備しないといけないことなのです。

内部統制の準備に必要なこと

「(内部統制の準備が)膨大なことはわかった。では何から手をつけようか・・・」
資料のフォーマットの取り寄せ? 内部統制の本を購入?

まずは次のことから着手してください。
また、これらが把握されていないと、支援サービスのご提供期間(日数)の目処を立てるのが難しくなります。
(*忘れがちな項目を太文字にします。)

【社内規程の把握】

  1. 現在存在している社内規程の把握

  2. 上場後に必要となる規程の把握・現状とのギャップの把握

  3. 社内規程(これから作成する規程を含む)の各条文の関係法令遵守状況

  4. 関係法令に定められている内容を遵守している内容か?

  5. 関係法令・社内規程に定めているとおりの社内体制、使用書類等が存在しているか?

【販売しているサービスの内容の把握】

  1. そのサービスの商材は?(物品?ソフトウェア?・・・)

  2. 顧客からの見積依頼(契約前)、契約締結(受注)、納品(検収を含む)、請求、代金(債権)回収までの業務の流れは?

  3. 業務の流れの中で、社内で使用する書類は? (見積書、契約書類、社内稟議書類、仕訳帳等伝票・・・)

  4. 業務の流れの中で使用するシステム(ソフトウェア)は?

  5. 各業務に携わる人員数は?(組織図の作成)

  6. 決算(年次、月次、四半期)の業務に携わる人員数と業務範囲は?

  7. 決算業務にかかる日数の把握

  8. 社内で使用しているシステム・ソフトウェアのすべての把握
    (*会計システムだけではありません。販売・在庫(購買)・原価管理で使用しているものや、その他業務で使用しているもののすべてです。)

  9. 内部統制の準備作業に携わることができる人員数の把握
    (*専任・専属でなくてまったく問題ありません。 本業務と兼務で差し支えありませんが、作業可能な工数時間を把握してください。)

  10. 監査法人のショートレビュー報告書の入手
    (*ショーレビュー内の「指摘事項」の数量とその内容によって、これを改善するためにかかる工数と日数を考慮に入れてください。特に重い指摘があったときは、これの対応に時間がかかるものがあります。)

 かなり細かく記載しましたが、これらから着手することをお勧めします。

内部統制構築に必要な日数(期間)は?

ご質問をお受ける中でよくあるのは、

  • 内部統制を最短で構築してほしい(できれば3か月、6か月で)

  • 内部統制を「最低限で」構築してほしい など。

私からの回答としては、

【必要な日数(期間)】
 
いわゆる証券取引所への上場申請(主幹事証券会社の上場準備審査を含む)で提出する際の、審査していただけるような内容の資料として準備する場合は、最短期間で1年半〜2年間です。
(*通常は2年間です。ただし販売・サービスの内容、状況や、現在の準備状況などを考慮して、内部統制の整備状況評価・運用状況評価を並行して実施ことが可能な場合がありますので、その分だけ期間を早めることができます。
 *2年間を必要とする大きな理由は、上場申請の際に、証券取引所に提出する資料が「2期分である」ので、その資料が上場審査基準を満たす必要があるためです。)

<日数の理由>
準備するうえで必要となるタスクは決まっています。これらを省くことは、内部統制の内容を軽くしてしまうことになります。軽くしたために、のちに重大な不備を招くことがあれば、企業は致命的な重傷を負うこととなります。 そのため、必要なタスクを消化する時間・日数は、必然的に必要となります。

【必要な内部統制の体制構築】
 
前述のとおり、内部統制体制の構築準備で、必要となるタスクは決まっています。ここには「最低限」はありません。例えば、これらタスクで一番重要なのは、監査法人のショートレビューの指摘事項への対応です。 この指摘事項の数が多ければそれだけ時間がかかりますし、なかでも、特に重い指摘事項があれば、なおさら社内体制の再構築(検討期間を含む)やこれの運用状況の評価監査を実施することが必要不可欠ですし、ここに工数と時間を要します。
そのため、いわゆる「最低限」、「最短」という考え方がそもそも無い、ということになります。

以上のように、IPOにおいては必要な内部統制体制の構築にかかる工数、これに日数がかかる(必要である)ことは、ご理解ください。


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