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金利のある世界でまた君と出会えたなら、と思い耽った件。

日銀が17年ぶりにマイナス金利を解除した。マイナス0.1%だった政策金利を0~0.1%に引き上げた。同時に長短金利操作の撤廃とETFなどリスク資産の新規買い入れの終了も決めた。先日の株価急落時にETFの買い入れを入れなかったのは、すでに終了を決めていたからなのだろう。

マイナス金利解除は今期の春闘での大幅な賃金上昇が最後の引き金となったと報道されている。大手企業だけの賃金上昇だけでいいものかと思うのだが、長い間賃金の上昇とは無縁だった日本経済を考えれば、妥当な判断なのかもしれない。そもそも、マイナス金利の状態が異常なのだ。

一方で、当面は現状と同じ月6兆円程度の長期国債の買い入れは継続することを表明しており、金利の急激な変動は避けたい意向だ。

そして、通常金利が上がるのだから円高に振れそうなものだが、解除と同時に進行したのは円安だった。予想で買って結果で売るのが相場ではあるが、結論日本が多少金利を上げたとはいえ、アメリカの利下げが遅れるのであれば、金利差は変わらない、もしくはより開くと考えた投資家が多かったのだろう。

そんな日本の現状を表しているのが、大手金融機関の普通預金金利引き上げである。現状0.001を0.02に引き上げ、金利が20倍になったと言われるのだが、そもそもがあってないような金利、ゼロに何を乗じてもゼロであるように、ごくごく少数にどれだけ乗じようが、ごく少数に変わるだけである。そりゃアメリカの金利考えたら、あんまり変わりないよね、と思う。

一方で、多くの人が心配しているのが、貸出金利である。特に住宅ローン金利だ。大半が変動金利を選択しており、預金金利が上がれば同時に貸出金利も上がっていくのが普通なのだから気になるところだろう。今まではおそらくほとんどの人が、日本の金利が上がるなんて予想していなかっただろうから不安にもなる。

私も仕事柄、住宅ローンの相談をよく受けてきた。その際に私はきっぱりと「変動一択です」と話してきた。そして今になってもこの意見は変わらない。今の固定金利の水準を考えれば「変動一択」である。今もお付き合いのある人にはそうお伝えしているが、疎遠になった方には伝えることは難しい。もし何かの機会にお会いできたら「心配ないですよ」と言いたいと思う。

現状の日銀政策を考えれば、多少の金利上昇はあったとしても、住宅ローンの変動金利が大幅に上昇する可能性は未だ低いと思う。

まだマイナス金利移行前、2000年ごろの住宅ローン変動金利は2.375%程度だった。一方で固定金利は3.4%程度だった。現在はというと、金利が低いところで変動0.3%程度、フラット35利用で低いところは1.3%程度などである。つまりは、どの時代も変動金利と固定金利で1%程度は開きがあると考えることができる。今後変動金利が1%以上上がると考えるなら、固定金利への切り替えは「あり」という事になるだろうか。

「1%くらいすぐ上がりそうだから、切り替えようかな」といった声も聞こえてきそうであるが、そもそもこのマイナス金利解除でも恐る恐るなのだ。急激な金利上昇などしようものなら、日本経済が荒れることは火を見るより明らかだ。日本の経済を支える優れた頭脳の持ち主がそんな稚拙な行動をするとは思えない。長い間金融に身を置いていると(まあ、金融の端くれですが)肌感で分かるものもある。金融機関が普通預金金利をすぐに上げたのは、金利が戻ったことをアピールするためのパフォーマンス的な意味が大きいと思う。今後多少は貸出金利に影響も出るだろうが、現在普通にローンが支払えている人が、支払いに困るような金利上昇は無いと思っている。住宅ローン終了などと脅すようなユーチューブなどもあがっているが、気にする必要はない。それにローン借り換えにはコストもかかるし、もったいない。もし支払いが厳しくなったなら、現在借りている金融機関に相談することが一番だ。手数料を払えば固定金利へ変更もできるし、返済期間を長くしてもらえる場合もある。今後も臨機応変に対応すればいいだけなのだ。元気で給料を稼げればそれほど不安はない。

ただ、金利が戻るという事は、資産を持っている人がより豊かになるということだ。賃金の上昇も、中小企業まで波及するのかと言えば不透明である。先日どっかの総研の人が「大手企業の人が、増えた賃金を使っていけば、2年3年時間はかかるかもしれないが、賃金上昇は中小まで波及する」と言っていた。言い方を変えればそれまでは「賃金格差」を受け入れろという意見だ。

今後、住宅ローンの金利はそれほど上がらなかったとしても、所得や保有資産の格差は広がると思う。日本の格差はより開いていくだろう。やがてアメリカのようになるのかなと思うと、少し寂しい気がする。格差が広がれば、犯罪も増える。治安も悪くなる。日本は「治安がいい」と言われているが、その最大の理由は警察がしっかり機能しているとかではなく、所得格差が少なく、極端に貧しい人が少ないからだ。生活に余裕がある人が多く、世間に対して優しくできる人が多いからだ。しかしながら、今後格差が広がり、貧困層が増えれば、確実に日本の治安は悪化していく。住みやすい日本でなくなるのは、寂しい気がする。

ただ、今の若い世代は「所得」の多寡で幸福度を測らない人も多いと思うので、もしかしたら格差が広がっても日本人は優しいままかもしれない。だから私は若い世代の人には期待している。私たち旧世代の人間には気づかない部分での幸せを見つけることができると思うからだ。

ちょうどこれを書いているときに、WBSでブラックロックのCEOであるラリー・フィンク氏がインタビューを受けていた。彼は日本株にはかなり楽観的であり、米国に関しても同様だった。まあ、代表がわざわざ日本まで来て話すのだから、否定的なこと言うわけないやんけと思ってみていたのだが、最後に「それはその通りだな」と思うことを言っていた。

「相場が良い時にも悪い時にも、相場に居続けることが大切である」という事だ。これは本当にその通りだ。しかしながら普通の人には、この「相場にい続ける」ことが非常に難しい。

今の若い世代は新NISAを利用している人も結構多いと思うのだが、是非悪い時でも相場に居続けてほしい。金利がある世界だろうがない世界だろうが、相場に居続けることが、将来必ずあなたの「余裕」につながるからだ。格差などを気にすることなく、マイペースな幸福を作り上げてほしいと思う。私自身はその点失敗してるからね。だからこそ、私は身体が動く限り働こうと思っている。まあ、働くこと嫌いじゃないからいいんだけどね。

今日はここまで。

引き続き、どうぞよろしく!

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