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スタンフォード教育大学院とはどんな場所なのか

2回目となるこの記事では、私が現在在籍するスタンフォード教育大学院について、修士課程や個別のプログラムに関する大まかな概要を書いてみようと思います。
やや大枠の話になってしまうかもしれませんが、

・米国の教育大学院(マスター)進学を考えている
・スタンフォードの教育大学院の各プログラムの違いを知りたい
・そもそもRyoがどういうところで勉強しているのか知りたい

こうした方に向けに、ざっくばらんにお伝えしたいと思います!


【スタンフォード教育大学院とはどんなところ?】

一言で言えば、教育に関する研究や実践を学ぶ大学院です。
修士課程では現在、以下のプログラムがあります。

Policy, Organization, and Leadership (POLS)
 
→教育分野での様々なリーダーシップを養成する
Learning Design and Technology (LDT)
 →テクノロジーを効果的に活用した教育プロダクトをデザインする
International Comparative Education (ICE)/ International Education Policy Analysis (IEPA)
 →教育の国際比較や、各国の教育政策を科学的、理論的に分析する
Education Data Science (EDS)
 →データサイエンスを活用して教育を考える
・Stanford Teacher Education Program (STEP)
 →まさしく教員養成コース。


修士学生全体で100名程度、私が在籍するICE/IEPAプログラムは20名程度の規模です。
今後進学予定のハーバード教育大学院は、1つのプログラムのみで100名以上いるので、比べると随分規模が小さいように感じます

事実、スタンフォード教育大学院での入学時のオリエンテーションは、大講義室に集めれば全員が収まるサイズ感でした。都内の私立大学出身の私は、教室に200人以上いる授業などもあったので、当初、「思ったより少ないんだな」という驚きと「競争率、すごかったんだろうな…」という身の引き締まる思いの双方を抱いた記憶があります。

なお、ほとんどが1年程度で修了(EDSのみ2年間で修了)するプログラムです。


【国際教育政策・分析プログラムの特徴は?】

ここからは、教育大学院の中でも特に私が在籍しているICE/IEPAプログラムに関する特徴をいくつか上げていこうと思います。

1. 教授との距離の近さ

 まずもって感じるのがこれでした。私が取った授業に基づく話ですが、これまでどの授業もだいたい20人〜25人くらいの規模で、一部の授業、例えば統計学なんかは10〜15人弱くらいの規模でした。

 人数が少ないメリットは、やはり教授が学生ひとりひとりに対して、きめ細かい指導ができる点にあると思います。加えて、各授業にはだいたいTA(ティーチング・アシスタント)という授業や課題のサポートを行う博士課程に在籍する学生もついています。
 このため、基本的に取った授業で自分の顔と名前は教授に認識されますし、授業の前後やオフィスアワー(TOEFLのリスニングで出るような、教授との面談形式での相談みたいな感じ)を活用して、教授やTAに気軽に質問ができます。
不安解消や、モチベーションの向上・継続という観点でもこうした体制はありがたかったです。よほどでなければ、置いてけぼりになるようなことは考えにくいと思います。


2. 学生の国際色の豊かさ

 現在、私の在籍するプログラムは21名の学生で構成されていますが、アメリカ生まれの学生は2人しかいません。(バックグラウンドの定義はアメリカにきて難しいなと感じたのですが、)今年の生まれによる構成は以下のような感じです。
 
  アメリカ 2名
  カナダ 1名
  メキシコ 1名
  ブラジル 5名
  ジャマイカ 1名
  グアテマラ 1名
  ドイツ 1名
  エジプト 1名  
  日本 2名
  中国 3名
  韓国 1名
  パキスタン 1名
  アゼルバイジャン 1名
 
留学生の割合の比率の高さは、私が在籍するプログラムならではのようです。(ブラジルが他国に比して多いのは、ちょっとした理由があるのですが、それはまた別の機会に書こうかな…。)

こうした国際色豊かなバックグラウンドのおかげで、様々な国の教育事情について、授業内外の会話を通して知れることや、留学生がマイノリティという立場にならない居心地を感じられる点がメリットとして感じられます。

ただ、語学という面においては、英語圏の国の大学学部を卒業して院に来てます(留学初めてではありません)、という人も相当数いるので、(当然と言えば当然ですが)割とみんな流暢に話します「はじめに」の記事で書いた通り、そうではない私はずいぶん苦戦するわけですが、この辺の事情もまたどこかで詳しく書きます…笑

ー余談ー
記事の表紙に載せた写真が、いま教育大学院が使っている建物
(CERAS: Center of Education Research at Stanford)で、こちらがその建物の中です。
実は教育大学院は、2024年現在、別の建物を新たに建設中です(2025年完成?)。
ここは研究者が使う建物で、その部屋の一部を授業に使っています。



3. 修士論文の執筆に向けた指導がきめ細やか

 ICE/IEPAプログラムでは、すべての学生が1年間(9月末〜翌年7月末頃)で修士論文を書き上げることを修了要件としています。
 分析に必要なスキル(定量・定性)を身につける間もなく、論文テーマを(入学前から)考え、入学直後には概ね固めた上で研究の枠組みを作っていかなければならないのは、論文のクオリティや実現可能性の面で正直大変なところもあります(2年コースの大学院であれば、スキルを身につけた上で取り組めるので、その方がどっしり構えてできるかもしれません)。

 一方、ゼミ形式で1年を通じて授業期間中は毎週ゼミがあり、研究の進め方や分析手法に関するレクチャーやセッションが用意されており、その課題をこなしていくことによって、自分の論文を着実に進められる良さがあります。課題は毎回TA及び教授の双方がチェック・コメントをしてくれるので、いわゆる「伴走型」で、こうした一人一人丁寧な指導を受けられる良さがスタンフォードにはあります。

そもそも論文の執筆がマストではない教育大学院も一定数ある中で、論文という分かりやすい形で成果物を残せる、またそうした学術的なリサーチ力をしっかり鍛えられるという強みがICE/IEPAプログラムにはあるのかなと思います。


4.(上記に関連して)理論重視

冒頭に述べたように、教育大学院の中でも様々なプログラムがあり、教育とひとえに言っても、重きを置いている学びが結構違います。例えば、

・POLS→学校管理者の育成。修了課題も、「Field Project」と呼ばれる、現場の課題に即応した提案などを行うプロジェクトを半年程度かけて行う。
・LDT→EdTech系の人材育成。修了課題は、学習製品(プロダクト)やテクノロジーを活用したプログラムを、理論などに基づき作成する。

という感じですが、前述の通り、
ICE/IEPAプログラムは論文執筆が課題であるため、かなりリサーチ寄り、「学問」を学ぶ場所という位置付けかと思います。
噂に聞いた話ですが、このプログラムは1年で研究成果を出すスタイルから「ミニPh.D」と揶揄?されることもあるみたいです。笑
(一方で、博士課程に進学する人は例年そんなに多くないです。)

このため、必修や選択必修の授業を見ても、一例ですが

・国際教育比較学入門
・国際教育政策に関する理論(と現実の分析)
・統計学や質的研究の基礎または応用
・教育社会学の理論(と現実の分析)
・教育経済学の理論


など、より学術的に教育を捉える授業が多いです。ですので、教育問題・教育政策をアカデミックに理解したい、こうしたことを通じてキャリアアップしていきたいという方にはおすすめかなと思います。

しかしながら、それ以外(他のプログラムや他のスクール向けの授業)を履修できる余地もありますし、組み合わせも様々なので、この辺りは自分の問題意識に合わせてコーディネートできます。
(またどこかの記事で、履修した授業について書いてみようかなと思います。)


だいぶ総論的なお話になってしまいましたが、まだ始めたばかりなのでこうした情報も誰かには有益かなと思い、綴ってみました。
今後、留学前の状況や、留学中の内容など、個人的な体験をもとにしたことも書いていきたいと思います。リクエストがあれば、ぜひお知らせください!
それではまた。

本記事の見解は、著者の所属組織を代表するものではなく、著者個人に帰属するものです。
今回の記事を受けて、大学院や個別のプログラム内容についてより詳しく知りたい方は、ぜひ大学のウェブサイトも直接ご覧になってください!

(参考①:スタンフォード教育大学院の修士各プログラムについて)
 https://ed.stanford.edu/academics/masters
(参考②:スタンフォード教育大学院の歴史や沿革)
 https://ed.stanford.edu/about/history

出典:Stanford University Graduate School of Education

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