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香港#1 九龍半島の朝、昼、夜

近年では2019年~2020年にかけて大規模な民主化運動が勃発し、12名の死者が出た香港。2020年に入り、COVID-19の流行と国家安全法の発効に伴い、運動は事実上終結し、民主化活動は挫折を迎えた。中国政府の統制が強まりつつある香港の景色を写真に残すべく、筆者は深圳から香港に戻り日中の九龍半島を散策した。


九龍半島の朝:倫敦大酒楼のワゴン式飲茶

失われつつある営み、変化のスピードの速い事象を撮影することで希少性の高い記録を残す、というのが私を旅行に駆り立てる原動力である。旅先でのプランに迷いが生まれた際にはこの考え方に立ち戻る、というのが私の旅の進め方である

2022年8月、筆者の耳にバッドニュースが飛び込んできた。香港を代表する老舗ワゴン式飲茶点「蓮香樓」が閉店になるというニュースだ。2017年にはじめて香港に足を踏み入れた私は、恋人とともに上環のホテルに連泊していた。この際に、3泊したにも関わらずどうしてもタイミングが合わず、蓮香樓には行けなかった。

このことを5年間心残りに感じていた自分にとって、蓮香樓の閉店は悪すぎるニュースであった。新型コロナウイルスの打撃を受け、香港の食文化が消えつつあることに衝撃を受けた筆者は九龍でワゴン式飲茶を提供する店舗を調べ、「倫敦大酒楼」にむかった。(2023年8月時点での筆者調べによると、九龍半島においてワゴン式の飲茶を提供する店舗は倫敦大酒楼だけのようであった。)

倫敦大酒楼の店内は地元香港の老人で溢れかえっていた。(老人の朝は早い)観光客同士が肩を寄せ合って食べる朝食よりも地元の人々の雑踏にまぎれて食べる朝食の方が百倍うまい。到着するなりジャスミン茶を注文し、席についた。

香港の飲茶には食べる前にお湯で湯呑みとレンゲ、お椀をそそぐという独特の文化がある。相席になった香港人のご婦人に倣い、同じような作法を行う。その後、見様見真似で点心を注文したが、これが本当に美味しかった。外はもちもちで中は具だくさん。帰国してから同じメニューを探しているが未だに見つかっていない。名前を知っている方がいれば教えていただきたい。

見様見真似で注文(この点心が美味だったが、名前がわからない)
倫敦大酒楼(老人たちの朝は早い)

九龍半島の昼:埠頭から望む香港島

満腹で倫敦大酒楼を出発し、宿で休憩した後、ネイザンロード沿いに九龍半島を徒歩で南下。香港島と九龍半島を繋ぐスターフェーリーの乗り場がある埠頭に向かった。

昼過ぎから九龍半島を散歩した後、夕方に埠頭へ到着し、香港島方面の景色を見物。雨季の東南アジアにしては珍しく良い天気だった。

九龍半島から臨む香港島

結局この埠頭で日暮れまで過ごした。だんだんと日が落ちて、明かりが灯るビル群の夜景+夕焼けが美しく、これまで生涯で見てきた都市景観の中で最も美しいワンシーンだった。

九龍半島から臨む夕焼け・夜景

九龍半島の夜:佐敦廟街の立ちんぼ

佐敦(Jordan)は香港で最も賑やかな繁華街で、ネイザン・ロードから一本東に入れば、廟街と呼ばれる下町のような屋台街が広がっている。個人的には東京 銀座のようなTSTと比較すると、佐敦は上野や浅草のようなイメージが近いと捉えている。

夜、佐敦の東側に一本入った廟街に足を踏み入れると、多くの立ちんぼがいた。大半はタイやフィリピンから出稼ぎに来ている女性だが、近年では中国本土(特に深圳や雲南など)では公安の取り締まりが厳しく、地元で稼げなくなった女性達が自由に商売できる場を求め、香港へ出稼ぎに来ているらしい。(友人からの事前情報)

中国本土においては、売春は共産主義の考え方に反するため、固く禁じられている。(最低限の生活が政府によって保証されているため、このような商売を行う必要は無い、というのが共産主義における考え方らしい。)年々中国の影響が強まる香港においても、廟街における立ちんぼのような営みは失われていく可能性が高い。したがって、この機会に調査に出向くことにした。(他意は無い)

廟街から一本はいった薄明かりの路地裏に、彫りの深い中央アジア系の小柄な少女が佇んでいた。出身が気になった筆者が普通話で問いかけたところ、意外な答えが帰ってきた。彼女は新疆ウイグル自治区ウルムチ市出身の19歳だそう。

はじめは200HKD/20分との提案を受けたものの、会話の途中、私の普通話が下手すぎて日本人であることがバレた。バレた瞬間、日本人向けの提示金額は違う、ということで400HKD/20分に跳ね上がった。意外にも、いまだ香港において日本人は金持ち扱いされているようだ。

残念ながら筆者は買わない主義である。(日本に恋人もいる)
別れを告げて宿に戻った。意外にも別れを告げても悪態をつかれなかったのが印象的だった。

老朽化に伴い香港から失われつつあるネオン
ネイザン・ロード沿いに佇むタクシー

九龍半島の散策は以上。1日の活動量としては多く、大変疲れたが、失われゆく九龍半島の香港文化を存分に味わう事ができた。10年後の香港に思いを馳せながらTSTのドミトリーで筆者は眠りについた。

次の記事では、香港島 湾仔を散策した記録を紹介する。


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