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「ご感想への返信2023」No.11

 今回の講義では、多様なセクシャリティについてその概要を学び、また、周囲へのカミングアウトや医療現場での対応について学んだ。知らない用語や解説も多くあり、大変参考になった。また、オレオやバーガーキングのCMを見て、海外では、セクシャリティが広告で扱われるほど認知度の高いテーマなのだなと思った。
 一点質問ですが、先生はこれまで医療の現場で性的指向などについて医療者から聞かれた経験はありますか。また、その際どのように聞かれましたか。一般の診療や看護では、患者さんの性的指向を知らなくても問題ないことも多いと思うのですが、例えばHIV検査の際や入院時にパートナー婚姻関係を聞かれる場面があるのではと思いました。

学生の感想から

 「オレオのCM」ってこっちかな? ナイーブで最高だ。

 「バーガーキングのCM」はこれですね。帰国してもどうか幸福で。


質問:医療者から性的指向等について訊かれたことはありますか


 ご質問ありがとうございます。考えてみたけど、ないんですよね。

 医療者からすれば私をヘテロセクシュアルと見なして「ほぼ」問題はないんですね。ペニス以外の場所にクラミジアがあるとか、症例によって「ヘテロではない可能性」を考えてよい場面はあっても、ヘテロではないと考える必要もないわけです。HIV/AIDS等、性行為感染症で陽性だった場合、性行動の確認や指導のために、さらには統計的な意味で、その質問がなされることはありますね。入院時も確認されるわけではない。異性婚しないゲイは法的には単身者であり、配偶者の存在はないことになっているから。

 つまり「医療とカミングアウト」における問題は、「聞かれる問題」より「聞かれない問題」として患者に意識されていることが多いのです。現状カミングアウトのニーズは患者側にある。「同性パートナーに同席させたい」とか。心療内科であるとか。レズビアンであれば出産とか。

 しかし、「聞く必要がない」という理解も考え方次第です。また「聞いてはいけない」という医療者の思い込みは軽減されて行かなくてはなりません。医療でも患者のQOLが重視される現代、科をまたいだチーム編成をすることも、患者家族と協力関係のもと看護することもどんどん当たり前になって行きます。同性パートナーが患者にとってのキーパーソンである場合、共有しあわなければならない情報は少なくありません。患者のセクシュアリティを聞く必要は「ある」し、「聞いてよい」という風に移行していくべきでしょう。

 性行為感染症で来院した患者をヘテロ男性と見なして検査の範囲を決めるなら、見落としが出て来る。本当に性的指向を質問しなくてよいかどうか考えた時、私は「常にではないが、ある。だから医療者はセクシュアリティについて質問する準備をしておくべきだ」と考えます。これで質問への回答になっているでしょうか。


 


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