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小さい小さい、小さいテラリウム。

またもモノづくりの話である。
ひとたび面白いと思うと、飽きるまで色々と試したくなる性格は直らないようである。そういうわけで、以前記事にも書いた通り、夏にはいきなりの思い付きで、苔を使ったテラリウムを作ったわけだが、今度はこれのミニチュア版を作ってみたいという思いが抑えきれず、とうとう手を出してしまったのである。

要は、レジンを使ってミニチュアの容器を作り、その中にテラリウムの世界を再現してみようということである。
容器のように、立体感のあるモールドでレジンを扱うのは、私にはなかなか難しく、硬化した容器の透明度が一定で、ムラもなく、液溜まりもない仕上がりにするのは得意ではない。

それでも、薄く薄くレジン液をモールドの内側に注入し、平均してレジン液がいきわたりつつ固まるよう、コロコロと手先で回しながらUVライトを当てていく。これがどうにもうまくいかない。そもそも、いきなり球形のモールドに挑戦したのが間違いであった。
球形のモールドでは、一定の厚みで液を満遍なく広げるのがうまくいかず、出来上がったそれをモールドから取り出してみて愕然とすることになる。

きちんとレジン液がまわらなかった部分の欠け、厚みの違いで透明感がなく曇って、ところどころにムラが目立つ。だいたいこんな仕上がりでは、3センチに満たない容器の中で、中に何が入っているのか判らない。
季節外れなうえ、なんとも作りの粗悪なクリスマス飾りのような物体を前に、はや心も折れそうになるが、やはりテラリウムのミニチュアを作ってみたい。飾ってみたい。

今度はメイソンジャーのような形状のモールドに変えて、またまたレジン液を薄く広げてゆく。口が広い分、内部がよく見えるので液の加減がしやすい。こちらはなんとか、納得のいく出来にはなった。
納得ついでに、円形のモールドを転用してフタ部分も作るが、レジンでコルク感を出すには力量が足りず、テクスチャに課題が残ったが今回は良しとすることにした。

さて、ミニチュア容器の中身であるが、こちらは心配ない。もちろん、本物の苔を植えるのは些か無理がある。夏にテラリウム作りで使った残りの土を敷き、その上から綿棒とピンセットの併せ技で、小粒の軽石を置く。
本当なら、川砂利の一粒も置きたかったが、器の中はすでに、もう情報過多である。土にしっかり浸み込み、かつ表面に光沢が出ないよう、少しずつレジン液を垂らしてUVライトで固める。

ここに苔を入れるわけだが、これまた夏に買っておいたフェイクモスを使用。乾燥苔でよいかとも思ったが、色味がくすんでいること、狭い容器の中で苔を自立させるには柔らか過ぎることから、見栄え重視でフェイクを使用した。フェイクではあるが、さすがに発色が良いので、小さい容器の中でもしっかりと苔の存在感が出る。
容器の中にレジン液の溜まりを作り、ここにフェイクモスをピンセットで植えていく。

容器には気泡も入り、蓋のバリ取りもしていないがフェイクのグリーンはよく映える

初回にしては、まずまずのクオリティ…ではないかと思うのだが、もしそうであるならば、これは技術的な問題ではなく、一度実寸で作った経験の問題ではないかと思う。
写真にしてみると、これがなんともちっぽけで苦笑いしか出ない。サイズの比較のためリップクリームを並べてみたが、確かに精密な作業を頑張った証拠にはなるが、ギリギリ及第点のミニミニテラリウム、労力のわりにパフォーマンス低めである。

老眼の身では、「小さい」ということだけでもいまは大切にしたい

それでも、掌の上に乗せて愛でる分には十分。ともあれ作りたいという欲求を満たすことができたのだから、小さな小さなテラリウムの中に、小さな小さな緑の夢でも見るとしようか。(了)

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