旅情奪回 | 或る文筆家の時空を旅するコラム&エッセイ

太田 圭 プロフィール:文筆家/アートディレクター/産業カウンセラー。学生時代から音楽…

旅情奪回 | 或る文筆家の時空を旅するコラム&エッセイ

太田 圭 プロフィール:文筆家/アートディレクター/産業カウンセラー。学生時代から音楽誌で評論、特集、コラムなどを執筆開始。以後、社会、美術など多方面で執筆活動。国内外を問わず旅が好き。日本全国各都道府県を、五年かけて「日帰り取材」した経験を持つ。東京都在住。

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自己紹介(2023年6月29日更新)

note概要:「今や、「旅情」そのもののリアリティが希薄化している―。」 文筆家/アートディレクター/産業カウンセラーの筆者が送る、旅、時間、場所、記憶…をめぐる読み物あれこれ。  これまで20年近く、あまりフォーマットにこだわらず、様々な場所で原稿を書いてきたが、案外ネット上で公開される原稿というのは書いてこなかったような気がする。  自分の中には、ライフワークと呼べる太いテーマがあり、枝のような興味関心にこれを仮託するようなスタイルで原稿にしてきたが、その中で「旅」に

    • 風のヒューイは弱いのか?-統率力と機動力の非凡なる才能-(再掲)

      いろいろな場所で書き散らしたものを、あとから自分で探し出してきてまで読み直すということは、特にブログ文化の中ではほとんどしたことがないが、なぜか私が書いたブログ記事の中で、何年経ってもアクセスされ続けている記事がひとつだけある。どこに需要があったのか謎ではあるが、そもそも私が唐突にこの記事を書いたのも、あとから検索して辿りついてきてくださる読者と同じような疑問を抱いたからに他ならない。 そうやって見返すと、この稀有な、小さな記事を贔屓したくなってしまったので、改めて、今後も細

      • 鮮度のピーク。(再掲)

        この手の原稿は、年によって、時代によって、普遍性を失うことも少なくはない。あまり再掲を好まない身ではあるが、社会人として新たに旅立つ誰かへの餞の気持ちで、もう一度ここに「鮮度のピーク。」を投稿する。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ この季節になると、今年は異例の開花状況とはいえ、やはり桜が目につく。俵万智さんに倣うまでもなく、あらためて桜は日本人にとって特別なのだと感じる。桜が象徴するものは

        • 排尿礼賛。−おしっこを嗤うな

          私は谷崎潤一郎先生を尊敬してやまないわけだが、杉の葉から湯気の立つ便器の醜さ美しさを大真面目に延々と綴る先生よろしく、一見どうでもよいようなことを、どうでもよくないからふと真面目に追求してみたりしてしまう。 「おしっこに行ってくる」。そう言い残して部屋を出るとき、人は些かの気恥ずかしさと、自虐を禁じ得ず、その場に居合わせた人にしても、それをお手洗いを借りるであるとか、トイレに行くと言えないものか、自然が呼んでいるとでも言えないものか、とデリカシーに照らして思ったりするのかも

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          お金の話をしよう。

          お金の話というのは、古今東西を問わず、なかなかにデリケートなテーマである。「ファイナンス」という言葉が日本で当たり前のように流通し始めたのも、そう遠い昔ではないはずだが、今は資産やライフプランについてしかるべき指針を持つことはむしろ、人生に向き合うという点で、意識が高いことの要件のひとつとなっている。お金の話がお茶の間化する。その背景には、インターネットが登場し、ネットショッピングが当たり前となり、決済のパターンが増え、キャッシュレスが浸透し、数え切れないほどのネットバンクが

          旅情奪回 第32回:春が迎える。

          私は若い頃から梅が好きだ。漂う、としか表現し得ない、押し付けのない上品な香りと、まるで枯れ木に雪が咲いたような、まだ肌寒い季節にポツポツと花をつける白梅はとりわけかわいらしい。 桜は日本人の心であり原風景だ、というのはよくわかる。しかし、桜の木の下でお酒を片手に春を慶ぶというタイプではないし、花見を口実に騒ぐ趣味もない。 桜には日本人特有の繊細さと、猥雑な混沌が併存している。聖俗がともに棲む処である。浄められつついかがわしさに情を感じる温泉場と同じである。 本来はそうしたカ

          旅情奪回 第31回:確信犯の前に。

          「正常」は思うほど「異常」と大差がない。いつもそう思っていても、それが欺瞞でないか、ときどき確かめたくなる。そういう証拠や確信というのは、まさに市井の路傍に転がっている。 それで、珍しく土曜日に早起きなどして、ゆっくりと始まる朝の街を散歩にでかけた。コースは決めていなかったが、結果として数年前まで住んでいたあたりまで歩き、大きく回って戻ってくるような、あまり冒険的ではないものとなった。 朝のお馴染みの景色がちらほらと視界に入る。高齢の女性が、家の前を掃いたり、道端に無造作

          旅情奪回 第30回:能登半島地震に寄せて。

          例年になく穏やかで気怠くさえあったお正月気分も、文字通り眼の前で音を立てて崩れ去った。自宅が大きく、長く揺れたと思ったら、テレビの向こうで「津波が来ます。逃げてください」と、悲痛とさえ呼べる尋常ならざるトーンで緊急避難が連呼されていた。 テレビ画面の隅には、普段目にしたことのない真っ赤なアイコンが表示され、新しい年を迎えて間もない北陸の海が静かにその牙を隠していた。 石川県が、四季も美しく、伝統美と食文化に彩られた素晴らしい土地だとはかねがね聞いていた。しかし、なかなかプラ

          旅情奪回 第30回:能登半島地震に寄せて。

          R&B擬似プレイリスト公開。〜クリスマスに聴きたくなる“雑巾必須”のラブソング20選

          この世界に足を踏み込んでたくさんのことを教えていただいた音楽ライター(と同時に当時は音楽誌の編集長でもあった)が、最近過去の執筆の掘り起こしをされていたので、なんとなくこの時期によく聴いていた曲をR&B限定でプレイリスト化してみたくなった。ミッドテンポやスローバラードが多くなってしまったし、どうせクリスマス前後で聴く曲なんて失恋ソングの方がグッと来る。そんな甘酸っぱい記憶に身悶えしながら珠玉の20曲をリストアップしてみた次第である。 ◆Art N’ Soul “Ever S

          R&B擬似プレイリスト公開。〜クリスマスに聴きたくなる“雑巾必須”のラブソング20選

          いつ、サンタはいなくなったのか。

          本当に小さい頃のことは覚えていない。海外で暮らした幼少時代は、そこがカトリックのお国柄だったことから、クリスマスはとても派手で華やかな一大イベントであった。一般的に小さな子どもたちが思い浮かべるクリスマスの思い出は、日本に帰国して間もない日本ではじめて知ったのだと思う。 いい子にしていないとサンタさんは来ないよ、と母に言われながら12月を迎え、毎日毎日その夜を弟と二人で指折り数えて待ちわびたものだった。母の急病で緊急帰国したのだから、父はまだ日本にいない。むろん、お父さんが

          50歳からは、アナザーラウンドでもうひと舞いを。

          50歳になった。というわけで、それなりに「しっかりとおじさん」になったらすぐにしようと思って計画していたことがいくつかある。そのひとつは若い頃に気に入って買ったものの、自分の年齢じゃ身の丈に合わないと思って使っていなかった腕時計をつけ始めること。もう一つは、映画『アナザーラウンド』を観ること、である。長い目でみれば当然ほかにもいろいろと計画らしきものや指針はあるのだが、とにかく具体的で現実的、誕生日を迎えるとともに間をおかずすぐにやってみようと思ったのはこんなことであった。

          50歳からは、アナザーラウンドでもうひと舞いを。

          旅情奪回 第29回:北鎌倉。−逍遥とオウムと

          先日電話で、知人が鎌倉に遊びに行ったと話していた。鎌倉は、私にとっては少し不思議な場所である。 中学生だったか、学校の社会の授業かなにかで鎌倉に行った記憶がある。鎌倉の大仏を観たり、この階段で公暁が討たれたのかなどと、歴史マンガの一コマを検証するような気持ちで鶴岡八幡宮を参拝したりなどしたわけだが、どういうわけかその後、近くて遠い鎌倉は縁の薄い場所になってしまっていた。 「そうだ 京都、行こう」は、いまもってパロディにされるくらいの名コピーだと思うが、旧twitter(X

          旅情奪回 第29回:北鎌倉。−逍遥とオウムと

          喪失と獲得。−もうすぐ、大きな誕生日

          もうすぐ誕生日である。10月はハロウィン、12月はクリスマス、と大きなイベントが続くが、11月はイベントがない。どこに行っても、駆け足のように店頭のディスプレイが季節のイベントに切り替わるので、誕生日を飛ばされたような気分にもなるが、何もない11月こそ、静かに自分の生まれてきた意味を噛み締めて過ごそう、と思うようにしているのだ。 と書くとむくれてでもいるようであるが、今回は、いよいよ50代に突入する大きな誕生日、なのである。 誰もが口にすることだが、自分が若かったころには、

          旅情奪回 第28回:時空の旅路に思い出す別れ。(後編)

          (前編のつづき) 父方の祖母は春先に旅立った。残念なことだが、長兄と父が15歳違いであるから、私が日本に帰国した頃には、すでにかなりの高齢で、文字通り三歩下がって夫の影を踏まないような人だったので、実はほとんど思い出らしい思い出がない。食卓を共にすることはなかったし、なにか一緒に行事を楽しむこともなかった(正確には、一度だけ外食に行ったが、祖母は食事をしなかったのだ)。 家父長制の影のような生き方をした人だったが、もとは大きな旅館の長女で、お転婆でよく笑う明るい人だったとい

          旅情奪回 第28回:時空の旅路に思い出す別れ。(後編)

          旅情奪回 第27回:時空の旅路に思い出す別れ。(前編)

          なぜか秋冬に別れが多い。特に、家族との別れが多い。それは、単に気候のせいや、寒い時期だからということではなく、多分秋が、冬がそうさせるのだ。 かねがね、なぜ私が、あまり縁のない親戚に会いにいったときでさえ、両親以外の親族にもよく似ていると言われることが多いのか、小さい頃から不思議に思ってきた。もちろん先祖のことまでは分からないが、そうして「●●ちゃんは、▲▲に似てるねぇ」とあちらこちらでいわれれば、自分にはもしかしたら、一族のすべての記憶がたまたま集まってしまっているのかも

          旅情奪回 第27回:時空の旅路に思い出す別れ。(前編)

          100の質問:自分を再発見する

          名前は? ※由来も教えてください 父が海外赴任が決まっていたので海外の人でも発音しやすい名前に。候補は2つあった。 誕生日 / 年齢は? ●●● 血液型は? ●●● 身長は? 177センチ 靴のサイズは? 26.5センチ 家族構成は? ●●● 飼ったことのある動物は? ジャンガリアンハムスターのむぅちゃん 愛してやまない好きな食べ物 / 飲み物は? ビッグマック、ドーナツ、プリン、タコス、ジンジャーエール、コロナビール この世で最も嫌いな食べ物 / 飲み物は?