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『こばなしけんたろう』 読破後の感想

以前書いた記事で『TAKE OFF〜ライト三兄弟〜』の感想を書いた記事がある。その記事の最後で少し触れていたのだが、この間Am○zonで『改訂版 こばなしけんたろう』を購入した。今日はその『こばなしけんたろう』の感想を書いていきたいと思う。

※ネタバレチックなことも含まれる可能性があるので、ご自身の責任でお読みください※

こばなしけんたろう(改訂版)



全体の感想としては、『小説を読んだというか作品を見に行った』という感じ。

まず文章の配置が話によってバラバラなことが、そう思わせるひとつの要因だろう。
雑誌風に書いた話は二段組。太文字も多用する。歌の歌詞のように書いたものもあれば、100文字詰めの原稿用紙を配置しているものもある。
これでだいぶ作品ごとに印象が変わる。

また、作品の書き方も特に統一はされておらず、洒落的な3行くらいの小話もあれば、普通によく見る小説のようなものもある。

そんな三者三様な作品たちの中でも、私のお気に入りは以下の作品たちだ。

  • セルフポートレートワールド

  • 僕と僕との往復書簡

  • D氏を待ちながら

  • しあわせ保険『バランス』

  • リバーシブル探偵 島山ヤマシの事件簿

  • 第二成人式

  • 新生物カジャラの歴史と生態

  • 落花 8分19秒

結構たくさんある。
ここからはお気に入り作品それぞれの感想を簡単にまとめていこうと思う。


 セルフポートレートワールド
こばなしけんたろうの1作品目。読んだ感じは小説的な読み心地だった。
主人公の心情(コンプレックス)の書き方が良い。日陰者の卑屈な感じがしっかり出ていた上での最後の変わりようが気持ちよかった。


僕と僕との往復書簡
自分との会話(手紙)が出来る『パラレルワールド』な話。小林賢太郎はパラレルワールドが好きなんだろうなぁと最近ロールシャッハ(K.K.P)を観た私は思っている。
 軽快なテンポで読みやすかった。


D氏を待ちながら
推理もあって考えるのが楽しい話。
途中途中で出てくる手紙などの部分だけ、フォントが変わり枠がある。それがいい雰囲気を作っている。
最後の全ての謎を解いていくところが軽快なのに重みがあって、読んでいて気持ちが入っていく感じがした。オチがとても気持ちいい。


しあわせ保険『バランス』
『KAJALLA #1 大人たるもの』でもみた作品。
大人たるものは実際に大阪公演に観に行っていたし、公式YouTubeでもアップされているのをよく見ているので、記憶にもしっかり刻まれているお気に入り。その小説版なので心して読んだのだが、こちらもオチが気持ちいい。
舞台版とは少し違うのだが、オチだけを考えると小説版の方が好きだ。
ちなみに、主人公の小山内という名字の使い方は舞台版が上手いなぁと思う。


リバーシブル探偵 島山ヤマシの事件簿

もしかしてこの話、壇蜜さんがゲストで出てた小林賢太郎テレビで見た?といううろ覚えの記憶と戦いながら読んだ作品。合ってるかはわからないし、仮にKKTVでやっていたとしても全部を見た覚えはない。
女性が綺麗だということを表現する文章が艶かしい。文章が美しい作品でした。


第二成人式
こちらも『KAJALLA #大人たるもの』でも観た作品。この作品も舞台版を公式YouTubeで見返すお気に入りだ。
まず、だいぶ話の進め方が違うことに驚いた。小説としての魅せ方が上手い。舞台と小説での棲み分けが上手いなぁという印象だ。
舞台版よりかなり暗めの雰囲気で、その鬱々とした雰囲気が気持ちいい。


新生物カジャラの歴史と生態

『KAJALLA』ってもしかして、この生き物(?)の『カジャラ』が先?と思いながら読んでいった作品。
難しい文庫本を読む前と後のワクワク感だけを抽出した作品だった。はじめにとあとがき大好物人間にとってはなかなかに楽しい。この独特の言い回しが何ともたまらない。難しい文庫本のはじめに、あとがきの真似が上手すぎる。再現度が高い。


落花 8分19秒

これも小説感が強くて物語として読みやすい作品だった。
導入が上手い。スルッと入りつつ『あれ?これなんでだろ』と思わせる疑問の余韻が気持ちいい。
太陽の光の話が少し理解に時間がかかるが、理解するために読み返すその時間のタイムラグこそ愛おしい作品だった。
最後も綺麗にまとめてあって読んでいて気持ちよかった。




他にも作品はあるのだが、書き手の気力の都合でお気に入りのみのピックアップとする。
全体としては小林賢太郎を濃く感じられる作品だったと思う。
また、KAJALLAや小林賢太郎テレビで見かけたような作品にも出会えたことはなんだか感動した。感動の再開という感じ。
伝え方によって違う展開が比べられたのは面白かった。

 小林賢太郎書籍を他にも読んでみたいと思える、楽しい1冊でした。




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