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ハレと初心 小笠原ひとり旅 10日目 #19

今日で宿に泊まるのは最後。自然や海は充分に満喫したので、USK COFFEEさんで行われている月に一度のファーマーズマーケットへ行くことにした。

これもローカル雑誌「ORB」と一緒で、出発前になにかのサイトで見つけていて、月に一度開催だからタイミング合わないんじゃないかなとどこか他人事だった。だけど昨日ホテルで予定を立ててたらちょうど明日やるよっていうんだから驚いた。

看板もかっこいい
島民のコミュニケーションの場だ

父島自体、街に活気はあれど、ここまでのお祭りの雰囲気は出ていなかった。観光客と島民が半々くらいで来ているようだ。



ここからは下記「Listen in browser」を選択し、イヤホンで聴きながらご覧ください。

Sound - ファーマーズマーケット


放し飼いされたニワトリが自由気ままに歩き回っていて、木彫り細工やパッションフルーツや玉ねぎなどの農家さん、デザインの効いた水着、おしゃれな革小物などのさまざまなラインナップで、かなり盛り上がっている。

全然近づかせてくれないニワトリ
大賑わいだ
ローカルベーカリーさんの列が絶えない
ジブリ映画に出てきそうな美味しそうなラインナップ

中でもローカルベーカリーさんが、大村の街中から出張で来ていて、大行列ができていた。USK COFFEEさんは扇浦よりもずっと奥のほうだから珍しいんだろうか。

持って帰って食べられないから食パンなどの大きなパンを買えないのが悔しいけれど、キューバサンドとブラジルのもちもちパンを購入する。

いろんなパンが飛ぶように売れていく。USKのコーヒーとパンって相性がいいもんね。わたしも例に漏れず、USKでドミニカのアイスコーヒーも買った。

うーん、さっぱりした味で、猛暑日にぴったりだ。キューバサンドは、歯ごたえのあるパンに、何枚も入ったハムとチーズ、さらにピクルスがいいコンビネーションで、片手にコーヒーを持ちながら食べるのにちょうどよかった。

おしゃれで気分も上がる
ブラジルのモチモチしたパン

日曜日のゆったりとした空気感によく合う、ハーモニカが響くブルースと、オガサワラビロウやタコノキの葉が揺れる音をBGMに、出店者同士の近況報告、縦横無尽に走りまわる子どもたち、島で出会った観光客同士の会話が交錯していた。

USK COFFEEさん
おいしそうなクッキーもある

普段から店舗を構えているUSK COFFEEさんなら別のORBを置いているんじゃないかと思って、思いきって質問してみる。

「ごめんなさい、ここってオーアールビーっておいてますか?」
「オーアール…?あぁ、オーブ(ORB)ですか。すみません、今切らしちゃってて…。実はわたしの旦那が編集長やってるんです。東京だったら、移転したみたいなんですけど、フリーペーパートーキョーさんに結構な数送ってますよ」
「ええ!?そうなんですか!ありがとうございます、ファンですとお伝えください!」
「わ〜うれしいです!」

話したらドラマが生まれるものだ。東京に帰ったら見に行ってみよう。

少年がじっとこちらを見ている。
「何を撮ってるんですか?」と落ち着いた口調で質問してくる。
「にわとりを追いかけまわしたり、ファーマーズマーケットを撮ってます」と答える。

「僕もいつもニワトリ撮ってます。キャノンの55〜200mmの古いレンズにテレコン1.4倍率のものをつけてます。」と自慢げでもなく、少年は淡々と伝えてくる。わ、わからない。

「すみません〜私の息子なんです。カメラ大好きなもので・・・!」とお母さんが駆け寄ってくる。

「いえいえ、息子さんにカメラのことを教わってました」と伝えてお別れする。

小さい頃から自分のライフスタイルが確立されていてかっこいい子どもっているんだ、と驚いた。おもわず敬語を使いたくなる風格があった。

なにかに傾倒するのって年齢は本当に関係ないんだなあ。俺はなにも考えずに野球していたぞ。

ひとしきりお祭り気分を味わって、夜のSUPの予定までカフェでゆっくり過ごすことにした。

野生のヤギ 島では害獣扱い
曼荼羅COFFEE
店内
おちつく

アイスコーヒーを頼んで、ここ数日の出来事を日記に書き起こしていた。デジタルでもメモを残していたけれどいざ手帳に向き合って書くとすこし内容も変わってくるから不思議だ。

店内ではずっと「仕事やだな〜5連勤だよ〜」とか、「ダイビング1日3本いけるかな〜」みたいな日常の会話がおこなわれていた。

「オハナ、ここでやってくんねえかなあ」と、突然耳慣れない言葉を高校生くらいの男の子が口にする。

「オハナってなんですか?」と気になり質問する。

「ゲゲゲっていう生協裏の東屋あたりでやるフラダンスのイベントなんですよ。16時からやるみたいだからぜひ行ってみてください。」
「そんなの、絶対見にいきます!」

調べてみると、小さな子供からご高齢の方まであらゆる世代が集まってフラダンスを披露する島特有のイベントだそうだ。行くしかない。この行き当たりばったりな感じが楽しい。

みなさんに御礼を伝えて、”ゲゲゲ”へ向かう。陽気な音楽が聞こえてきて、人だかりもできている。ここだ!


ここからは下記「Listen in browser」を選択し、イヤホンで聴きながらご覧ください。

Sound - オハナ


いつもは閑散としている場所なのにかなりの人が集まっている。

すごい人だ
鮮やかな衣装を身に纏っている
大学生くらいの年代も
かわいい年代も
演奏担当も
どの衣装も素敵だ
演奏も歌もライブでおこなっていて贅沢
おつかれさま
島の文化

SUPの予約を入れていたため、1時間ほどで後ろ髪を引かれながら離れる。

伝統的な行事に居合わせることができて本当に幸せだった。島で暮らして文化を繋いでくれる住民がいてくれるおかげで、残っていくものがあるのだと改めて認識する。

25年間小笠原へ住んでるオオイデさんがガイドしてくれる

SUPをやるのは初めてだった。小笠原に来てから初めてづくしだ。せっかくの最後の夕日を初めてのアクティビティで締めようと思ったのだ。

目的地へ到着し、カメラなどの道具はなくしちゃいけないから、と全て車に置いて行く。

低くてダンディーな声が印象的なオオイデさんが、ワイキキで習った師匠に教えてもらったというSUPを教えてくれる。参加者はわたしと若い新婚夫婦。すみません、新婚旅行にこんなやつが混ざっちゃって。。

オオイデさんに小笠原に来たきっかけを聞いてみる。元々ハワイやバリなどの波乗りスポットで移住先を探していたら、たまたま小笠原のダイビングの求人を見つけて連絡すると、すぐ採用になり、まだ行ったことのない小笠原へ飛び込んだそうだ。それから25年だよ、と淡々と話す。

やはりこの島に住んでいる方々は決断力が桁違いだ。


SUPは勝手に上級者がやるものだと敬遠してきたけれど、いざやってみるとゆったりとしたマリンスポーツで予想外だった。

洞窟をくぐったり、寝そべって空を見上げたり、目を閉じてボード越しにほのかに背中に伝う波の動きを感じたり、あっという間に時間が経過する。

気づけばこの旅いちばんの夕焼けが、空いっぱいに広がっていた。

オレンジやピンクに染まる海を見て、改めて、海の色は空の反射で見えているんだと当たり前のことに気づく。意外とオレンジに染まる海は見れない。

遮るものがなにひとつない水平線へ沈む太陽を、太陽とまったく同じ目線で、ゆっくりと、僕らの地上の反対側に回りこんでいくのを見る。

「ここ最近で一番夕日だ〜」とぼやくと、新婚夫婦の旦那さんが、
「いや〜、もしかすると僕は20年の中でいちばんかもしれないです!」
とまっすぐなこころで叫んでいた。

「喧嘩した時は、この夕日を思い出そうね」と話すお二人が、やわらかくまぶしかった。

携帯やカメラを車に置いて、この島でいちばんの夕日が見ることができてよかった。すこし「撮ること」に一生懸命になりすぎていたなと反省する。

だからこそ、最後の夕日は心の目で、視界いっぱいに広がる、夕焼け空を刻めてよかった。

写真に残すまえに「目のまえの自然が美しいから撮る」という、あたりまえのことを忘れてはいけない。

オオイデさん撮影

(次回へつづく)

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