1番近くにいる人の本をよんでの書評「CREATIVE JUMP」

共同創業者の龍崎が本を執筆した。
実はまだ読んでいなかったのだけど京都から東京に向かう新幹線の中で読み切った。

https://amzn.asia/d/aCRgKFl

多分、この本を世界で一番楽しめたのは自分だと思う。一つ一つのシーンが頭に浮かんで、ああこんなこと考えてたんだと、いちいち腹落ちしていた。

龍崎は普段ビジネス書をよまない。
だから、内容は汎用性の高いパッケージングされた知識とかではない。書かれていることは全て実体験に基づく実験と発見のプロセスである。

ビジネス書は満たされない人のための処方箋だ。
今目の前に生じている課題を、なんらかの知識の不足によって発生したものだとすり替えて、解決に役立ちそうなそれらしい知識が得られることを期待する。今あなたが何を知らなくて、何を知れば、何を身につければうまくいくのか、そんなわかりやすい内容が書いてあることを期待する。

読んでいてにやけてしまった。
この本に書かれているのはスキルではなくプロダクトに対するスタンスだ。

でもそれだけが本質なんだと思う。

「解けるまでしつこくやれよ。お前、本気で考えてないだろ?」
ずっとそんなふうに言われているように感じた。

本の中では、龍崎がプロダクトを作っていくときに、どんなふうに課題をとらえて解決策を作ってきたのか、実際のエピソードに準えて書かれている。

自分は今年30歳になる。
これまでの自分の人生を振り返って、自分で物事を判断して、自ら意思決定をして生きている人はほとんどいないんだと悟った。

正直、自分にも結構そんなきらいがある。

経験したこともないのに、見聞きした情報を鵜呑みにして、誰かの言葉を借りて安全圏から批判する。未来に対する思考はできるだけせずに、すでにしたことのある行動の枠組みからできるだけ抜け出さない意思決定をする。

世の中、冷静に考えれば筋が通っていないような常識がまかり通っている。
それは権威ってものの弊害なんだけれど、次に来るって言われているビジネスであったり、そのビジネスを伸ばすためのルールであったり。

自分に理解できないことは、積極的に話を聞いてみて、質問してみて、なんとか理解しようと努力するのだけど、その意義を当事者も理解していないんじゃないのと思うようなことがたくさんある。

例えば、僕らは創業以来一貫して会社を自己資本のみで経営している。株式での資金調達を批判しているわけではないけれど、僕らにとって、現時点で、別にいらなかったからしていない。
冷静に考えて、金銭的なメリットしかないなら株式による調達ってコストが高すぎないか?すごいベンチャー100選とかに出てるスタートアップが軒並みエクイティで調達しているのは、情報源がVCだからだろう。僕らはリスクマネーは自分で稼ぐよ。

あとわかってほしいのは別にExitをするために事業をやっているわけじゃないんだ僕らは。
上場はそのうちするけれど、あくまでも手段に過ぎない。少なくとも、そこまでしか語れない仲間ならいらない。

誰かが決めたルールを信じて疑わないことって本当に楽だ。聖域に触れなければ、知らないふりをしていつまでも熱狂することができる。
熱狂の結果失敗しても人や時代のせいにすることができる。

「リスクを取る」とかいう言葉で煙に巻いて、意味わからない投資をしている経営者を見かける。巷に溢れるエピソードの表層だけをなぞったら、確かに一見非合理な選択をとることをリスクを取ると表現するかもしれない。
だけど、その一見非合理な選択肢は、当人にとって、どうしても否定することができない大きな勝ち筋が見えてしまっているからその意思決定にいたっているんだ。
意思決定のプロセスは一切省略していないはずだ。

ビジネスは人の人生を巻き込んでやっている。
自分一人なら勝手だけど、大概は人の人生の時間を使ってやっている。
思考することをどこかのタイミングで放棄して、リーンスタートアップを自分に都合よく読み替えて、この辺一回やってみるかってなるの、この上なくカッコ悪いと思っている。
限界までやりきらないことによって言い訳の余地を作る人、端的に言って人を率いる資格がないと思う。

とにかく限界までリスクヘッジをして、少なくとも自分だけは絶対勝てると確信できるまで策を練り上げるか、検証したいことを超具体的に特定して、絶対にこれだけは明らかにするぞと覚悟して、可能な限り小さく始める。
成功確率を上げるためにできること、コストを下げられることはすべてやる。

そんなふうに将来に対する自分の思考を心の底から信じられるくらいに考え抜くとき、根拠は最終的に自分の内部にしか無くなっていく。

こんなん作れば欲しい人いるだろなんて、舐めた態度で作ったサービスは絶対に見透かされる。

優等生らしく、よく知られた経営指標に忠実に作ったサービス、めちゃくちゃ模倣容易性が高い。

お客さん以外は全く理解してくれなくていいから、自分にとって何よりキラキラするものを純粋に作っていくことってめちゃくちゃ難しい。どうしても、本来どうでもいいはずの同業者に理解されたくなってしまうから。

でも、そんな欲望を乗り越えて、純粋に事業のことだけを考えていくと、日常のあらゆる出来事が事業のヒントに見えてくる。

この本のタイトルは「CREATIVE JUMP」となっていて、なんか特殊なスキルについて書いてありそうだけど、書いてあるのはサービスを作るクリエイターが日常的にとるべきスタンスの話だ。

上で書いてきたようなことを龍崎は自分よりもずっと深く理解して日々体現している。本の中では、自分が欲しいものを特定していくプロセスが、失敗や反省も含めて素直にイキイキと書かれている。

本書に書かれている、日常や個人的な発見を起点として、完全に自分ごとのビジネスを構築していく手法は、成熟した市場で優位性のあるサービスを作るために再現性のある方法論だと感じた。

頭でっかちに考えがちな自分がいつも龍崎に言われるのは「それ本当に欲しいの?」って言葉だ。

本当に一貫している。
1番近くにいる人の本を読むのって面白いな。
やはり、コイツはかっこいい。

ちなみに龍崎にレコードプレーヤーをあげたのは自分です。研ぎの三兄弟の店は京都の福知山にあるNOMIです。どういう意味かはぜひ本書を読んでみてください!

https://amzn.asia/d/aCRgKFl

この記事が参加している募集

わたしの本棚

うちの積読を紹介する

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?