僕と彼女

想イヲツヅル #63


最近

彼女とは全然会えていない

理由は


彼女の舞台公演が近づき

本格的な稽古もはじまり

仕事と舞台稽古の両立で

彼女自身に
僕と会う余裕がないからである


。。。


というのは半分正解で

もう半分は


″自分自身の気持ちが整理できない″


ということなのはわかっている


実際
彼女がどんなに忙しかろうと
5分でも10分でも会いにはいけるだろう

料理を作ってあげたっていい

肩を揉んであげたっていい


何かしらはできるはずだ

でも
僕は会いに行かなかった


僕は最低なのだ


そして
そんな″最低な彼氏″に
″会いに来ない彼氏″に


さらなる″言い訳″をくれるような連絡がやってきた


学生時代の友人からのラインだった


「今度うちの店で歌ってくれないか」


という誘いだった


その友人は現在
カフェのオーナー兼店長をしている


学生の時に彼は

「将来自分の店を持つんだ」

と目をキラキラさせて話してくれた


その時に僕は

「ロックスターになってやる」

と意気込んで返事をしたのを覚えている

そんな彼が
その時の夢を叶えたのだ

そしてまた
彼は新たな夢をみていることも知っている


オーナーの店は

オーナー自身
音楽経験があり


昼はカフェ営業

夜の営業時はオープンマイクという

どんな人でもステージで歌うことができるイベントをよくやっていた


″どんな人でも″というのは

ミュージャンのプロでもアマでも

そのどちらでもなくても

音楽が好きならば
″誰しもがステージで表現することができる″
という意味合いである

そんな音楽カフェのオーナーからの誘いだった


よく話を聞いてみると

12月に配信ライブをしないか?

ということと

その配信ライブの映像を使って
作品を残したい


ということだった


撮影
映像編集には

オーナーと繋がりのある方が来てくれるらしい

マスクが手放せない昨今


″配信ライブ″

そして

″映像作品″



とても魅力的な誘いだったし


声をかけてもらえたこと自体
とても嬉しいことだった

もちろん
僕は出演することを決めた


12月20日


この日の夜が本番になるようだ


そして僕は

その配信
作品のために

新たな曲を書くことを決めた


ライブに向けて練習もしなければならない

僕はオーナーからもらった
思い掛けない″理由″を手にしたことで


彼女に対して

″会わない理由″を
″会えない理由″に変えようとしている

仕事をしながらの作曲含めた制作

本番での演奏に向けての準備は
決して簡単なことではないが


彼女に対して

この理由はとても不純なものだ

自分の最低さには反吐がでる


それでも

どうしても

今は彼女に自分の気持ちを話すことを躊躇してしまうのである

彼女の
舞台へ向けての真っ直ぐな想いを知っている

その努力も

彼女は精一杯頑張っている


本当はすぐにでも

これから
僕と彼女がどうやって進んでいけるのか

話し合わないといけない

だけれど

今のタイミングはとても迷ってしまうのである


彼女が真っ直ぐに舞台に向かえなくなってしまうのではないかと思うから


真っ直ぐに夢に向かえない辛さを察してしまうから


だから
この″会えない理由″に縋ってしまう


そんなことを考えては
僕はさらに自分を嫌いになるのである

″彼女を応援したいから″

という偽善的な自分の考え方には
とっくに気が付いている

彼女には

「お互い頑張ろう」

くらいしか言えなかった



僕は最低だ

結局は自分を守りたいだけなんだ

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